最強のFラン冒険者

なつめ猫

盤上昇華

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セイレーン連邦周辺国勢力図





「お……おれはしゃべらないぞ……」

「ヒール!」

困った。ヒール講座で心が折れない人間がいるとは予想外だった。今まではこの方法で解決出来てた事からどうしようもない。

「お、おい。どこを見ている?」

なんだよ、俺はちょっとファイアーランスを打ち込んだ集団さんを見てるだけじゃないか?別に勇者君が事情を喋らないからって彼らを人質にする訳じゃない。ちょっと協力してもらうだけだ。

「ファイアー「分かった。話すからもうやめてくれ」」

なんだ、何か俺がとても悪いみたいじゃないか?とりあえず交渉は上手くいったみたいだな。

「まずはここから出る方法を教えてもらいたい」

先ほどから天井を見るとまったく動かない星空が見えるだけで雲が存在していない。それに先ほど打ち込んだファイアーランスが破壊した壁や柱や地面がいつのまにか修復されていたのだ。明らかに普通の空間ではない。
何らかの特殊空間だと思うが魔術に明るくない俺にはまったく理解できない。

「ここはアルゴ公国の光都リメイラールの教会本部地下に存在する秘匿されしダンジョンだ」

「……」

セイレーン連邦にはいくつかダンジョンがあるのは知っていたがアルゴ公国に存在してるのは初耳だ。まあ秘匿されてるなら仕方ないか。それにしても数発殴っただけでずいぶん反抗的な口調になってるな……勇者さん。きちんとヒールしたのにひどい。それにしてもどうするかな?

「くく、終わりだ。余計な時間をかけすぎたようだな?」

「それはどういう!?」

白銀の髪を腰まで伸ばした女性が目の前に突然現れた。まずい!聖女か?俺は急いで勇者から距離を取る。聖女アリアが俺へ視線を向けた後に床に倒れてる勇者を見る。

「さすがは覚醒前とは言え戦女神様だけはありますね?通常の勇者では勝てませんか」

「申し訳ありません、アリア様。覚醒前のユウティーシアの力を侮っていました」

「仕方ありません。初めてみた時はかなり意志力が弱まっていましたからてっきりアフラニスカとしての意思を半覚醒していると思っていましたから。まさかまだ意思を持っているとは思っていませんでした」

アフラニスカ?前も同じような事を聞いてきていたな……一体どういう?

俺の疑問を余所にアリアが勇者コルクの手を取り立ち上がらせると勇者の体を白い光が包み込んだ。白い光?まさか?俺と同格の身体強化魔術か?俺も身体強化魔術に振ってる魔力量を強化しようとしたが霧散してしまい身体強化魔術が解けてしまう。

「なっ!?」

突然、魔術が解けた事でバランスが取れない。やばい!?まともにもらう!

「お返しだ」

勇者コルクの拳が俺の腹に吸い込まれていきそのまま体が弾き飛ばされる。大理石の床を転がりながら俺は立ち上がろうとするが思ったよりずっとダメージが大きく膝を折ってしまう。視界も身体的ダメージが大きすぎて自分が立っているのかすら分からない。

「―――くっ!」

レオナから受け継いだ体術を思いだす。両手をクロスして迫ってくる勇者コルクの拳に合わせてガードをするが両腕がそのまま粉砕された。やばい、身体強化魔術が使えない時点でステータスに差がありすぎる。アリアを見るとその眼は光り輝いている。

「ファイアーランス!」

発動した魔力をアリアの瞳が光った瞬間霧散する。つまり、アリアの力は魔力の拡散か?なら通常の身体強化魔法ではアリアがいたら対応は出来ない。ならアリアが対応できない魔法式に頼らない魔法を身体強化魔法の一歩先をいく魔術を編み出さないといけない。

「諦めましたか?」

アリアは俺に聞いてくるが俺は首を振る。
俺の唯一の強みは、地球の科学力だ。なら俺がする事は、アリアが魔力を拡散できないようにするだけだ。

「仕方ありませんね、コルクやりなさい」

両腕が砕けて下がってる状態の俺にコルクが肉薄してくるが防御する術が無い俺は倒れこむ事で拳を避けて床を転がりながら両腕の激痛に苛まれながら立ち上がる。

「往生際が悪いですよ?」

「往生際ね、お前たちなら誰かに自由を奪われると分かっていて抵抗しないのかよ?俺はご免だな」

「そのような男のような口調で強がってもどうにもなりません」

「いいや、そうとも限らないぜ?」

俺はレオナと融合した時に受け取った技術を使い床を無様に転げ時には肩を犠牲にして勇者の攻撃を避ける。正直、痛すぎて気絶しそうだ。
それでも打開策を考え続ける。俺が使える魔術の殆どはアリアに使用出来なくされている。

「種火(トーチ!)」

俺が打ち込んだ生活魔法はそのまま直進しアリアに当たると思われた所でコルクが払った。

「なるほどな……」

「つまりアリア、お前のその瞳の能力は魔法式を解析して無効化する力を有しているんだな?」

俺の言葉にアリアの眉が少し反応したようだが、きっとそれだけじゃないんだろう。何らかの制限があって生活魔法は解除できない?それともペナルティがある?

「種火(トーチ!)」

「種火(トーチ!)」

二つの生活魔法を同時に打つが一つがすぐに消滅しもう一つをアリアが避けた。つまり、アリアが消去できるのは俺が利用していた200億の魔力の方で消去できないのは本来のもう一つのステータスの方の力だ。

「いいぜ、謎は解けた」

考えろ、魔法式の組み込みを効率的に組み直せ。ここからはプログラマーの仕事だ。頭の中に今まで覚えた魔法式を思い浮かべる。そして類似点を総確認していく。さっきのファイアーランスの時の魔法式を思い出せ。どこで組んだ?どこで構築した?魔法式を編みこんでいく。
数十数百のパズルを組み立てるように頭の中で組んでいく。考えてる事で回避は落ちてそのたびに殴られ骨が折れるがそんなの知った事か。

「これで、どうだ!ヒール改!」

極限まで消費MPを抑えた魔法式のヒール、そしてINTに比例して回復量を上げる魔術公式。

「ま、まさか魔術発動が止められない!?コルク、相手に魔術を使わせてはいけません!」

俺は地面を転がりながらコルクの攻撃を避ける。

「くそ、ちょこまかと!!」

ヒールの発動に伴い体中の細胞を組み替えていく。これは今までのヒールとは一線を画す。今までは神経や細胞、血管、骨、筋肉や皮膚の修復だけを考えていたがこれは違う。細胞のミトコンドリアにエネルギー媒体として魔力を与えることで細胞変質とエネルギー生産を促す事でヘイフリック限界まで肉体の強化を促す諸刃の魔術、そうこれはもう魔術を超えた術式。違う科学と魔術を融合した術式。

―――サイエンスマジック―――

立ち上がった俺を見てコルクとアリアは信じられない者を見るように目を見開いていた。
すでに俺の体は完全に回復している。そして俺を見て、二人はそれぞれ

「ば、ばけもの!?」

「一体何が?」

「悪いな、俺は誰かに自由を奪われるなら……奴隷になるくらいなら死か戦う事を選ぶ。これが日本人としての矜持だ、どういう状況になってもな……」

俺は大胆不敵に笑う。
そして右手の細胞が変化した剣を振るった。



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