最強のFラン冒険者

なつめ猫

白光の神衣契約

(これは、これが神衣なのか?)

別人のような姿になったことに勇者コルクは驚いていたようだが、俺もレオナと融合したときはまったく違う姿と所持してる獲物に驚いていた。

「これが神衣だ。知識と経験と感情を共有することで、天使に唯一対抗する事ができる技術らしい」

(なるほどな、どうやら俺達は勘違いをしていたようだ。お前はユウティーシアでありクサナギでありそして戦女神ではないのだな)

やはり記憶を一方的に見られるのか、こまったものだ。俺には融合した相手の記憶とかまったく見えないんだけどその辺どうなってるんだろうな。それを今、論じてる余裕もないか。

「ああ、だからお前らとはの間にあるのは勝手に拉致ってきて俺に自分たちの考えを押し付けてきて攻撃してきて殴られて痛かったからやり返してやろうという些細な私怨だけだ」

(――――――なるほど……しかしこれほどの魔力を持つとはお前はやはり他とは違う存在のようだ)

「それは否定しない。だが、(今はやつを倒すことだけだ)」

草薙と勇者コルクの意識が同調しそれは所持してる神器たる矛へと伝達する。

「魔力制御は任せろ」

(わかった)

勇者コルクが魔術操作を苦手としてきてる事が伝わってくる。レオナと融合した時には感じた事が無い思いが俺の中に生まれていく。作り上げ生み出すは万物全ての形を止めおき形となす重力。勇者コルクが生み出せし力は全ての万物を焼き尽くし営みを与える炎。炎は重力下において圧縮していきそれらは極炎となる。極炎は俺が構える矛の切っ先に集約し赤き雷光を生み出す。

座天使サマエルが、先ほどとは比較にならない程、極大なブレスが吐き出してくる。だが、神衣化した体を動かすのは剣技を得意とする勇者コルクであり彼が振るった矛がブレスを切り裂く。

「コルク!あとは任せたぞ」

(了解した。いくぞ!)

「天招槍炎斬!」

俺とコルクが作りだした膨大な太陽のコロナに匹敵する熱量が炎となり座天使サマエルのブレスを瞬時に焼きつくし座天使サマエルに食らいつきその漆黒の体を炎で燃やしていく。先ほど再生をしていた体も焼き尽くし黒き体表が剥がれ落ちていく。

「ユウティーシア!」

後ろから身体ステータスを100倍まで引き上げられた聖女アリアが走りながら神衣化した俺達に向けて叫んでくる。

(クサナギ!)

「わかった。神衣解除!」

俺と勇者コルクの体が分離する。まだ神器の力が残っているからなのかとても体が軽い。

「アリア、手を!」

俺はアリアへ手を差し伸べながら言葉を紡ぐ。俺とコルクが分離した事にアリアは驚いてるようであったがすぐに差し出された俺の手を、その小さな手で握ってきた。

「いくぞ!」

「ええ、見せてあげますわ」


――――――神霊融合―――――――


心の中で叫んだ言霊は俺とアリアの魂と意識を混ざり合わる。それは刹那の時間であり世界の時が止まったと錯覚させるほどの極小の時間。その時間で俺とアリアの心と知識と経験は混ざり合い一つとなる。時が停止した中で白銀の光が集約していき俺とアリアの細胞が音素へと分解し神気により再構築されていく。余剰された白銀の光は周囲を満たす精神エネルギーを消し去り白銀の羽が舞い散る。

白銀の羽が吹き散らされた中から出てきた姿は容姿はユウティーシアを成長させた姿であったが、その瞳の色は赤、そして髪の色は白銀と聖女アリアを模していた。

「なんとか成功したようだな」

(え?ええ……)

(ですが、これが神兵。いいえ、座天使サマエルと言うのですね。奴らに対抗する唯一の術なのですね)

「ああ、だから俺の力じゃないし俺は戦女神なんかでもない」

(ふふ、そうなのですね。診療所も開いたのも私とコルクへの宛てつけと言うわけだったのですね)

「そういうことだ。だが、まさか教会が威信を保つために」

(そうですね、救済をするもの達が己の威信や野心を満たすのはよくない事です。そこは後できちんと対応しないといけませんね)

「ああ、だがまずはあれを(浄化する)」

差し出した手には3メートル近い白銀の雷光を纏う杖が神気で編みこまれ生成されていく。いつもは神衣を使った時点で生成されていたのに不思議なものだ。

(クサナギ様、きっと私が貴女を理解したからこそこの力は生まれたのですわ)

「なるほど」

つまり、最初から武器が権限していたレオナとコルクは本当は最初から俺の事が分かっていた事になるがどうなんだろうか?俺が考えてる間に神気で編みこまれた杖が完成していた。

「アリア、浄化の魔術は使えるか?」

(もちろんです。伊達に聖女を名乗ってませんわ)

「なら魔術制御は任せた」

(分かりましたわ)

アリアが魔術制御で周囲の光を集めていくのを感じながら俺は重力魔法で座天使サマエルの動きを阻害する。いまだにコルクと俺が放った炎は座天使サマエルを焼いている。

(なんて、力なの?これはどれほどの魔力を有して……これは太陽の波長?パルス?クサナギ様、貴女は一体どれほどの神代知識を……)

重力魔法でサマエルの動きを阻害しているが、サマエルは町に攻撃をしかけようと力を貯め始めた。

「アリア、まだか?」

(まだ、もう少し時間が……)

「―――このままでは……間に合わないっ!」

重力魔法で抑えておくのにも限度がある。そのときサマエルの体に数百にも及ぶアイスランスが突き刺さった。アイスランスからは炎が噴出しサマエルの八本の足を爆破する。魔術が打ち出された方向へ視線を向けると勇者コルクとレオナが同時に魔術を発動したようであった。

だが、普通の魔術では天使に傷をつけるどころか回復して……ない?そして気がつく。勇者コルクの体からは、融合強制解除前に解除したことでまだ神気が残ってることを、そしてアイスランスとコルクが使用した炎には神気が混じり神術になっていたことを。

「ナイスだ!コルク、レオナ!!」

(クサナギ様。いきます)

「ああ、こちらもいくぞ!」

「(全神気開放!銀天招浄化)」

レオナが俺の知識を垣間見た事で、神代の宇宙と天体理論から再構築した新しい浄化魔術を超える浄化神術。構えた杖から巨大な白銀の光が、俺が構築した重力魔法を瞬時に打ち消し座天使サマエルの精神アストラル体を浄化し破壊する。在るべき存在あるべき輪廻へと歪んだ存在をその輪へと還元していく。

ガアアアアアアアアアアアアァァァァァ

座天使サマエルは巨大な断末魔を叫びながらその姿は銀光の中に溶けるように消滅した。

(やりましたわ!)

「だな……」

―――あ。これは……やばい、意識が遠のく……。

「え?クサナギ様?」

神気を使い果たした事で俺と聖女アリアの神衣が強制解除されたが俺はそれを認識する前に意識を失った。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品