スクールライフCREATORs

石原レノ

感謝のことを表して

「次は……ここか」
僕が次に向かった場所は多目的ホール。程よい広さと快適さがウリである。
そしてこの場所にいる部活といえば……
「っ…あなたはーー」
そんなことを言いながら僕を指差すのは、先休日に会った夜也詞よなりことはだった。そしてその横には、恵理と、もう一人見慣れない男子生徒……あれ?
「あれって…」
男子生徒ではない。しかし、その【女の子】は僕と同じ男子の制服を着ている。抜群のプロポーションが無理矢理押し詰められている感じがして目のやり場に困るが、その女の子は人形のような顔をしていて、目が離せない。
「あれ?君ってもしかして……」
「っ!?」
じーっとその姿を見つめていた僕に気がついたのか、その女の子は僕の方へと近づいてきた。
無理やり詰め込まれたのか、制服がぱっつんぱっつんである。
「こんにちわ!僕はアリス・リファって言うんです。父がフランス、母が日本人の、中等部3年です!」
「う、うん…僕は天上瞬。よろしく」
差し出された手を握り、挨拶を交わす。するとーー
「……なっ」
抱きつかれていた。咄嗟の事で言葉も出ない僕だったが、それは周りも同じのようだった。この場にいた全員が驚愕の表情を浮かべてこちらを見ている。
程よく豊かな双丘が、僕の胸元に押し付けられ、瞬時に鼓動が早くなる。
「僕ね、先輩に感謝してるんだよ!この高校女の子しかいないから女子の制服しか着れなかったんだけど、先輩のお陰で着られるようになったんだ!本当にありがとう!」
「ち、ちょっと分かったから離れて!」
両の肩を掴んで勢いよく僕からアリスを離す。キラキラとした目線を未だ僕に向けてくるアリスに、僕は苦笑するしかなかった。
「あ、アリスさん!男性にそのようなスキンシップは、学生として不純です!」
そんなアリスを注意したのは、部活1真面目そうなことはだった。不機嫌なのかムスッとしている。
「えぇー。こんなのお父さんの国じゃ普通なのにー」
「あ、貴方の所ではそうかもしれませんが、ここではいけません!」
「まあまあ詞ちゃん。アリスちゃん日本に来てあんまりなんだから…今から慣れればいいよ」
恵理が宥めるが、詞の機嫌は治りそうはない。それを見てため息をこぼした恵理は、手に持っていた資料の束を僕に差し出した。
「はいこれ。こんなのでいいのかな?」
僕は受け取った資料にざっと目を通す。パラパラとページをめくりながら、書かなければならない内容が書かれているか確認する。
「…………大丈夫です。ご協力感謝します」
「そっか。それなら良かった」
安心したように笑みを浮かべる恵理。
特に残っている用も無いので、僕は多目的ホールを後にした……。
「私、あなたの事認めませんからね!」
去り際にそんな事を言ってきたのは未だ不機嫌そうな詞である。
どう返せばいいのかも分からないので、とりあえず笑って返した。

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