むかしばなし

鬼怒川 ますず

シエラは…1

シエラはベオが来てから毎日考えていた。
このスッとした様な胸のモヤモヤの正体を。

自分が殺した人物が生き返るといった何百年も経験したことのない事象に自分が何を感じているのか、あの不死の青年の生々とした笑顔と仕事ぶりを観察、見ていくうちに分かってしまう。

分かりたくはなかった。
考えたくもなかった。
そうでもしないと自分が自分じゃなくなる。

自分にそう言い聞かせながら彼女は澄ました美貌で毎日を過ごしていた。
でも変化が出てしまう。

ベオが来てから2週間後の夜に、ベオと同じ様な格好をした旅人が城に迷い込んだ。
背丈も似ており、同年代の様にも見えた。
だが反対に彼は寡黙で、泊めるとシエラが言うとすぐさま荷物を持ってビクビクと肩を震わせながらセイレンについて行く。

いつも通りの旅人。これぐらい寡黙なのも石で出来た召使に驚くのも普通だ。
ベオがおかしいのだ。
そう思いながら闇夜が深くなり、旅人の部屋に入るとすぐさま殺した。
いつも通り彼女の剣で胸を突き、死にゆく者の苦悶の表情を拝もうとした。目を開けて声もあげずに助けを乞うように両手をこちらに伸ばす姿を見るのがシエラが好きで好きでたまらない光景だ。

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