最強のFラン冒険者

なつめ猫

王城への招致

 翌日から稽古の合間に白色魔宝石を作る仕事が追加された。ただ、そんなに作らなくてもいいと言っていたから朝、昼、夜で1個づつ作る程度で一日3個ほどだった。

 3歳から始まった稽古と白色魔宝石を作る仕事も2年が過ぎると効率よくこなせてきた。午前中に作れるだけ作って部屋の引出に入れておいて朝、昼、夜に1個づつ渡すのだ。

 白色魔宝石を取りに来るのはいつもお母様で殆どお父様は顔を見せない。いつも眉間に皺を寄せてるから俺の事がきっと嫌いなのだろう。

「ユウティーシア様、少しはレディらしくなってきましたね」
 とかアプリコット先生が俺を褒めてきたが男の精神状態で女らしくなってきましたね!と言われても心のうちは大変、複雑だ。
それよりも問題が発覚していた。俺が今日のお昼に渡す予定の白色魔宝石が全部、机の中から消えてしまっていたのだ。300個くらい貯めておいたはずなのにどこにいったんだろう?また魔力を込めないといけないのか。白色魔宝石を作った後は眠くなるのでいつも纏めて作ってるのに困ったものだ。

「何か考え事ですか?」
 俺は頭を振る。
そこで部屋のドアが、ノックの後に入りますよという言葉の後にお母様が入ってきた。

「少しティアを借りられるかしら?」
 お母様の言葉にアプリコット先生は「分かりました」と言いながら俺をお母様に差し出した。
お母様の表情を見ると少し怒ってるような気がするけど気のせいだと思いたい。俺は、お母様に抱きかかえられたまま部屋を後にした。
 抱きかかえらえたまま移動していると向かってる先は、執務室のようであった。お母様は執務室の前に立つと数度ノックをして部屋の中からの「入れ」と言う入室許可が下りてから執務室に俺を抱き抱えたまま足を踏み入れた。

 部屋の中には、羽ペンを持って仕事をしてるお父様と、その横には俺が横着するために大量に作った1個500グラム程度の白色魔宝石が山盛りに積んであった。

「これが何か分かるか?」
 眉間に皺を寄せたお父様が俺が作った白色魔宝石を指差して聞いてくるが俺は頭を振る。俺の様子を見てお父様の眉間の皺は一層深くなっていく。

「ティア、お前にはまだ理解出来ないと思うが魔力を限界まで使うのは寿命を縮める事なのだぞ?それでは困るだろう?」
 別に困らないけど……。前世で人生50年近く自分勝手に生きてきたのだ。今更、惜しむ命などあろうはずもない。それに男と結婚させられる罰ゲームまであるのだから俺の人生はすでにナイトメアモードに突入してると思う。
 俺が理解していない事に気がついたのかお父様は俺の目の前で溜息をついていた。

「エレンシア、しばらくティアは外出禁止だ。白色魔宝石も作らせなくていい、これだけあればしばらく足りるからな」

「分かりました」
 お父様の命令にお母様は即応していたが、なんかこれって夫婦としてはどうなんだろう?と思う。とても事務的な気がするしあまり良くないんじゃないかな?まぁ俺が男女の仲をどうと言う資格はないし放置しておくとしよう。

「ティア、それではしばらくは私と一緒の部屋で暮らしましょう」
 そんな事をお母様は提案してきたが、それは大変困る。
 将来、自由気ままに生きるために執務室から失敬した部屋に残してある庶民の生活大百科本が見れないじゃないか。

「お父様、白色魔宝石をきちんと言いつけ通り作りますのでお部屋は一人がいいです」
 俺の言葉にお父様は、驚いていたが頷いてくれた。
 お母様はとてもショックを受けた顔をしていたが放置してこう。
 あまり情が移ってもあれだしな。

そんな日々が積み重なっていき、6歳になったある日の事――――――

「ティア。王城に出かけるからすぐに支度しなさい」 
 俺はお父様に言われて、すぐに部屋に入りメイドさんに子供用のドレスを着せてもらってから、背中まで伸ばしてる髪の毛を綺麗にまとめ上げてもらい用意を終わらせた。
部屋を出ると、執事の方がいたので一緒に着いていき玄関ホールから出ると立派な木作りの馬車が待機していた。
 すでにお父様は馬車に乗り込んでおり、執事の人が俺を抱き上げて馬車に乗せてくれた。

 カラカラと軽快な音を立てながら馬車は自宅から遠ざかっていくが、そこでようやく自分が住んでた家が屋敷と呼べる物だという事に気が付いた。大きいとは思ってたけど周囲の家と比較すると数段大きい。とりあえず王城がどういう所か情報収集でもしておくか。

「お父様、王城はどういう所なんでしょう?」
 とても抽象的な聞き方になってしまったが……。

「ティア、お前は余計な事は考えなくていい」
 うーん。どうしようか?お父様とはまるで会話のキャッチボールが出来ないんだが……。
結局、王城に着くまで俺はお父様からお城の情報を得る事は出来なかった。

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