むかしばなし

鬼怒川 ますず

あっけらかん

シエラが語気を荒げたことによりベオはビクビクしながら椅子の上で縮こまる。


その姿をみてシエラは本当にこのベオという青年が5千年も生き続けているのか甚だ疑問に思い、さっき死んで生き返ったのも含めて全てが嘘らしく思えてきた。

しかし事実このベオは不死の肉体を持ち、バラバラだった肉体も時が戻るように修復されるのも見た。
とにかく本当の事だろう。

と、ひとつ疑問に思っていた事を聞いてみることにした。


「そういえばあんた、あの石像見ても驚かないのね。今までこの城に迷い込んだ人間は全員あの動く石像を見たら逃げるんだけど…まぁ誰1人として生かして帰さないけどさ」


最後に意味深な一言を付け加えたことによりより一層恐れるベオだったが、震えた声でとりあえず答えた。


「えーと、昔……シエラさんが言ってる錬金術師とは違う人が同じようなのを使役していたので、最初セイレンさんと会った時はこの城に住んでるのは高名な錬金術師の方だと思ってました」


「そう」


昔出会った錬金術師。
何か引っかかるような言い方のように聞こえるが、シエラはとりあえずこのベオがあの錬金術師となんの接点も無いかもと思うことにした。そもそもあの錬金術師も数百年の時の中で既に死んでいるハズだ。


「……とりあえず、貴方は不死で私を閉じ込めた錬金術師とはなんの関わりがないのよね」

「は、はい!」

「そう、なら明日にはこの城から出て行ってちょうだい」


そう言った時にベオは何か言いたげそうにしたが、シエラは自分が膝にかけていた毛布をベオに投げつけて広間を後にした。


まったく、とんだ厄日だ。



そう毒吐きながら廊下を歩き自室に着くとそのままベッドに横になり眠ってしまう。
色々あって、自分と同じ不死に出会い少し嬉しかった感情を押し殺して。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品