むかしばなし

鬼怒川 ますず

不死と人間

シエラは不死だ。
ベオ・クリスもまた不死だ。

しかし、リイナは違う。
特殊な彼らから生まれただけで不死の恩恵は得ていない。
ただの人間であり、少しずつ成長するのがその証拠だ。

そんなリイナが不死である二人と一緒に永遠を過ごすことは不可能であり、リイナが先に死ぬのが分かる。
そう、子が老いて死にゆく様をシエラとベオは見たくないのだ。

二人はもうこの時から決断していた。
リイナが15を迎えた時に、この城から出て行くことを。

『迷いの森』
城の周りを覆う森は、城に向かう者だけを森から追い出す結界の役割をしている。

もし、リイナが森から出て城に戻りたくてもたどり着くことはない。
それは酷いことだと二人は思った。

それでも、死にゆく姿を見たくない。
その一心で彼らは決断した。




あと7年、リイナの成長を嬉しく思う反面で苦しむ感情にシエラは胸が痛かった。
同じようにベオも感じていた。

「おとうさま!今日の鹿のお肉美味しいです!」

あぁ、それでも。

「おかあさまは今日もお綺麗です!」

そんな残酷な未来があっても。

「お母様、今日も剣の指導をお願いします!」

今があれば……それでいい。
リイナの成長を見ながら、シエラは今まで感じたことのない感情に感謝する。

「お母様、私にお母様の愛剣をくれるのですか!?」

託した。
あの子に、外の世界で元気に生きて欲しい。

「ありがとうございます!14の誕生日にお母様の大切な剣をもらえて嬉しいです! 大切にします!!」

その笑顔だけで、シエラは心を満たす。
それから6年はあっという間だった。

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