僕の妹は死霊使い(ネクロマンサー)~お兄ちゃんは妹が心配です~
3 妹は冒険者になりたい。
「レイ、冒険者になりたい! ゼロ様みたいな可愛くて、かっこいい冒険者になりたいの」
レイは力強くそう言い放つ。
憧れる存在に近づきたい。そう思うことは至って自然なことで、特にこれくらいの年頃は強い憧れをもつものだ。
『うーん、それは……』
「いいんじゃない?」
『ミカ?』
レイにどう言葉を返すか悩んでいたユウより先に、ミカが答える。
『レイはまだ、成人も迎えていないんだよ? それに冒険者と言ったら危険な仕事も沢山あるし……』
ユウの過保護モードが発動する。
小さな頃から何かと、それも親並にレイの面倒を見てきたユウは如何しても心配が先に出てしまうのであった。
「ユウは心配し過ぎ! レイちゃんはもう十二歳なんだよ? 言っても、あと三年で成人じゃない。やりたいことが出来たなら、応援してあげるのも保護者の役目でしょ」
『そうだけど……』
「お兄ちゃん……レイ、冒険者になっちゃだめ?」
レイは《うるうるな瞳》を発動する。
妹属性により、効果は二倍だ!
『うっ……』
如何やら効果抜群のようで、ユウは少しだけ後退ってしまう。
そんなユウに追い打ちは続く。
「それなら、レイちゃんが一人前になるまで私が面倒を見るって言ったらどう?」
ミカは胸を軽く叩き、任せなさいとばかりに強く主張する。
「えぇー」
「何でレイちゃんが嫌そうな反応をするの!?」
ミカの主張に真っ先に反応を示したのはレイだ。
その顔は食卓に嫌いな食べ物が出てきた子供のように、純粋な嫌気を起こしている。
そんなレイにミカは若干キレ気味のご様子。
『分かった! 僕もレイを応援する。人のために頑張れる、立派な冒険者になるんだよ』
「うん! (お兄ちゃんのために)頑張る」
『うんうん』
ユウは悩みに悩んだ末、レイのことを応援すると決めたようだ。
兄の許しを得たレイは満面の笑みを浮かべ、これからのことを考えているのか表情がコロコロと変わっていく。
ユウもレイの喜ぶ姿を見て、笑顔が絶えない。
「良かったわね、レイちゃん。改めて、これからよろしく」
ミカは純粋に祝福と協力の想いを込めて手を差し出す。
「それでね、次の街に行ったら甘いものを食べるの!」
『それは楽しそうだ! レイは想像するのが上手だね」
「うふふ。そんなことないよ~」
聞こえるはずのない音が、ミカの堪忍袋の緒が切れる音がした。
「人の話を聞けぇえええ!!!! このバカ兄妹がぁあああ!!!!」
「『……』」
沈黙。
ただし、ミカの怒りのオーラは治まらない。それどころか、増しているようにも感じる。
「いつも、いつも、いつも! 人の話は聞かない! 勝手にどっか行く! フォローがフォローになってない! 上からものを言う! てか、私の方が年上だから! それにミカさんとか、よそよそしく呼ばないでよっ。何気に傷つくんだから……ぅ、うっ、うえぇええーん……ユウのバカ、レイちゃんのばかぁぁ……」
溢れる想いを吐き出したミカは次第に泣き出してしまう。
いつもは頼れるお姉さんを目指しているミカも、まだ十七歳。
いくら成人をしたからといって、直ぐに大人になれるわけではない。
沢山の経験を積んで、そうやって人は大人になるのだ。
『ミカ。ごめんっ! ミカの気持ち、ちゃんと気付いてあげられなくて……僕、ミカに甘えてた。優しくて、頼りになる存在で、男の俺が情けないけどね』
「ユウ……」
「……ご、ごめんなさい……ミカお姉ちゃん」
「レイちゃんっ」
ミカの目からポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちる。
だが、その表情は悲しみなんてものは一つもなく、実に晴れ晴れとした喜びに満ち溢れていた。
ユウはそんなミカの表情を見て、思わず顔が綻ぶ。
レイは気恥ずかしさからか、顔をそらし何も言っていないかのように振舞っている。
「私も怒鳴ったりして、ごめんねっ。ありがとう、ユウ、レイちゃん」
『僕、ミカの笑う顔が好きだよ』
「え!? い、いきなり何よっ。褒めても何も出ないんだから」
ミカは顔を赤くすると、ぷいっと顔の向きを変えてしまう。ミカは照れ屋なのだ。
そんなミカの様子を見てユウはニコニコと笑う。
しかし、一名この雰囲気に快く思っていない人物がいる。
「お兄ちゃん、ミカさんとイチャつくの禁止」
『はいっ! ってあれ?』
「ほ、他にはないの? も、もっと褒めてもいいんだよ? って、何この状況……」
ミカが見たのはレイがベッドに座り、その太ももの上にユウの頭が乗っかっている、いわゆる膝枕というやつだ。
強制的に寝かされているユウは身動きが取れず、されるがままな状態でそんなユウの頭をレイはナデナデしている。
見事なまでの対抗意識を見せるレイ。
「ふ、ふーん。そっちがその気なら、とことん相手してあげるわ」
「ふっ。ミカさんじゃ、相手にもならない」
「言わせておけば、このガキっ!」
「何よ、オバサン」
両者の目からはバチバチと触れるのも恐ろしい程の稲妻が走っているような気がする。
そんな二人に挟まれているユウは体を縮ませる他ならなかった。
『ケンカはよくないよ二人とも……』
「「お兄ちゃん(ユウ)は静かにしてて!」」
『は、はい……』
それからレイとミカの口論は数時間にも渡り行われるのであった。
レイは力強くそう言い放つ。
憧れる存在に近づきたい。そう思うことは至って自然なことで、特にこれくらいの年頃は強い憧れをもつものだ。
『うーん、それは……』
「いいんじゃない?」
『ミカ?』
レイにどう言葉を返すか悩んでいたユウより先に、ミカが答える。
『レイはまだ、成人も迎えていないんだよ? それに冒険者と言ったら危険な仕事も沢山あるし……』
ユウの過保護モードが発動する。
小さな頃から何かと、それも親並にレイの面倒を見てきたユウは如何しても心配が先に出てしまうのであった。
「ユウは心配し過ぎ! レイちゃんはもう十二歳なんだよ? 言っても、あと三年で成人じゃない。やりたいことが出来たなら、応援してあげるのも保護者の役目でしょ」
『そうだけど……』
「お兄ちゃん……レイ、冒険者になっちゃだめ?」
レイは《うるうるな瞳》を発動する。
妹属性により、効果は二倍だ!
『うっ……』
如何やら効果抜群のようで、ユウは少しだけ後退ってしまう。
そんなユウに追い打ちは続く。
「それなら、レイちゃんが一人前になるまで私が面倒を見るって言ったらどう?」
ミカは胸を軽く叩き、任せなさいとばかりに強く主張する。
「えぇー」
「何でレイちゃんが嫌そうな反応をするの!?」
ミカの主張に真っ先に反応を示したのはレイだ。
その顔は食卓に嫌いな食べ物が出てきた子供のように、純粋な嫌気を起こしている。
そんなレイにミカは若干キレ気味のご様子。
『分かった! 僕もレイを応援する。人のために頑張れる、立派な冒険者になるんだよ』
「うん! (お兄ちゃんのために)頑張る」
『うんうん』
ユウは悩みに悩んだ末、レイのことを応援すると決めたようだ。
兄の許しを得たレイは満面の笑みを浮かべ、これからのことを考えているのか表情がコロコロと変わっていく。
ユウもレイの喜ぶ姿を見て、笑顔が絶えない。
「良かったわね、レイちゃん。改めて、これからよろしく」
ミカは純粋に祝福と協力の想いを込めて手を差し出す。
「それでね、次の街に行ったら甘いものを食べるの!」
『それは楽しそうだ! レイは想像するのが上手だね」
「うふふ。そんなことないよ~」
聞こえるはずのない音が、ミカの堪忍袋の緒が切れる音がした。
「人の話を聞けぇえええ!!!! このバカ兄妹がぁあああ!!!!」
「『……』」
沈黙。
ただし、ミカの怒りのオーラは治まらない。それどころか、増しているようにも感じる。
「いつも、いつも、いつも! 人の話は聞かない! 勝手にどっか行く! フォローがフォローになってない! 上からものを言う! てか、私の方が年上だから! それにミカさんとか、よそよそしく呼ばないでよっ。何気に傷つくんだから……ぅ、うっ、うえぇええーん……ユウのバカ、レイちゃんのばかぁぁ……」
溢れる想いを吐き出したミカは次第に泣き出してしまう。
いつもは頼れるお姉さんを目指しているミカも、まだ十七歳。
いくら成人をしたからといって、直ぐに大人になれるわけではない。
沢山の経験を積んで、そうやって人は大人になるのだ。
『ミカ。ごめんっ! ミカの気持ち、ちゃんと気付いてあげられなくて……僕、ミカに甘えてた。優しくて、頼りになる存在で、男の俺が情けないけどね』
「ユウ……」
「……ご、ごめんなさい……ミカお姉ちゃん」
「レイちゃんっ」
ミカの目からポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちる。
だが、その表情は悲しみなんてものは一つもなく、実に晴れ晴れとした喜びに満ち溢れていた。
ユウはそんなミカの表情を見て、思わず顔が綻ぶ。
レイは気恥ずかしさからか、顔をそらし何も言っていないかのように振舞っている。
「私も怒鳴ったりして、ごめんねっ。ありがとう、ユウ、レイちゃん」
『僕、ミカの笑う顔が好きだよ』
「え!? い、いきなり何よっ。褒めても何も出ないんだから」
ミカは顔を赤くすると、ぷいっと顔の向きを変えてしまう。ミカは照れ屋なのだ。
そんなミカの様子を見てユウはニコニコと笑う。
しかし、一名この雰囲気に快く思っていない人物がいる。
「お兄ちゃん、ミカさんとイチャつくの禁止」
『はいっ! ってあれ?』
「ほ、他にはないの? も、もっと褒めてもいいんだよ? って、何この状況……」
ミカが見たのはレイがベッドに座り、その太ももの上にユウの頭が乗っかっている、いわゆる膝枕というやつだ。
強制的に寝かされているユウは身動きが取れず、されるがままな状態でそんなユウの頭をレイはナデナデしている。
見事なまでの対抗意識を見せるレイ。
「ふ、ふーん。そっちがその気なら、とことん相手してあげるわ」
「ふっ。ミカさんじゃ、相手にもならない」
「言わせておけば、このガキっ!」
「何よ、オバサン」
両者の目からはバチバチと触れるのも恐ろしい程の稲妻が走っているような気がする。
そんな二人に挟まれているユウは体を縮ませる他ならなかった。
『ケンカはよくないよ二人とも……』
「「お兄ちゃん(ユウ)は静かにしてて!」」
『は、はい……』
それからレイとミカの口論は数時間にも渡り行われるのであった。
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