最強のFラン冒険者
幕間 アリスの貴族としての矜持
煌びやかに細部まで装飾を施された迎賓館の一室で夜会は行われていた。
多くの着飾った老若男女が会談し王家専属の音楽隊が多種多様な音楽を奏でる。
そして数多の高級料理がテーブルの上で飾られ場を引き立てる。
その様子は、ここ数年で急速に国力を高めつつあるリースノット王家主催の夜会に相応しい物であった。
どの料理を取っても一皿、銀貨どころか金貨数枚の値打ちがあるものだろう。
先ほども、肉を一切れ食べてみたが香辛料がふんだんに使われており味付けも濃く素材も最上級物を使ってるのからなのか素晴らしい物であった。
これは良い物ですと口の中の物を租借しながら話しかけて来たユリアに飲み込んでから話しなさいと注意した。
「あの、これは何のお肉なのですか?」
ユリアは、料理を運んできている一人のメイドに話かけている姿を見て私は、ユリアがこんなに料理に情熱を向ける切っ掛けを思い起こした。
元々、ユリアは私のお母様の傍付きのメイドだったけど何故かお母様との距離感がメイドという感じではなかった。
お母様は、お父様の側室だったけど正妻には疎まれていてあまり待遇は良いとは言えなかった。そんなある日、お母様は亡くなられた。
原因はいまだに不明。ただ当時の状況を洗っていくとお母様が亡くなられた後、王都ヴァルキリアスの中央を流れるライン川の畔で一人の男性の遺体が発見された。
その遺体を調べたところ、王宮料理人の一人でお母様の料理を作った者であると判明した。そのことで毒殺の疑いが濃厚となった。
当時、お母様の料理の配膳をしていたのはユリアだった。そのため、嫌疑はユリアに向けられたけどお母様が亡くなられてから後ろ盾を無くした私を始末しようとしてきた襲撃者から一緒に逃げていた事から可能性は低いとお父様はユリアの罪を不問としていた。そして私が、祖母の実家であるハーデス公爵家に匿ってもらってる間にお父様が、一連の事件を片付けた後にヴァルキリアスへ帰国しお父様から事件が起きた原因と顛末を聞いた。
お母様が毒殺された事を知らされた私は、食事がまったく喉が通らなくなり毎日毎日一人部屋の中で塞ぎこんでいた。何人ものメイドが私に食事を運んできてくれたが私はそれを口にする事は出来なかった。
そんなある日、アリス様と声をかけられた。私は、声がした方へ視線を向けるとそこには真新しいメイド服を着たユリアの姿があった。
ユリアはいつものように元気よく
「アリス様、これを食べて元気になってください」
と料理を差し出してきた。私はユリアが差し出してきた料理を見るとお世辞にも出来がいい物と思えない物だった。王宮料理人が作るような品が高い物ではなく平民が食べるスープのような物。飾り気も何もないし具材も不揃いに小さく切られていてとても皇女である私に出すようなものではなかった。
「大丈夫です、それは私が作った物です。だから私を信頼して食べてください」
「……」
私はどうしていいか迷った。きっとユリアが一生懸命作ってくれた物なのだろう。でも私はそれを食べる勇気がなかった。怖いのだ、死ぬのが……。私は、ユリアが差し出してきたスープ皿を、受け取る事を躊躇した。
「見ててくださいね。アリス様」
そう言いながら私が見てる前でユリアは、スプーンでひとすくいスープを飲んだ。
「大丈夫ですよ?そんなに怖がらなくても私はアリス様の味方です」
私は震える手でユリアからスプーンを受け取るとスープをゆっくりと口に含んだ。特に変わった味付けもないし見栄えだって良くない。でも……温かい……そう感じた。気が付けばユリアが差し出してくれたスープが入った御皿を全部飲み干していた。
「良かったです。これからは私も頑張って料理を覚えますね」
ユリアは笑顔で私にそう語った。
私は頷きながらお皿をユリアへ差し出し受け取ろうとしたユリアの指先を見て気が付いた。
「ユリア、あなた……それ……」
ユリアは私が差し出したお皿を受け取ると私に背を向けた。
そして照れるような仕草で私に向き直ると指先を隠したまま口を開いた。
「てへへ、少し切ってしまいました」
少しどころじゃない、チラッと見ただけでも指先が傷だらけだった。
私が知る限りユリアはお母様の傍付きのメイドだったけど、いつもお母様はユリアは、料理は苦手なのよねとよく話していた。ユリアが料理が苦手な理由はお母様は教えてくれなかったけど悲しそうな表情をしていたから私は敢えて聞かなかった。
でも逃亡してる時にユリアがポツリと語ってくれた。
それは逃亡で疲れてた私を励ます言葉だったかも知れないしユリア自信が自分自身を鼓舞する物だったのかも知れない。
でもユリアは私に語ってくれた。
ユリアは元々、ヴァルキリアス国と帝政国との間に位置する中立衛星都市に属する農村の生まれだった。中立衛星都市と言っても大国同士の思惑がある以上、代理戦争も起きやすく正常は不安定で治安も乱れている。決して住みやすいとは言い切れなかったそうだ。
そしてある日、ユリアが生まれ生活していた農村は山賊に蹂躙される。男は殺され女は犯され殺された。そして、まだ幼かったユリアと数人の子供達は奴隷にされたらしい。そして何日も何日も歩かされ与えられるのは粗末な食事と水だけでそんな日が何日も続き歩けなくなれば殴られ歩かされたと言う。なんてひどい世界なんだろう。そしてまだ6歳だったユリアにはどれほど過酷だったのだろう。
そして辿り着いた先で更なる地獄がユリアを待っていた。見目麗しい幼子だったユリアは、ヴァルキリアスの腐敗した貴族達に売られたのだった。ヴァルキリアスは、建国されてからは亜人種を含めて奴隷の売買どころか持ち込みですら禁止されているのに私は、ユリアの話を聞いて耳を疑った。誇り高いヴァルキりアスの貴族が何と言う事をしていたんだと……。
それでも、人の欲望には限りがない。法を破る者などいくらでもいるし実際ユリアを買った貴族もその一人だったそうだ。ユリアと同じ境遇の奴隷をその貴族は何人も抱えており虐待の光景をユリアは何度も何度も何度も何度も数年に渡り見せつけられたそうだ。そして……体が成熟したと思われたユリアは貴族の手慰みにされようとした所で一人の女性が指揮する黒服で統一された男達に助けられ保護されたそうだ。
その女性こそ、私のお母様らしい。
「副隊長、館の制圧は完了しました。全ての奴隷たちは保護し輸送の準備を開始しています……副隊長?」
「そう、ロウトゥにも報告しておいて。それと、この豚は私が始末しておくわ」
「はっ!それでこの娘も輸送しますか?」
「いいえ、この娘は心が閉ざされているようだから私がしばらく面倒を見るわ」
「了解しました。そのように団長には報告をしておきます」
「ええ、お願いね」
「や、やめるプ……わ、わしが誰か分かっているのかプ」
「ええ、分かっているわ。アンドレフ侯爵家当主ガンダタ」
「な、なら……わしがどれだけの力を持っているか分かってるはずでプ」
その時、初めてユリアは自分を買った貴族の名前を知ったらしい。
「そう、なら貴方も私達を知ってるわよね?」
男達に副隊長と呼ばれていた人物は、顔を覆っていた覆面を取りその顔を貴族に見せると顔を見た貴族の男の顔色が変わる。
「ぶひいいいいいいいい」
ユリアは突然、奇声をあげてガタガタ震えだす自分を買った人間を見た。奴隷を見下し虐待を加えていた尊大な男の姿そこにはすでに存在していなかった。
「き、貴様は……ユニコーンのカリナっ!何でお前みたいな大物がい……」
途中で男の言葉は途切れていたそうだ。男の頭と胴体がカリナと呼ばれた人物の手により切り離されたからだ。
胴体より切り離された貴族の頭が回転しながら宙を舞い部屋の中を鮮血に染め上げていく。頭を失った貴族の胴体はそのままベットから落ち切られた箇所から床に血をぶちまけた。
ユリアの網膜にその光景が一部始終、鮮烈に焼き付けられていき、男にカリナと呼ばれた女性はゆっくりとユリアに近づくと体につけられていた奴隷の証である腕輪と首輪を外すとゆっくりと語り掛けるように言葉を紡ぐ。
「もう大丈夫よ、今日からは私が貴女の家族だからねだから今日からは私と一緒に暮らしましょう」
そう語ったカリナの声はユリアはすぐには理解できなかったらしいけど月明りが照らした女性の顔だけははっきりと認識したらしい。
ユリアの瞳に映った女性の顔は、私と同じ青い髪をした美しい女性だった。
多くの着飾った老若男女が会談し王家専属の音楽隊が多種多様な音楽を奏でる。
そして数多の高級料理がテーブルの上で飾られ場を引き立てる。
その様子は、ここ数年で急速に国力を高めつつあるリースノット王家主催の夜会に相応しい物であった。
どの料理を取っても一皿、銀貨どころか金貨数枚の値打ちがあるものだろう。
先ほども、肉を一切れ食べてみたが香辛料がふんだんに使われており味付けも濃く素材も最上級物を使ってるのからなのか素晴らしい物であった。
これは良い物ですと口の中の物を租借しながら話しかけて来たユリアに飲み込んでから話しなさいと注意した。
「あの、これは何のお肉なのですか?」
ユリアは、料理を運んできている一人のメイドに話かけている姿を見て私は、ユリアがこんなに料理に情熱を向ける切っ掛けを思い起こした。
元々、ユリアは私のお母様の傍付きのメイドだったけど何故かお母様との距離感がメイドという感じではなかった。
お母様は、お父様の側室だったけど正妻には疎まれていてあまり待遇は良いとは言えなかった。そんなある日、お母様は亡くなられた。
原因はいまだに不明。ただ当時の状況を洗っていくとお母様が亡くなられた後、王都ヴァルキリアスの中央を流れるライン川の畔で一人の男性の遺体が発見された。
その遺体を調べたところ、王宮料理人の一人でお母様の料理を作った者であると判明した。そのことで毒殺の疑いが濃厚となった。
当時、お母様の料理の配膳をしていたのはユリアだった。そのため、嫌疑はユリアに向けられたけどお母様が亡くなられてから後ろ盾を無くした私を始末しようとしてきた襲撃者から一緒に逃げていた事から可能性は低いとお父様はユリアの罪を不問としていた。そして私が、祖母の実家であるハーデス公爵家に匿ってもらってる間にお父様が、一連の事件を片付けた後にヴァルキリアスへ帰国しお父様から事件が起きた原因と顛末を聞いた。
お母様が毒殺された事を知らされた私は、食事がまったく喉が通らなくなり毎日毎日一人部屋の中で塞ぎこんでいた。何人ものメイドが私に食事を運んできてくれたが私はそれを口にする事は出来なかった。
そんなある日、アリス様と声をかけられた。私は、声がした方へ視線を向けるとそこには真新しいメイド服を着たユリアの姿があった。
ユリアはいつものように元気よく
「アリス様、これを食べて元気になってください」
と料理を差し出してきた。私はユリアが差し出してきた料理を見るとお世辞にも出来がいい物と思えない物だった。王宮料理人が作るような品が高い物ではなく平民が食べるスープのような物。飾り気も何もないし具材も不揃いに小さく切られていてとても皇女である私に出すようなものではなかった。
「大丈夫です、それは私が作った物です。だから私を信頼して食べてください」
「……」
私はどうしていいか迷った。きっとユリアが一生懸命作ってくれた物なのだろう。でも私はそれを食べる勇気がなかった。怖いのだ、死ぬのが……。私は、ユリアが差し出してきたスープ皿を、受け取る事を躊躇した。
「見ててくださいね。アリス様」
そう言いながら私が見てる前でユリアは、スプーンでひとすくいスープを飲んだ。
「大丈夫ですよ?そんなに怖がらなくても私はアリス様の味方です」
私は震える手でユリアからスプーンを受け取るとスープをゆっくりと口に含んだ。特に変わった味付けもないし見栄えだって良くない。でも……温かい……そう感じた。気が付けばユリアが差し出してくれたスープが入った御皿を全部飲み干していた。
「良かったです。これからは私も頑張って料理を覚えますね」
ユリアは笑顔で私にそう語った。
私は頷きながらお皿をユリアへ差し出し受け取ろうとしたユリアの指先を見て気が付いた。
「ユリア、あなた……それ……」
ユリアは私が差し出したお皿を受け取ると私に背を向けた。
そして照れるような仕草で私に向き直ると指先を隠したまま口を開いた。
「てへへ、少し切ってしまいました」
少しどころじゃない、チラッと見ただけでも指先が傷だらけだった。
私が知る限りユリアはお母様の傍付きのメイドだったけど、いつもお母様はユリアは、料理は苦手なのよねとよく話していた。ユリアが料理が苦手な理由はお母様は教えてくれなかったけど悲しそうな表情をしていたから私は敢えて聞かなかった。
でも逃亡してる時にユリアがポツリと語ってくれた。
それは逃亡で疲れてた私を励ます言葉だったかも知れないしユリア自信が自分自身を鼓舞する物だったのかも知れない。
でもユリアは私に語ってくれた。
ユリアは元々、ヴァルキリアス国と帝政国との間に位置する中立衛星都市に属する農村の生まれだった。中立衛星都市と言っても大国同士の思惑がある以上、代理戦争も起きやすく正常は不安定で治安も乱れている。決して住みやすいとは言い切れなかったそうだ。
そしてある日、ユリアが生まれ生活していた農村は山賊に蹂躙される。男は殺され女は犯され殺された。そして、まだ幼かったユリアと数人の子供達は奴隷にされたらしい。そして何日も何日も歩かされ与えられるのは粗末な食事と水だけでそんな日が何日も続き歩けなくなれば殴られ歩かされたと言う。なんてひどい世界なんだろう。そしてまだ6歳だったユリアにはどれほど過酷だったのだろう。
そして辿り着いた先で更なる地獄がユリアを待っていた。見目麗しい幼子だったユリアは、ヴァルキリアスの腐敗した貴族達に売られたのだった。ヴァルキリアスは、建国されてからは亜人種を含めて奴隷の売買どころか持ち込みですら禁止されているのに私は、ユリアの話を聞いて耳を疑った。誇り高いヴァルキりアスの貴族が何と言う事をしていたんだと……。
それでも、人の欲望には限りがない。法を破る者などいくらでもいるし実際ユリアを買った貴族もその一人だったそうだ。ユリアと同じ境遇の奴隷をその貴族は何人も抱えており虐待の光景をユリアは何度も何度も何度も何度も数年に渡り見せつけられたそうだ。そして……体が成熟したと思われたユリアは貴族の手慰みにされようとした所で一人の女性が指揮する黒服で統一された男達に助けられ保護されたそうだ。
その女性こそ、私のお母様らしい。
「副隊長、館の制圧は完了しました。全ての奴隷たちは保護し輸送の準備を開始しています……副隊長?」
「そう、ロウトゥにも報告しておいて。それと、この豚は私が始末しておくわ」
「はっ!それでこの娘も輸送しますか?」
「いいえ、この娘は心が閉ざされているようだから私がしばらく面倒を見るわ」
「了解しました。そのように団長には報告をしておきます」
「ええ、お願いね」
「や、やめるプ……わ、わしが誰か分かっているのかプ」
「ええ、分かっているわ。アンドレフ侯爵家当主ガンダタ」
「な、なら……わしがどれだけの力を持っているか分かってるはずでプ」
その時、初めてユリアは自分を買った貴族の名前を知ったらしい。
「そう、なら貴方も私達を知ってるわよね?」
男達に副隊長と呼ばれていた人物は、顔を覆っていた覆面を取りその顔を貴族に見せると顔を見た貴族の男の顔色が変わる。
「ぶひいいいいいいいい」
ユリアは突然、奇声をあげてガタガタ震えだす自分を買った人間を見た。奴隷を見下し虐待を加えていた尊大な男の姿そこにはすでに存在していなかった。
「き、貴様は……ユニコーンのカリナっ!何でお前みたいな大物がい……」
途中で男の言葉は途切れていたそうだ。男の頭と胴体がカリナと呼ばれた人物の手により切り離されたからだ。
胴体より切り離された貴族の頭が回転しながら宙を舞い部屋の中を鮮血に染め上げていく。頭を失った貴族の胴体はそのままベットから落ち切られた箇所から床に血をぶちまけた。
ユリアの網膜にその光景が一部始終、鮮烈に焼き付けられていき、男にカリナと呼ばれた女性はゆっくりとユリアに近づくと体につけられていた奴隷の証である腕輪と首輪を外すとゆっくりと語り掛けるように言葉を紡ぐ。
「もう大丈夫よ、今日からは私が貴女の家族だからねだから今日からは私と一緒に暮らしましょう」
そう語ったカリナの声はユリアはすぐには理解できなかったらしいけど月明りが照らした女性の顔だけははっきりと認識したらしい。
ユリアの瞳に映った女性の顔は、私と同じ青い髪をした美しい女性だった。
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