最強のFラン冒険者

なつめ猫

戦場の乙女


「レオナ、お前は巨人の引き付けるだけ引いておいてくれ」

「是!」

レオナが打ち出すアイスランスは巨人達の眼前で全て砕けるが10体を引き付ける事が出来たようだ。さて、ここからは俺の出番だ。頭の中で魔法式を瞬時に組み上げる。神代の知識を応用した超高位攻撃魔法。

「グラビディランス!」

手のひらに長さ1メートルほどの物質が生成される。これ一本で消費魔力が1000万と言うトンデモナイ魔術形式をもっている。

「いけっ!」

俺の言葉にグラビディランスが光の軌跡を大気に残しながら巨人の一体に突き刺さる。そしてそのまま巨人はグラビディランスの重量崩壊により細胞ごと崩壊し砕け散る。

「クサナギ殿!?」

「問題なく使えるようだな」

巨大質量の恒星の終焉の際に起きる宇宙規模の天体現象つまり超新星爆発。それを宇宙開発実験センターの人工システムから教えられた宇宙物理学理論を元に精神核エネルギーを利用する事で疑似再現させた魔術を超えた魔法。

「グラビディランス!」

打ち出した魔術は次々と巨人ドミニオンの体を崩壊させていく。そして最後に残った座天使サマエルにも打ち込む、サマエルの体も粉砕されるが

「―――なに!?」

ありえない、一瞬で体を再生させた?このグラビディランスの威力が宇宙クラスの事象だぞ?サマエルが打ち出してきた光刃の刃を変化させた右手で受け止めようとするが腕をすり抜けて体をすり抜けてくる。

「ガハッ……防御が出来ない?どうなってるんだ……」

しかも受けたダメージが普通じゃない。魔法でミトコンドリアに命じても肉体の細胞にはどこにも傷がない。なら何故、体がまったく動かない。

「クサナギ殿、こやつら以前から思っていたのですが手ごたえがまったくありませぬ」

「手ごたえ?」

だが実際、俺の魔法でドミニオンクラスの巨人は屠れた。

「イイイイイイイイイ」

「な!?」

先ほどまで倒したドミニオンクラスの巨人が空間から現れる。まだ援軍を持っていたのか?すぐにグラビディランスを形成して打ち出し巨人を破壊するがサマエルが異音を発するとすぐに空間から新たなる巨人が現れる。そして一斉投擲された巨人の光の槍が俺が展開したグラビディシールドを透過して体に刺さる。

「―――グフッ。これは普通のダメージ……か?」

俺はようやく体が動かせるようになった事でその場から後ろへ飛び退く。

「クサナギ殿、この手ごたえから彼らにはおそらく、銀や精神力を伝達する精神アストラル界に直接通じる武器か魔法しか効果がありません」

「……」

「だが前は倒せたぞ?」

「恐らくは、クサナギ殿と某が合体した時の姿の時の攻撃は、精神世界へのダメージが入るのでしょう」

その言葉に俺は……。

「やるしかないんだな?」

「是!」

「あまり無駄な記憶を見るなよ?」

「……」

おい!何か答えろよ。今の俺には神代技術の宇宙工学の分野の知識が数多詰まってるんだぞ?どちらにしてもこのままじゃまずいか?本当は、誰かの力を借りたくはないんだが……。俺が習った知識はあくまでも物理法則の分野に限定される。

「レオナ!こっちへこい」

俺は、巨人の無数の攻撃を避けながら走って寄ってくるレオナの手を握り締める。

「いくぞ!」

「是」

―――神霊融合―――

世界が時が凍りつく。そして粒子よりも小さい音素と神気が俺とレオナの精神と肉体を融合させ新たなる肉体を作り上げていく。存在の次元率が跳ね上がりレオナがメディデータとしてその身に宿した心が形となって神気により編みこまれる。

神衣が顕現した瞬間、クサナギ・レオナの周辺に魔術でも魔力でもない神気が周囲の大気を押しのけ粉塵を巻き上げた。その姿はユウティーシアの体をベースとしているがレオナの成人年齢まで成長しており髪の色はレオナと同じ紫色、来ている服もまったく鎧は纏ってはいないが武士の居出立ちをしている。

(クサナギ殿、かなりの修練を積まれたようですね)

「おしゃべりはいい。まずは相手を倒すぞ!」

(是)

腰から雷斬を抜き放つ、日本刀である刃の刀身には紫電が絡みついており巨大な神気を周囲に知らしめている。

「まずは雑魚を処理する。魔力制御は任せたぞ」

(是)

雷斬の周囲に氷の粒が無数に集まっていく。

「レオナ、お前もずいぶん修練を積んでいるんじゃないのか?」

複数の同時の魔術を固形の状態で編むなんて細かい芸当は俺には出来ない。

(クサナギ殿には負けます)

体に纏うは魔力ではなく神気の残滓、雷斬が纏うは雷と水系魔術。巨人から打たれれる攻撃は今の所、全て立ち上る神気で全て無効化してるが座天使サマエルが動かないのが気になるが今はその前に眼前の敵を全て屠る!

刃の形に編まれた氷に紫電と神気が合わさった、合成剣技。

神気雷公雹刃しんきらいこうひょうじん

横に振るった雷斬から無数の刃が巨人の体を切り裂き爆散させていき最後には座天使サマエルだけが残った。サマエルは奇声を発しているが巨人が空間から現れることがない。どうやら完全にアストラル体を破壊したようだ。

そうした所で突然、サマエルの動きが鈍重になった。

町側を見ると大部隊がおり全員が白い鎧に身を纏い先陣には勇者と聖女がいるのが見える。そして次々とこちらに魔術を打ち込んできたあとに白い鎧をまとった部隊とは別の騎士団や兵士が突っ込んでくる。

(クサナギ殿、あれはまずいです)

「ああ、やばいな」

神衣形態になったからなのか分かる。神気以外の攻撃は全て座天使クラスの者には通じないし魔術や魔法と言った物理系に属する攻撃は全て無効化され物質エネルギーは全て吸収され力として取り込まれてしまう。チートすぎるだろ。

すぐに聖女達を止めるために移動しようと走り出した所で神衣が解除される。倒れる事は無かったが俺とレオナはその場で蹈鞴を踏む。

「クサナギ殿、これはまさか?」

「分からない」

俺は、まさかこんなに神衣が早く解除されるとは思わなかった。もしかしたらある程度力を振るったら自動解除されるのかも知れない。

「レオナ、もう一度だ」

俺はレオナの手を握るが神衣は発動しない、つまりリキャストタイムがあるという事になるが。

「やばいな」

座天使サマエルはこちらから視線を聖女達に向けた後に、公国軍を蹂躙している。あのままだと死者が出るのも時間の問題だ。勇者が必至に食い止めてるが所詮は物理法則に従った武器に過ぎない。あれではどうにもならない。

「クサナギ殿、一つ案がございます」

「案?」

レオナの言葉に俺は疑問を抱いたが、この状態で座天使サマエルを倒す手段は神気を使った攻撃だけなのだが、どうするつもりだ?

「おそらく、聖女アリア様なら死者やゾンビなどを埋葬し鎮魂する魔術を使えるはずです。聖女アリア様と神衣を行えば奴を倒せるかもしれません」

「―――それは無理だろ?」

そうマジで無理。あんなのと融合して記憶見られたら、げへへへお前の恥ずかしい過去を暴露されたく無ければとかいう事を聞けとかあいつなら言いそうだし面倒事にしかならないだろ。



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