最強のFラン冒険者
女に生まれ変わったと思ったら3歳で婚約者が決まった。
「お生まれになりました!」
俺は、ぼんやりとした意識の中で……その言葉だけを聞いて意識を失った。
それからは半分寝ているような起きてるような状態が続き、意識がはっきりしたのはかなり経ってからだと思う。その日はずいぶんと頭がすっきりとしていて、いつもボンヤリとしか見ていなかった部屋の様子がはっきりと分かる。部屋の壁は薄いピンクの柄に白い花が絵が垂れていた。大きなタンスのような物やクローゼット、それにたくさんのぬいぐるみと大きな姿見まるで女の子の部屋のようだった。
とにかく、今の最優先課題としては現状確認だな。まず手足を見ていくが、短く小さいことから自分の体が赤ん坊状態から少し成長したくらいだと思う。とりあえずは、部屋の隅に姿見がある事だし姿見で自分の体をきちんと確認すれば、何歳くらいなのか分かるだろう。ただ……ずっと赤ん坊の頃から食っちゃ寝してた俺の体はハイハイと歩くという作業をしてこなかった影響からなのかベットの上から降りようとして高くて降りられなかった。そんな時に部屋のドアを開けて入ってきた人がいたのでそちらに視線を向けると20歳後半の女性がドアを開けて俺を見て
「お嬢様が目を覚まされました!」
と大きな声で叫んだのを見て俺はびっくりして尻もちをついた。女性の声を聞きつけたのか現れたのは2人の美男美女のセットだった。男性は20代半ばの黒髪、黒目のイケメンで服装も上質な物を着ている。女性は赤い瞳に白銀の髪を背中に伸ばしてる美女。二人とも俺を険しい表情で見ていたが
「目を覚ましたか、分かった」
俺を一目だけ見てイケメンは部屋から出て行ってしまう。俺はつい男性の動きを眼で追ってしまうが
「ティアは、お父さんに構ってもらいたいの?」
白銀の髪をした女性は俺を抱きかかえて話しかけてくるが、何と答えていいものか……。子供って何歳から喋るものなんだっけか?どう対応していいか迷っていると俺を発見した女性が
「ユウティーシアお嬢様は、高熱で3年近くずっと眠っていらっしゃたのです。すぐにお言葉を話すのは難しいと治療魔法師の方も仰ってました」
そう話しかけていた事で大体の事情は把握できた。つまり俺は生まれてから3年近くずっと寝ていてしかも女として生まれかわったと?……ん?女として生まれ変わった!?俺を抱いてる女性に分かるように姿見の方へ指を差して姿見を使わせろと訴えかける。
「あら?姿見が気になるのね。やっぱり小さくても女の子なのね」
女性の言葉に俺の男心がガリガリ削られていくが、まずは現況確認が必要だ。俺を抱きかかえたまま姿見前に移動した女性は、姿見に俺の姿が映るようにしてくれた。まだ幼くてあれだが男としてはあり得ない円らな黒い瞳と愛らしい顔に、ふわふわな黒い髪……どこからどう見ても美幼女がそこには映っていた。
とてもショックであった。どのくらいショックかと言うと
「お嬢様が気を失われました!、あなたーティア―がー」
というくらいショックだった。
それから数日が経過した頃、少しワイルドぽいダンディーなオジサンが部屋に入ってきた。後ろからは俺のこの世界の父親らしいバルザックに母親であるエレンシアが続けて入ってきた。エレンシアさんは良く部屋に来るんだが父親であるバルザックは俺が姿見ショックダウンの日から一度も見てない事からあまり俺を好きではないような気がする。現に今でも額に皺を寄せてるし……。
「この子が、お前が言っていた娘か?」
オジサンがいきなり父親に上から口調で話始めたが
「はい。名前はユウティーシアです」
俺は赤ん坊用の柵のついたベットの上で座ったまま二人の会話を聞くことにした。
「そうか、それでは一応ステータスは測っておいた方がいいな」
オジサンは俺を見下ろしながら父親に話しかけてきている。父親は、すでに用意していたのだろう。何やら石版ぽいのを取り出して母親に手渡して何やら会話をしているが何を言ってるのか小声でよく聞き取れない。そうしていると母親が近づいてきて俺を抱き上げ俺の右手を持って石版の紋様がついてる部分へ押し当てた。そうすると石版に数値が浮かび上がっていく。
name:ユウティーシア・フォン・シュトロハイム
HP:3/3
MP:1/1
STR:1
DEX:1
CON:1
WIS:1
INT:163
CHA:999
数値を見て誰もが凍りついたように見えた。
「これは……どういうことだ?」
どういうことなんだろう。ここに来る前にステータスを弄ったけど、こんなステータス配分は見た事がない。それよりも、まるでゲームの世界みたいだな。
「それにしても……」
父親が何か唸ってるようだがどうしたんだろうか?お腹でも痛いのだろうか?
「魔力量が低すぎる。これでは庶民よりも低いではないか」
なるほど……そっちの事で心配していたのか。お腹が痛い訳ではなかったんだな……。それよりも、この世界の平均ステータスっていくつくらいなんだ?基準がわからないと何とも言えないんだけど……。とりあえず黙っておこう。
「バルザック、魔力量が低いとは言え100年ぶりの王家の血筋を引く女子だ。血筋を重視する王家にとっては魔力量よりも血筋が重要なのは分かっているな?」
「はい、陛下」
とても嫌な会話を子供の前で始めた二人に俺は視線を向けてるが……。
「分かってくれればいい……クラウスの婚約者はユウティーシアで決定だ。幸いな事に知力と魅力のステータスが高いからすぐに貴族の作法を身に着ける事は可能だろう。それに将来は王妃になるのだ、これだけ知力が高ければ他国の言語を全てマスターする事も可能であろう。早いうちに教育を進めた方がいいな」
そんな事を目の前のオジサンは言い始めた。
「分かっています。最初からそのつもりです」
「分かってくれてるならいい」
父親の言葉に満足したからなのかオジサンは部屋から出て行ってしまった。そしてこの日、俺は生まれてたった3年で本人の意思確認も無いまま婚約者と王妃になる事が決まってしまったのだった。
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