最強のFラン冒険者

なつめ猫

人権?悪人にあるわけないだろ?


「ヒール!」

俺の言葉が倉庫内に響き渡った。
壁のオブジェクトとなっていた男達やお星様から流れ星になって落下した人達とか御魚にクラスチェンジして陸の上でピクピクしてた人の怪我が治った。
ところがどういう事でしょう?
みんな俺を見て大変怯えてらっしゃいます。
どうやら、かなり大変な目にあったようです。

「さて、お前らの今の立場は分かるな?」

俺は手に持っていた握りコブシくらいの石を紹介する。
それだけで男達がゴクリを唾をのみ込んでるのが見えた。
そんなにこの石が食べたいのだろうか?あんまりおすすめはしたくないな……。
俺はそのまま石を握って砕いた。

「は、はい!何でもは、はなし……喋らせていただきますっ!」

うん、とても素直になってくれて俺は大変うれしい。
やっぱり彼らも平和的に俺と話をしてくれるようだ。
どこにも悪い人はいないんだなと心から安心した。

「それじゃまずはお前らの黒幕を吐いてもらおうか?」

「はい!全てお頭が知ってます!!」

「ふむ……水を持ってきてそのお頭ってやつらにかけろ」

「ラジャ!」

すぐに一人の男が倉庫から出ていってバケツに海水を入れて持って帰ってきた。
なかなか俊敏に動くやつだな。
そしてチラッと一人だけ地面に横になって幸せそうな顔をしている男を見る。
まったく職務怠慢だろと思いながらバケツを受け取るとお頭と呼ばれた男の顔にぶっかける。
もちろんヒール済みだから痛みはないはずだ。
しばらくすると男が目を覚ました。
俺はすかさずお頭と呼ばれた男の顎を持ち顔を近づける。
今度は気絶するなどの現実逃避はさせない。

「おい起きろ!今度失神したらゴッドブローの刑だからな?」

お頭と呼ばれた男がガクガクと震えなら頭を前後に振るって分かりましたと教えてくれる。
うむ、私のヒールという癒しが効いてくれたようで改心してくれたようだ。

「それではお頭と呼ばれた奴、お前らに俺を拉致して調教しろと言ったやつの名前を教えてもらおうか?」

俺はとてもやさしく微笑んで右手に再度持った石を紹介しながら握って潰した。

「は……はい。私達に命令をしたのは総督府です。総督府のイデル海爵とエメラス王女です。だからもうヒールはいやああああああああああああ」

それだけ男は言うと地面に崩れ落ちた。
やはりお疲れ様だったようだ。
さてと、なるほど……。
つまり裏で糸を引いてたのはこの国の王族と総督府になるわけか……。
またメンドクサイな。
どうしたものか……これでこいつらを殲滅したとしても疑われそうだしちょっかいを掛けてくるだろうな。
そうすると取る手は一つしかないな。

「おい、ここにはどれだけの奴隷商人がいるんだ?」

「「「「「え」」」」

「聞こえなかったのか?どのくらの奴隷商人の元締めがいるか聞いたんだが答えられないのか?」

「い、いえ!7人おります」

素直に答えてくれた。
まったくいい人たちだ。

「なるほど、それじゃその奴隷商人の元締め全員とお話したいんだが集められるか?」

「す、すぐお頭の名前で集まるように言ってきます!」

「まて!まずはお前たちを自由に行動させる前にお前らの家族と家族構成と友人と付き合いのある人間をこの紙に書いてもらおうか?」

俺は、近くの机に置いてあった羊皮紙とペンをとり男達に書くように伝える。
犯罪者をそのまま信じるなど俺は甘くない。
ならどうするか?
親や付き合いのある人間を人質に取るのだ。
そして俺が見てる間にお頭の情報も知る限り記載させた。

「さて、じつはだな?この書かれてる内容がまだ本当かどうかは俺には判別がつかないんだよ?そのへんは分かるよな?分かってくれるよな?」

ところが男達は一斉に「助けてください、何でもしますから」とか「お母さん……」とか「俺、旅に出るんだ」とか「分かりませんから助けてください」とか一斉に言い出した。まったく何をそんなに嫌がってるのか俺には理解できない。
第一、きちんと回復魔法で治療してやったじゃないか?助けてくださいとか人聞き悪すぎるだろ?

それでも仕方ないじゃないか、読心術とか俺はそういうの持ってないし……俺だって本当はやりたくないよ?本当だよ?生活魔法の実験に少しだけ付き合ってもらうだけなのだ。だから大丈夫、きちんとヒールで直してあげるからさ、安心していいよ。


俺は貴族時代に習った貴族流の淑女たる微笑みを彼らに見せたが彼らは攫われてきた子犬のようにビクビク震えているばかりだった、解せん。

しばらくしてから彼らと個人ヒール講座をしてから大体の事情が理解できた。

この町もそうだがほかの町もとい国境線に位置する衛星都市には必ず奴隷市場がある事。
そしてその奴隷は主にルグニカの貧しい農村から送られてくること。
代官が奴隷を量産してる事が分かった。
これは、代官にもヒール講座が必要だな……。

「さて……」

先ほどまで震えていた子犬達が疲れて半分ほど寝ていたが、残りは起きていたので話を続ける事にした。

「まずは奴隷商人の元締めをここに集めてくれ、そこのグランカスの名前を使えば問題ないだろ」

グランカスとはそこに転がってる俺のヒール個別指導を1時間に渡って受けた受講者だ。
そいつは衛星都市スメラギの大手奴隷商人だったらしく組織力もスメラギ一大きい。
それだけに影響力があるようでグランカスの奴隷ギルドである『安心安全信頼がモットーのドレイ館』は中々信頼度も高いらしい。
ドレイ扱っててずいぶんふざけた名前だとは思ったがまあいいだろう。

「すぐに手配をしてくれ。それと分かってるな?お前らがおかしな事をしたらここにいるグランカスから引き出した情報やお前らがさっき書いた情報から得た人間が漏れなく俺のゴッドストレートの餌食になるからな?情報を漏らしても同じだからくれぐれも気をつけろよ?」

「わ、わかっております!」

う~ん。なんかとても軍隊ぽくなってしまっているのだが大丈夫なのだろうか?
気分を落ちつけよう。まずはお越し頂ける奴隷商人の方々とお話する準備をしないと行けないしやる事はたくさんあるな。

「次に残った連中は今ここにいる奴隷を全員檻から出して俺の前まで連れてこい」

まずは奴隷として調教されてた人たちの回復が重要か。
そいつらからも有用な情報が貰えるかも知れないし面倒事が増えてきたな。その前に忘れてたな……。

「グランカスさん?起きて戴けますか?」

何故か男言葉話すとすぐ失神する癖がついてしまったグランカスに声をかける。
グランカスはすぐに目を覚ましてくれたので

「グランカスさん、今度ね?寝てしまわれたら大変な事になりますわよ?痛みで目を覚まして痛みで寝て痛みで目を覚ますフルコース受ける事になりますよわ?気を付けてくださいね?」

そう、悪人に人権はないのだ。
ここは日本とは違う、殺された人間の人権を無視して加害者の人権を守ろうとする狂ったエセ弁護士がいるような世界ではないのだ。
殴られたら殴り返すのがこの世界の摂理。

「さて、ご理解頂けたようですのでグランカスさんにしか出来ない事をして頂きたいのですが宜しいですわよね?」

俺のその発言に顔を真っ青にしたグランカスが首を縦に振ってくれる。
ご理解頂けたようで本当に良かった。
それにしてもグランカスの顔色が悪いのが体調でも悪いのだろうか?ワカラナイナー。

「それでは、今から来られます奴隷商人の方々のプロフィールを教えて頂けますか?円滑なコミュニケーションで必要になりますので」

俺はグランカスにニコリと微笑みグランカスも俺につられて引き攣った笑みを浮かべてくれた。



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