最強のFラン冒険者

なつめ猫

壊れ始める現実

「それでどうしてユウティーシアさんはこんな危険な所にいたの?」
 リメイラールが不思議そうな顔をして尋ねてくる。

「えっと仕事を依頼されて来たら「ひっどーい!魔術もまだ使えない子供にそんな仕事をさせるなんてひどいよ!皆もそう思うよね?ね?」」
 俺の言葉の途中でリメイラールが俺を抱き寄せて頭を撫でながら大変だったねーと頬ずりしてきているがすぐにアレルに引き剥がされていた。

「まったく美少女だと見たら、どこでも発情しやがってこの恥女が!」
 アレルが何もない空間から縄を取り出してリメイラールの両手を縛っている。

「ユウティーシアさんだっけ?何の仕事で、ここに来たんだ?」
 リメイラールとアレルがゴタゴタしてるのを余所に草薙友哉が俺に話しかけてきた。

「いえ、仕事の内容は第三者にはお答えできない決まりになってまして……」
 状況がまったく分からない。下手なことを離せない事からまずは彼らの話を聞いてから何を話すか取捨選択した方がいいだろう。

「まるで日本の社会人みたいだ。君の国ではみんなそんな話し方をするの?」

「日本ですか?聞いたことの無い国ですね」
 とりあえず些細な情報でもほしい。まずは情報を……。

「あれ?俺、日本が国って言ったけ?」

「―――え?言いませんでしたっけ?」
 草薙は俺の言葉の粗を捜してるようで話をしててこちらのペースに引き込めない。というかこいつ本当に高校生か?

「草薙君、あまり女の子を苛めたらだめですよ!」
 そんなことを耳元で言いながら俺を後ろからリメイラールが抱きしめてきた。白いワンピースと上から薄いピンク色のローブを羽織っていたから気がつかなかったけど胸がかなり大きい。
 そして先ほどまでアレルとリメイラールがゴタゴタしてた所には、アレルが亀甲縛りで転がされて「ンー、ンー」と何やら叫んでいるように見える。

「女の子は秘密がいっぱいなんです。あまり問いただすと嫌われますよ?だから70歳になっても童貞なんですよ!」

「ど、ど、ど、童貞じゃないし!きちんと済ませてるし!!」
 草薙がリメラールに童貞じゃない発言をしているが俺はそれよりも草薙の年齢が70歳だと言う事に驚いた。16歳くらいだった高校生くらいの俺に似てるのに70歳なんて信じられない。

「あ、あの……お金も装備も全部燃えちゃたんですけど……」
 とりあえず当座の心配をしよう。まずはお金が無いと何も始まらないし……。

「そういえばユウティーシアちゃんは、よくドラゴンのブレスを受けてて大丈夫だったな?」
 口を封じていた縄を噛み千切りながらアレルが話しかけてきた。
これは何と答えていいべきが迷ってしまう。
細胞変質でとか言ったらあれだし……。

「限定変質でも使ってるんじゃないか?さっき両手が盾に変化してるの見たし」
 草薙がアレルの質問に回答してしまう事で俺は何も言えなくなってしまう。

「そうなの?ユウティーシアさんは限定変質が使えるの?」
 リメイラールが興味津々に抱きついたまま後ろから聞いてくるが……なんて答えればいいんだろうか?

「よく、分からないです」

「なるほどな。だからこんな所にいたんだな」
 とアレルが一人納得していた。
 一人納得されても俺はどうしたらいいのかアワワ状態なわけで……。

「大方、生態認証が暴走した子供を育てたくないからって理由で子供を捨てたんだろうさ。その子供を行政がドラゴン処理の為の駒として使うのはよくある事じゃないか」
 また訳の分からない単語が出てきたしとてもキナ臭い世界な気がしてきた。

「すいません、何もしらなくて……」
 もう勝手に勘違いしておいてもらおうというか、それ以外に方法がない。

「大丈夫よ!聖女リメイラールが貴女を養ってあげるから代わりに夜の営みも手伝って!」
 話を聞くほどにリメイラールって女性は危険な気がしてきた。

「とりあえずさ、ドラゴンフィールドダンジョンから出ないか?もう今日は現れないだろ?」
 アレルの言葉に草薙とリメイラールは頷いていたが、俺だけがその場で置いてきぼりだった。

「ユウティーシアちゃん、悪いけど町まで移動するからこっちに来てくれる?」
 俺は頷きアレルに近づくとリメイラールと草薙も近寄ってきた。

「それじゃ移動するよ!エアリアルブレード!」
 アレルが武器を頭上に掲げると景色が一瞬でメタリック色の部屋に切り替わった。

「それじゃユウティーシアさんは、こっちについてきてねー」
 と言いつつもリメイラールは俺の手を握って話さない。むしろ掴んでる握力が強くなってる気すらする。俺は3人の後を付いて行くとプシューと言う音を鳴らしながら扉がスライドした。
 扉を潜るって部屋から出ると目を見張った。
 そこには巨大な空間が存在していた。
 巨大な空間の天井には、パネルが設置されていて空の情景が映し出されている。その下には30階建てのビルが数十も立ち並んでおりビルの合間の道路と思わしき所には宙に浮かんでる自動車のような物が走っている。俺はその様子を見て驚きのあまり歩みが止まってしまった。
 俺の様子を見てリメイラールは、仕切りに頷いているが目の前の情景のインパクトが強すぎて対応に困る。

「おーい。ユウティーシアちゃん、行政登録するからこっちに来てくれないか?」
 アレルが俺の名前を呼んできたのでこれ以上立ち止まってると怪しまれると思い、小走りでアレルに近づく。

「このパネルに手を載せるだけでいいから」
 俺は頷き壁のパネルに手を載せるとウィーンとスキャンする音がした後にパネルに情報が表示されていくが俺には読むことができない。

「やっぱり読めないか。行政の怠慢もひどいものだな」
 背後に近寄っていた草薙が溜息をつきながらパネルに表示されてる部分を弄っていく。

「こんなもんでいいだろう」
 草薙は自分がした仕事に満足していたようだが俺は、草薙が行ったパネル操作が早すぎて理解が出来なかった。

―――音声システムを起動します。肉体構成音素データによりシリアルコード2115……献体コード523番、対神格兵器ユウティーシア・フォン・シュトロハイムと確認が取れました。コード発行は、宇宙開発実験センターです。

「はあ?」

「宇宙開発実験センターって異空間に飲まれて音信途絶してたよね?」
 アレルとリメイラールが何やら話していたが……。

「おい、どうして全滅した対神格兵器が自我を持ってここにいるんだ?」
 後ろを振り向くと草薙が険しい顔をして問いただしてきた。



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