最強のFラン冒険者

なつめ猫

暗躍する主人公(中編)

<a href="//655400.mitemin.net/i227973/" target="_blank"><img src="//655400.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i227973/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
ローレンシア大陸南東国家勢力図




「グランカスはいるの!?」

聞き覚えのある声が扉の向こうから聞こえてきた。
恐らく俺の拉致を指示したエメラスだろう、身体強化魔法を覚える前にやられたら大変な事になっていた事を考えるとゴッドストレートを顔面に打ち込みたくなるがこっちの作戦をまだ読まれる訳にはいかないんだよな……そうすると、俺が捕まってる事にするかそれとも逃亡したことにするかどっちかになる訳なんだがどうするか?

「クサナギ、どうする?」

グランカスが俺に聞いて来るが、さてどうしたものか?
会議室の扉の外ではグランカスの部下達が取り込み中と説明してるが向こうの方が権力的には圧倒的に上だし納得しないだろうな。

「グランカス、俺の事は逃げられたという事にする事と時間を稼ぎたいので、城壁の外に逃げられたという事にしよう」

「分かった」

俺がテーブルの下に隠れたと同時に部屋の扉が開け放たれた。

「グランカス!クサナギは手に入れたの?」

何度も待たされて気が立っているのだろう。あんな感じの子ではなかったのに非常に残念だ。女は心の中で思ってる事と外面は違うって言われてるもんな。そういえば、前に言われた事があったな。女が褒めてる9割は建前だと……。

「それがな、逃げられて城壁の外に逃亡されたんだ」

そのまんま説明すんのかよ!と俺は心の中で突っ込みを入れた。もう少し捻りとか加えろよ!

「そう。やっぱり奴隷商人ごときじゃ使い物にならないね。もういいから……あとはこちらでするから」

「ど……奴隷商人ごとき……」

きっとエメラスには聞こえてないんだろうな。グランカスの小さな呟きは身体強化された俺にだけ拾う事が出来た。
エメラスが部屋から出て行ったのを確認して俺は机の下から出た。
そしてグランカスを見ると、とても落ち込んでるように見えるがまあ落ち込んでるんだろうな。

「まぁ気にするなよ!」

勤めて明るく接してやることにした。自分の仕事をバカにされれば落ち込むこともあるだろう。

「奴隷商人が人の人権を貶める屑な商売だとしても胸を張って生きればいいさ!」

俺は手加減して背中をバンバン叩きながら慰める。

「クサナギ!お前は慰めてるのか貶めてるのかどっちなんだー!」

はて?グランカスが怒りだしたぞ?慰めていただけなのに訳が分からん。
やっぱり俺には人を慰めるのは苦手らしいな。

「さてと……総督府の娘が帰ったとして向こうは俺を捜索する可能性が非常に高いと言うか絶対する」

俺の言葉にグランカスが頷く。
上級魔法師なんて国にそう何人もいる者じゃない、それを簡単に見逃すなど為政者足りえないだろう。
それにあまりにも長い時間、俺の姿が見つからないとおかしく思うだろう。
元々無一文でしかも冒険者に登録できないのだから、生活の糧を得られないだけで十分相手に注意を促すことになってしまう。
そうすると痛くない腹まで探られてしまう。
つまり……協力者がいるのでは?と推察されるだろう。
そうすると俺なら襲った人間を配下に加えると考えるしそうじゃなくても何かしら俺を襲った相手が隠してると推測する。

「そうするとあまり時間がないな……稼げて3日って所か?」

「稼げて?何が3日なんだ?」

すこしはグランカスは頭を使えよ思うが、教えておいた方がいいな。

「ああ、それは簡単に言えば俺は元々無一文だったからな。普通に考えればお金がないと生きていけない、だから協力者がいると思われるまでのタイムりミッドだ」

「なるほどな、でも冒険者になればいいんじゃないか?」

俺はそれは無理だと伝える。

「市民権がないのか?なら発行してやろうか?」

「ふむ……」

それも悪い手ではないのだが……って出来るのかよ?

「市民権って簡単に発行できる物なのか?」

「俺達は奴隷商人だからな、奴隷用の市民権を発行する権利は総督府から許可が下りてる」

「なるほど……だがそれはやめておいたほうがいいな」

「どうしてだ?」

「お前は少しは物事を考える癖をつけろ!まずな、相手が考える事を考えろ。俺の今の現状が、無一文でドレス姿だろ?それだと相手はドレスを売って換金してお金にする事とかを考えるわけだ、そうすると古着関係や洋服、布を含めた買い取りをしてる店には総督府の目が光る事になる。
次に、冒険者ギルドにも総督府は張り込むだろうな。いくら登録できないとは言え何かがある可能性も無いわけじゃないからな」

「そういうことか」

グランカスは納得したように頭を上下に揺らしていたが、俺は今後の事を考えていく。
まず相手を騙せるのは最長3日、最短では1日から2日程度だろう。
それ以上は、総督府が違和感に気づく可能性が非常に高い。
他の海爵の情報も欲しいんだが、どうしたらいいものか。

「なるほどな……」

俺はお金を調達するいい方法を見つけた。




海洋国家ルグニカに存在する衛星都市スメラギと衛星都市エルノの中間に位置する街道で草薙と騎士たちが対峙していた。

「とうとう見つけたぞ!クサナギ!総督府に刃向う逆賊め!」

「……」

「貴様の捕縛命令がスメラギ総督府から出ている、逃げる事はできないぞ?」

金属鎧フルプレートを身に纏った12人の騎士たちが腰から獲物を抜き口上を上げてくる。
さて、今日も稼ぎの時間だ。

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「ふむ……なかなかの稼ぎだな」

殺してないがヒール講座を施した騎士の方々は、その場で燃え尽きたように座っていた。

「金貨71枚と銀貨151枚と銅貨77枚か」

日本円に直すなら金貨が1枚1万円、銀貨が1枚1000円、銅貨が1枚100円だから868700円の稼ぎか……まぁまぁの稼ぎだな。

「勇敢な勇者であり偉大なる騎士の皆様?」

俺はニコリと微笑みながら、俺のヒール講座を体験して身も心も解された方々へ声をかける。
真っ白に燃え尽きた騎士の方々は俺を見て失神する者や泡を吹くものなど様々だ。

「お仕事で体が疲れましたらいつでもお越しくださいね?ヒールをいたしますから」

あっ、最後の人も失神した。
どうやら俺のヒールはずいぶんとお気に召して頂けたようだ。
それにしても、ずいぶん稼げたな……。
これで総督府スメラギからの金銭供与は4回目になる。しめて金貨381枚銀貨871枚銅貨1344枚だ、硬貨を入れた袋もかなり大きくなっており移動にかなり困るんだがそれは後で考えるとしよう。
さあ、奴隷解放を歌ってる海爵が治める衛星都市エルノまではあと3日の距離だ!

きっと素晴らしい都市なのだろう。



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