最強のFラン冒険者

なつめ猫

冒険者になれない!?

<a href="//655400.mitemin.net/i227973/" target="_blank"><img src="//655400.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i227973/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
海洋国家ルグニカ 国内勢力図


衛星都市スメラギ、そこは海洋国家ルグニカの玄関であり軍事国家ヴァルキリアスとリースノット王国との貿易航路であった。
都市人口は3万人を超えており、この時代の衛星都市人口1万人から見ればその人口は大幅に多い。
そんな衛星都市スメラギは、10年に一度行われる王位簒奪レースのために多くの物資が船で運び込まれていた。

そんな様子を見ながら草薙は、エメラス達に連れられて歩いていた。

今日のエメラスは、長い赤髪をツインテールにしており赤を基調としたシックなドレスを身に纏っている。
俺もエメラスが朝に持ってきた青のドレスを着ているのだが、エメラスのドレスと違って透き通ってる部分が多い事から露出が多いと言わざるえない。
現に周辺で働いてる船員達がこちらをジロジロとみてきているのだ。
まったく生まれ変わって女になってからと言うもの、街中を歩いているとつねに見てくる男に辟易したと同時に俺も前世では見ていた事を思い出し苦笑した。

「クサナギ様、どうかしましたか?」

「いえ、人が多いと思っただけです」

「そうですね、今は王位簒奪レースの一か月前ですので人が多く集まっているのです。その為、周辺諸国からも商人が多くやってきているために活気が出ているのです」

俺は、エメラスの言葉を聞きながら周囲を見渡していく。
市場には多種多様な物資が並んでいてリースノット王国では見た事がない食材も並んでいる。

「エメラスさん、冒険者ギルドに一度寄って登録をしたいと思ってるのですが案内をお願い出来ませんか?」

とりあえずは冒険者ギルドに登録して生活基盤を作らないといけないからな。
エメラスさんの話を聞く前に少しでもアドバンテージを作っておいたほうがいいだろう。

「あの……クサナギ様」

「どうしたんですか?」

エメラスがとても言いづらそうにしてるか何かあったのだろうか?

「クサナギ様は、海神様ですので市民権を御持ちではないですよね?市民権を御持ちではないとどこの国の冒険者ギルドにも登録できないのです」

「え?」

そんなの聞いた事無いんだけど……。俺の市民権ってあれだよな?ユウティーシア・フォン・シュトロハイム……。
それが使えないってことは冒険者登録出来ないって事になるわけだが……。
おいおいマジかよ。
俺の人生計画否定されちゃたんですけど?どうすんのこれ?
とりあえず本当に出来ないか確認するしかないよな?

「私としては、人の営みを確認したいと思っていますので冒険者に登録したいと思っていますのでどうにかなりませんか?」

「そうですね。簒奪レースで優勝をすると参加者全員は第一種市民権を得る事が出来ますね。第一種市民権でしたら間違いなくどこの国でも冒険者になる事が出来るはずです」

つまり、幸か不幸か王位簒奪レースの手伝いをして市民権を取るしかないわけか……。
あれ?これって、俺がレースに参加しないといけないってエメラスにバレったってことはかなり不利な状況なんじゃないか?

「えっと……エメラスさん?」

「はいっ!クサナギ様!!私は今日という日を神に感謝したことはありませんっ!!」

これは詰みましたわー。
すっかりエメラスは俺が簒奪レース手伝ってくれる感じになってるじゃん。
なんだよ、この世界クソゲーすぎだろ。俺、呪われてるんじゃねえの?
どうして平和に生きたい人間を厄介事に巻き込むんだよ……。

「エメラスさん?」

「はい!何でしょうクサナギ様!」

とてもいい笑顔を俺に向けてきてくれる。この敗北感、とてもエメラスを殴りたいな……ほら、女なら女の顔面グーで殴っても問題ないだろ?俺は真の男女平等主義者だからな、やるときはやる。

「つきました。こちらがスメラギの総督府になります。王位簒奪レースを含めた事情をお父様の口からクサナギ様に説明します」

俺は目の前にある青い煉瓦で作られた3階建ての建物を見上げて溜息をつく。
どうやら、ここからは本当の俺の出番のようだ。

建物に入るとすぐに受付があったが、エメラスの案内でそのまま奥にある階段で2階に上がっていく。
そうするとすぐに扉があった。

「クサナギ様、少々こちらでお待ちください」

エメラスが扉を数度叩くと中に入っていった。
俺は、時間が出来た事から港の様子を眺めているとある事に気が付いた。
足や首に枷をつけてる人間や頭の上に動物の耳をつけた人がいるのだ。

「ああ、奴隷と言う奴か」

「はい、そうです」

後ろを振り返るとそこにはエメラスがいた。
それ以上に、男言葉で話していたのだがエメラスの反応を見る限り気にはしていなかったようだ。

「この国では奴隷は普通なのですか?」

俺は気になったことを問いかけるがそれに対してのエメラスの反応は肯定だった。

「たとえば給料とか何年以上働いたら解放されるとか福利厚生などはあるのですか?」

「いいえ、全てありません。消耗品として扱われる奴隷に必要あるのですか?道具にお金を払うような者などいません。彼らの様な奴隷が我々高貴な者に奉仕出来るだけ必要とされるだけマシではありませんか?」

それを聞いて俺は頭を抱えたくなった。
奴隷が経済を成り立たせる?バカか、そんな事は絶対にありえない。
経済と言うのは消費を原点においている。
つまり生産した物を購入する消費者がいるからこそ経済は成長するのだ。
そして奴隷と言うのは商品を購入しない。つまり消費者ではないのだ。
俺の前世で中国は11億人の消費がある巨大市場と日本政府や経済界は言っていたがそれはまともな給料が国内に回ってる場合に限られる。
中国がまともな給料を全員に払ってると思ってるのか?そんなのはあり得ない。
それに日本を見てみれば分かる。
本来、お金を消費する若者を低賃金で奴隷として扱った結果、家電製品も車も家も売れなくなりいくら生産しても売れなくなった。
売れなくなった原因は、正当な賃金を払っていない企業とそれを許可した国と政府に問題があるのだ。
大体一昔前にはサラリーマンの生涯年収は3億円と言われていた。
いまの日本の年収はいくらだ?200万か?300万か?それを40年勤め上げたらいくらだ?
生涯年収なんて半分以下になってるだろうがよ。
そりゃ出産率も下がるし内需も縮小するわ。

それに内需が縮小すればどうなるか?
それは企業の業績悪化に繋がる。企業の業績が悪化すればボーナスも給料も下がる。
そこに絡めてきたのは派遣法改正だ、これは各種業種企業にいつでもクビを切れる人間を派遣して派遣会社は給料の中抜きをするというまさしく奴隷法案とも呼べるべき物を時の内閣は作り出した。

だから日本はどんなに税制改革しようとも経済は上向きにはならない。
企業ではなく個人を守る法律が日本にはないのだ。
それと同じ事を、エメラス達はしていてその事に気が付いていない。

さらにはそれを当然だとも言っている。
これは、救えないな……。

こういう弱者を虐げて自分達の利権を貪るようなやり方をするような奴は俺はもっとも嫌いだ。
ならこいつらと話あってする事はもう決まった。

異世界人があまり国の方針に関わったらいけない?ああ、たしかにそう思ってた時期が俺にもあったな。だが、さすがに奴隷制度は駄目だというか社畜人生30年の俺から言わせてもらえばそんなのは許しがたい。

エメラスの父親からの説明?いいだろう。
こちらも奴隷制度解放を説明してやろうじゃないか。



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