むかしばなし

鬼怒川 ますず

違う何か

シエラもベオも轟音を聞いていた。
二人はその音を聞いた時に焦った。
何かが起きている。
そう二人は思った。
ベオはシエラから離れると彼女の剣を手に取り、部屋から出て行こうとする。
シエラもそれについて行こうとするが、ベオは彼女にここに残るように言った。
シエラはそれには不服そうな顔をしたが、ベオが笑顔で「大丈夫」と力強くいうにで仕方なく部屋に残ることにした。

ドタドタと、廊下を走りながら中庭の方へ駆ける。
その途中、聞いたこともない憎悪の混じった叫び声が響く。
とんでもない何かが起こっている。
ベオは予期せぬ出来事に不安になりながらもその足を止めることはない。

中庭に出ると、大きな黒い異形の化け物を背にしたリイナがセイレンと戦い、渡り合っていた。

「な、何が…」

起きているのか。
そう口に出す前に視線の先で戦っていたセイレンの右腕が砕け散った。
砕いたのはリイナだ。
リイナはどういうわけか、セイレンの硬い石体をただの剣で破壊したのだ。

セイレンは引き下がろうとするが、リイナはそのまま剣技の速度を殺さずに維持したままセイレンの左足を突き穿つ。
そのせいでセイレンは後ろに下がることも出来ずに後方に仰向けで倒れてしまう。

「スゲェなこの身体、さっきから息をするように技を繰り出せるし息も上がらない。田舎娘で清楚なイメージとはかけ離れた存在だな」

「ぐ……グガ……」

「さてと…おい人形、さっさとホムンクルスの体を出しな。数百年もこの城にあるのは知ってるんだ、差し出せばその造られた命を奪わないでやるよ」

リイナはセイレンを足蹴にしてから剣を向けて脅した。
このままでは危ない。
そう思ったベオは急いで彼らのもとに向かう。

「ま、待つんだリイナ!!」

リイナとセイレンは声のする方に顔を向ける。
リイナは「あ?」と言って今度はベオに剣を向ける。

「誰お前?この城に住んでるの?」

「な、何を言っているんだリイナ!お前一体どうしたんだ!?」

「は?……あーそっか、もしかするとこの娘の知り合いなのか、ってことはこの城にコイツは住んでいたってことかなるほどなるほど」

「この娘?お前リイナじゃないのか!!」

軽い調子でリイナではない口ぶりの何かに対してベオは嫌な予想を立てる。
まさかとは思う。
違うと願う。

でもリイナの口から心臓を掴まれるような痛みと頭を強く打つような発言が飛び出す。

「確かに私はリイナだろうな、もっとも本物はさっき殺したから私はリイナではないがな」

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