最強のFラン冒険者

なつめ猫

盤上の王

《世界観》

<a href="//655400.mitemin.net/i227985/" target="_blank"><img src="//655400.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i227985/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>


してやられた。こちらのペースに引き込むつもりだったのが、相手に情報を与える事になっていた。たしかに良く考えれば、俺の貴族としての作法は公爵家令嬢としてだけではなく次期国王の王妃として躾けられたものだ。いくら他国とほぼ交流が無いリースノット王国と言ってもその歴史は古い。作法を知ってる高官がいないとも限らない。

魔法帝国ジールとリースノット王国は、距離的にはインドとロシアほども離れているが転移魔法がある以上その距離も意味を成さない。

「戦火とは穏やかではないな?」

俺が返答に窮しているとグランカスが横から発言してきた。

「これは海洋国家ルグニカの国王殿、何か問題でも?」

エルアドルは強姦不遜な態度を崩さずにグランカスに切り返すが

「我がルグニカは元は海賊国家だ、貴様の国が攻めてくるというならこちら「お待ちください」」

俺はグランカスの言葉を遮った。おそらく彼は、俺のためではなくそのプライドから魔法帝国ジールとの武力衝突も視野に入れた交渉をしようとしているのだろう。だが、それは世界情勢や世論が平和主義に傾いてる時に使える手段であって帝国主義がまかり通るこの世界では言質を取られて戦争の口実を与える結果に繋がってしまう。

「クサナギ。だが、それじゃお前が……」

「わかっています」

俺は震える手でシルク製のスカートを何度も握る事で打開策を考える。たしかにリースノット王国にはいい思い入れは無いが、それでも自分が生まれた土地なのだ、愛着も多少はあるし俺を身を案じてくれた人も多少なりとは居る、それに海洋国家ルグニカも知り合った奴隷商人達や町の皆もいる。そんなのを一方的な俺の意見で見捨てることは無理だ。

俺一人だけなら戦いになっても一人で魔法帝国ジールを相手どっても負けることは無いと思う。だが相手は40万もの軍を率いる超大国だ。標的を俺ではなく俺が関わってきた国や人に向けられたら守る術がない。

「ずいぶんとお悩みのご様子ですが……ユウティーシア様、リースノット王国次期王妃であった聡明な貴女様でしたら貴族の務めをお忘れではありませんと私は信じておりますが?」

「……」

分かっている、俺のしてしまった責任はきちんと取らないといけない。これは俺が不注意に相手に情報を与えてしまった結果だ。簒奪レースも含めて魔力を魔術を無闇に使った俺の責だ。

「それではご納得頂けたと言うことでよろしいですかな?」

「――――――分かりました。王妃として同行させて頂きます」

苦渋の決断。完全な敗北だった。

「これは目出度いですな!いやいや、まさか大陸最古のリースノット王国王家直系の血筋を引かれ大陸最強の神級魔法師ユウティーシア様が嫁いでくださるとは誠に目出度い。それでは明日、出発と言うことでよろしいですかな?」

「お待ちください!期日は一ヶ月だったはず。まだ3週間以上時間があるはずです」

レオナが時間を稼ごうとしてくれているが、一介の騎士が口を出すのはまずい。

「レオナ、口が過ぎます。エクアドル様、私の従者がとんだご無礼を……」

「いえいえ良いのですよ。よい家臣をお持ちではありませんか?ユウティーシア様を守る騎士として同行させると宜しいでしょう。それと、私の事はエクアドルと呼び捨てにしてもらって構いませんよ?将来、私が貴女様に仕えるのですから」

「分かりました」

「では用意もあると思いますので、このへんで話し合いは切り上げましょう。ユウティーシア様も嫁ぐのに色々と準備がおありでしょうしね」

エクアドルのその言葉に、会議は終わりを見た。
そして放心して座ってる俺を他所にグランカスの部下達がエクアドル達をおそらく総督府内の客室へと連れていくのだろう。案内してる姿が視界の端に見えた。

そしてそれからしばらくして俺も自分の部屋に帰ってきていた。明日、ルグニカを発つと急遽決まったこともあり本来は、すぐに行う必要の無かった作業を今している。

衛星都市エルノの迷宮に行く前に、寸法を測っていたドレスを着て調整しているのだ。まさか顔合わせのつもりが本当に王妃扱いになるなんて想像もしていなかった。しかもこんな一方的な脅しを含ませて婚姻を推し進めてくるなんてあまりと言えばあんまりだ。これなら気遣いを見せてくれていたクラウス殿下と結婚していた方がずっとマシだった。

「クサナギ殿、どうしますか?」

ドレスの最終的調整を針子さんにしてもらってる俺にレオナが言葉をつむいでくるが

「レオナ、もういいのです。貴女も明日、私と魔法帝国まで同行するのですから用意をしておいてください」

俺の言葉にレオナは部屋から出ていきしばらくしてから針子さんもドレスの調整が終わり退室していった。入れ替わるように給仕係りの人が入室してきていくつかのパンケーキと紅茶を入れて部屋を出ていった。
今は、何も食べる気がおきない。きっとエクアドルが予定を繰り上げて俺を魔法帝国へ連れていこうとしてるのは不足な事態を減らそうと言うのだろう。俺自身には逃亡や戦うと言う手段が取れないしな……。
今頃は、リースノット王国でクラウス殿下とアリス皇女殿下はうまくやっているのだろうか?

「クラウス殿下……」

「呼んだかい?」

後ろから声が聞こえてくる。振り返るとそこには端整な顔立ちをしたクラウス殿下がいた。でも、どうしてこんなところに?

「クラウス殿下、何故ここに?」

俺の疑問にクラウス殿下はやさしく微笑むと耳元で囁いてきた。

「君に会うためだよ、本当に手を尽くしたんだ。父上からは教会が動いてるから駄目だと言われたけどね。そんな事は関係ない、僕は僕のユウティーシアを誰にも渡すつもりはないからね。君の情報が得られてすぐに転移魔法を使ったんだよ。」

「え……でも……」

顔が真っ赤になっていくのをとめられない。耳元で囁かれるのはこんなにすごい威力を持っているなんて知らない。

「それと今回、君に手を出そうとしてるのは魔法帝国ジールだ。軍事同盟を結んだ公国アルドーラと軍事大国ヴァルキリアスも奴隷制度を推進させている魔法帝国ジールは問題視してるんだ。当然、力を貸してくれることになっている」

「まってください!それでは余計な血が流れてしまいます」

そう、俺一人のミスで起きてしまったことなのだ、これは俺の責任であり俺が輿入れすればそれで丸く収まるのだ。何の罪もない人を戦火に巻き込むのは良くない。

「関係ないね、僕にとってはその他有象無象よりもユウティーシア一人が大事なんだ。だから、魔法帝国?そんなのなんて君を手に入れるためなら滅ぼしても僕はまったく心は痛まないよ、それにもうそれだけの力はリースノット王国にはあるからね」

クラウス殿下は俺に語りかけながらも手のひらを天井へ向ける、そして小さな魔方陣を重ねていく。

「ユウティーシア、見てくれるかな?」

差し出されたクラウス殿下の手元を見るとクラウス殿下の手のひらの上には俺が作るのに似ている白色魔法石が存在していた。

「クラウス殿下、これは……」

「うん、これはね君が作っていた白色魔法石に近いんだ?人の魔力を極限まで高めて潜在能力を引き出し能力を付与することが出来る神代魔法の模造品かな?でもねこれでリースノット王国は国民のほとんどが魔法師の力を手に入れたんだ。そして王国兵は全員が中級魔法師以上の力を有しているんだよ?だから君はもう何も心配しなくていいんだ」

リースノット王国のほとんどが中級魔法師以上の力を有している?俺はその言葉を聞いて愕然とした。それだけの武力を持つと言う意味が理解できているのだろうか?力を有すると言うことは制御するための法などの整備が必要不可欠、それを俺がリースノット王国を離れていた2ヶ月と言う短期間で進めたと言うことは、かなり危険なのではないだろうか?

「ですが、急にそんなに強い力を手に入れたら……」

「関係ないね」

俺の言葉をクラウス殿下は切って捨てた。その態度はさきほどまでのクラウス殿下とは明らかに違っている。

「殿下……?」

「どうして分からないのかな?僕は、君さえ手に入ればいいんだよ。ジール?ヴァルキリアス?アルドーラ?そんなのどうなっても構わない。自国の民と君さえ居ればそれ以外は何もいらない。ただ、それだけじゃつまらない。このに喧嘩を売ってきたんだ。ジールは確実に潰すしこれはユウティーシアに手を出したらどうなるかの見せしめだ」

体中の震えがさっきから止まらない。いったい俺の前で語っている彼は何者なんだ?鑑定の魔術を使うと

class:神級魔法師(鉱物練成)
クラウス・ド・リースノット
Level:1281
HP:5681/5681
MP:48812762/49928877 ※草薙と触れ合う事で最大魔力量がつねに上昇し続ける
STR:92
DEX:118
CON:61
WIS:3088
INT:83

ステータスは平凡よりも高め程度だったが、レベルとHPしかもMPが桁外れで俺に触れているだけで魔力が上がり続けるというチート持ちだった。


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