最強のFラン冒険者

なつめ猫

ファイアーランス(物理)を覚えた。


「とりあえずまずは先方に会わないと話しにならないよな……」

断るにしても断らないにしても相手を顔合わせをしないとどうにもならない。そこで魔法帝国ジールまでの海路を考える。たしか俺が生まれたリースノット王国から船で海岸線沿いに沿って船で移動した場合ジール帝国の海境を超えるまで7ヶ月ほどの時間がかかったはずだ。そう考えると海上都市ルグニカから衛星都市スメラギまでの航海が1ヶ月にリースノット王国港までが一ヶ月、物資搬入なども踏まえると10ヶ月近い航海になる。
船酔いを起こす俺には無理だな……。

「グランカス、よく考えたが無理だ。先方にはそう伝えてくれ」

一年近く船の上で過ごすなんて俺には拷問もいいところだ、こういうときはきっぱり切り捨てるのがいい。そう俺は悪くないのだ。

「無理とか無理だ。相手は大国でうちは国土は広いが軍事力は100倍以上の差があるし断れない」

「俺よく考えたんだけどさ、軍事力って言うけど1年近い航海をする必要があるなら向こうも戦略物資が馬鹿にならないから下手に攻めてこないだろ?」

俺のその言葉にグランカスはため息をついていた。

「いや、転移魔法で軍ごと連れてこれる。今までは領地は遠いことから占領する価値はないと無視されてきたがさすがに大国の威信が傷つけられたら攻めてくるだろ?」

転移魔法か……めんどくさいな……。

「で?俺に一年も船に乗れと?そこまでしてお前らを助ける義務も責任もないんだが?」

「そうか、あれを見てもか?」

グランカスが指差した方へ視線を向けるとすごく俺を美化した美少女の像が建っていた。

「……おい。どういうことだ?」

あんなのは俺は聞いてないし、どうして俺の石造が市場の真ん中にあるのか不思議でならない。

「お前が衛星都市エルノに行ってる間にな、美少女が国と戦ってる話を出したほうが受けが良いって話になって布教してたらいつの間にかこうなってたんだ」

「……」

たしかに旧体制批判としてプロパガンダのための英雄を作れとは行ったが実在する人間を英雄に仕立て上げろとは一言も言っていない。
それに俺を英雄に仕立て上げるなんていい加減にしてほしい。

「クサナギがあれだけ派手に暴れたら、たとえクサナギじゃなくても国民はクサナギが国と戦ってる事だと思ってたと思うぜ?」

そう言われると批判はできないが、肯定もできない。
でも俺は見ず知らずの第三者のために労働を働くほど人はできていない。
そう、俺はノーと言える日本人なのだ。

「悪いが、俺は魔法帝国ジールには行く気は「報酬として、ルグニカ市民権を発行しようと思うんだが?」」

ふっ……。俺は、草薙雄哉。自分の意思を貫く孤高で初志貫徹を貫く男。そんな冒険者ギルドに登録な必要な市民権ごときで懐柔されるほど甘い人間ではないのだ。そう、俺は人助けのためにこの国が戦火に巻き込まれないために自分の身を差し出すに過ぎないのだ。

「いいだろう、だが結婚を受けるかどうかは別問題だ。いいな?」

「ああ、問題ない。後移動は一ヶ月後に向こうが手配する転移魔法で帝都ジールに直接移動するらしいから船の用意はしなくていいらしい」

「ふむ……いきなり国力の差を見せ付けてくるわけか。ならこちらもある程度の力を見せ付ける必要があるな?」

魔法とか魔法とか魔法とか、いろいろ覚えていくと便利かもしれない。

「グランカス、一ヵ月後のためにいろいろと用意が必要だ。わかってるな?」

「ああ、もちろんだ」

俺とグランカスは意気投合した。俺は市民権を取得するためにじゃなくて、俺を信じる俺が愛する国民のために。そしてグランカスも国を守るためと二人の考えが一致した。あとは先方からの話を如何になかったことにするかだが……。

そして俺はこれからする事を考えた。

翌朝、俺は総督府で宛がわれた部屋でドレスの採寸をされていた。
貴族時代に何度かされたこともあるがいつまでも慣れない。
12年も女の体だった事でスカートとかドレスとか女物を着るのは違和感はまったくなかったがこれだけは無理だ。時間がかかりすぎるんだよ。

朝に始まり採寸が終わったのはすでにお昼を回っていた。
パンケーキを口に運びながらグランカスが入ってくるのを待つ。

「遅いですわ」

周りに控えていた侍女達の目もあったので俺は、表面を取り繕う。
グランカスは気にせず、俺の傍まで来ると何かの動物の皮で作られたバックを大理石の床の上に下ろした。

「これが頼まれてたやつだ。それにしても必要なのがこんなものだとはな……クサナギには必要ないんじゃないのか?」

グランカスに頼んでいたのはたくさんの魔法書だった。

たしかに俺の魔術は、無詠唱で放つ生活魔法を魔力量に物を言わせて攻撃魔法として利用をしていて相手の虚をついたりといろいろと戦術の幅が広い。ただ魔力の消費がハンパないのだ。

数人から数百人程度が相手なら問題無いがさすがに40万の魔法部隊を運用する魔法帝国ジールを相手にするとなると聊か問題が出てくる。
それに俺の身体強化魔法も欠点があり一度使えば、使ってる最中ずっと魔力を消費する。この世界の人間は一度身体強化魔法を使えばしばらくは持つらしいのだが俺だけが例外なのだ。だから魔力コストが非常に高く連戦には向かない。

だから上級魔法などの習得が必要不可欠なのだ。

「ありがとうございます。これで勉強が捗りますわ」

俺の返事に、グランカスは眉を潜めながら部屋を出ていった。
さあ、勉強の時間だ!

しばらく一人にしてほしいと侍女へ申し付けた後に部屋に入る。そしてカバンから魔法書を取り出して目を通していく。

『初級攻撃魔法』
『中級攻撃魔法』
『解毒魔法』
『中級回復魔法』
『言語解読魔法』
『生活魔法2』
『生活魔法3』

ふむ……。気配察知系魔法も上級魔法も転移魔法の書物がないとは……。やっぱりその辺になると国家機密なのだろうか?できればアイテムボックス系の魔法が欲しかったんだが……。
40万も兵士がいたらたくさんお金手に入りそうだし、そう考えると硬貨を管理できるアイテムボックス系魔法は欲しかったんだが……、

中級魔法書の表紙を捲ると世界の心理はあーだこーだ書かれていたが読み飛ばす。必要なのは魔術を形成する魔法式だ。ヒールを使う際に魔法式を俺独自にアレンジして使用してるからその付近の魔法式がほしい。しばらくページを捲っていると魔法式が書かれてる項目を発見する。そこにはファイアーランスの魔法式らしい。左側に説明書きがされておりイメージを具体的にすることで魔法を発動させる事ができると書かれている。

つまりあれだろ?アニメとか漫画でよく使ってる炎の槍みたいな感じだろ?

イメージはアニメや漫画の場面をそのまま取り込んで反映させる。そこに先ほどの魔法式を組み込む。詠唱が必要らしいが、それらしきものは書かれていたがあまりこだわる必要もなくイメージを鮮明にする補助でしかないらしい。それならそこまで詠唱は必要ないのかもしれない……。

「ファイアーランス!」

俺の言葉に反応し2メートル近い炎を纏った日本風の槍が姿を現した。

「うん……想像してたのと違う……」



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