むかしばなし
変質
「…そうか」
何年も知りたかった真実を知り、愕然とする。
「…シエラは、こんな化け物に利用されようとしていたのか」
だからこそ剣を握る手に力が込められていく。
「運命があるのなら、娘を殺し、妻をも奪おうとするこの化け物を殺せる機会を与えてくれたことに感謝する…」
自身の底から力が湧いてくる。
何かが起きようとしている。
背中が熱い。
まるで熱病に魘されるように目の前がボヤける。
「…殺す、私はお前を殺すよ『』」
でもボヤけた先にはっきりと敵が映る。
それは愛する娘の皮を被った竜。
それは狂信徒の成れの果て。
アレには言葉はいらない、慈悲もいらない。
救いもいらない。
情けもいらない。
彼らが信奉する神もいらない。
ベオは左腕が膨れ上がる感覚に気付く。
筋肉が強張っているのか、それとも心が怖気ついているのか。本来の彼ならこんなどちらなのか分からない感情の揺さぶれや体の変調に疑問を持つだろうが、今はそんなことに頭を回す暇はなかった。
何かになれる。
なんの躊躇いもなく感覚ではない『本能』がそう告げる。
体が言っているようにも思えた。
ベオにはソレが何かわからない。
でも左腕が千切れそうだった。
背中が裂けそうだ。
「…私は…シエラを守る……、たとえ、たとえ…!」
言いかけた。
でも、言い損なう。
いつの間にかベオとリイナの間に、剣を片手に颯爽するシエラの姿があったから。
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