スクールライフCREATORs
最初の依頼
「、、、ねぇ、どこに向かってるの?」
学校案内終了と琉歌から言われたのだが、まだついてきてほしいと言われ、仕方なくついてきていた。先程通った道を再び通り、一つの空き教室の前で止まる。
琉歌の手によって開かれた扉の向こうには、凹字型に並べられた長机と椅子が並べられただけの教室。嫌な予感を覚えながらも、琉歌の後について行き、対面になって座る。
最初に口を開いたのは琉歌だった。
「先輩が本校初の男子生徒っていうことは昼間に話しましたよね?」
琉歌の問いかけに昼間の記憶を巡らせる。
「うん。僕も何でこの高校に来る事になったかは分からないけど」
「薄々感づいてるとは思いますが、先輩は少なからず生徒や教師に不安を抱かれています」
「(薄々どころか監視された時点で気がついていたけどね)」
心の中ではそう言いつつも頷くだけで済ませる。
「そこで生徒会は考えました。先輩がどうしたら生徒や教師から支持を集め、そして有意義な高校生活を送れるようになるかを」
「それは?」
辺りの空気がしんと静まり返り、琉歌の表情が真剣度100%の顔となる。そして琉歌が口を開いて―
「皆の手助けをする部活をやってもらうですっ!」
、、、、、、、は?
「ちょっとゆっか!そこめちゃくちゃ良い所!なんで横取りすんのさぁ!?」
「だって琉ちゃんばっかりお話してずるいです!私だって先輩とお話ししたいです!」
「いや待ってよ!僕が部活?何の?てゆうか僕以外部員全員女子なんて耐えきれないって!」
僕がそういったことをきっかけに、二人の言い合いは終わり、琉歌が咳払いをする。
「いえ、先輩には部活を立ち上げて、部長になって貰います。もちろん部員は先輩だけですよ」
琉歌の一言に内心「は?」と思いながらも話を続ける琉歌に耳を傾ける。
「この空き教室を部室として、生徒や教師の相談に乗り、それを手伝う『支援部』をやってもらいます。それが今の先輩に欠けている『信頼』を得るための唯一の手段だと生徒会内で決まりました、、、、やってくれますよね?」
どうやら僕の現状は自分が思っているより最悪らしい。この高校でやっていくためには『信頼』の二文字は必要不可欠だ。何せこの高校には僕の他に男子生徒がいないからだ。男同志なら別にこんなに堅っ苦しいことはしなくてもいい。しかし周りには女子生徒しかおらず、更には本校初の男子生徒というタグまで背負わされている。ここで出来る僕の決断は、、、
「、、、分かりました」
かくして、僕のたった一人による僕のための部活が発足した。
「はぁ、、、どうしてこうなった、、、」
相変わらず周りの目線が痛いくらいに感じる。机に突っ伏しても気にされる程有名な僕は、そろそろ気力も限界に達していた。
「瞬君」
転校以来久しぶりに呼ばれた自分の名前に、思わず勢いよく声の元へ振り返ってしまう。
「おぉっ!」
神巫女の顔がすぐそこまで迫ってきていた。そして大声で叫んでしまったことに、周りの視線が再び向けられたことから後悔を覚える。
「ごめんね、、、名前で呼びれるの嫌だったかな?」
申し訳なさそうな顔をする神巫女に思わずあたふたしてしまう。
「い、いやほら!僕名前呼ばれるの久しぶりだっから、、ほら!その、、新鮮というか懐かしいというか!」
僕のあたふたした対応を見て神巫女はクスりと笑った。
「そっか、、、私も男の子を名前で呼ぶのは初めてだから、、、緊張したよ?」
初めてという言葉に思わずドキッとしてしまう。
「(女の子の初めては凶器だ)」
天上瞬。ここに来て初めて上手いことを言った気がする。
「そ、それで?僕に何か用かな?」
「うん。瞬君部活は何にするのかなぁって思ってさ。私は文芸部に入ってるんだけど、どうかなぁって思って」
部活、、、。僕には既に『支援部』という僕のための部活があることを思い出した。そしてこの支援部の存在は今日の午後発表されるらしい。
「(、、、、どうしよう。これは言った方がいいのかな?でも午後に発表だし、黙っておいても変わらないかなぁ、、、、、うーん)」
「ダメだったかな?」
悩みに悩んでいると、神巫女が申し訳なさそうな顔をしていた。これを見て慌てないわけにはいかない。
「いや違うよ!?その、、、何ていうか、、、実は僕もう部活決めちゃってて、、、いやでも文芸部が嫌ってわけじゃなくてね?僕もそこまで深々と考えてたわけじゃなくて、、、」
「ふふっ」
僕があたふたと言い訳を重ねていると、先ほどとは打って変わって、神巫女が声に出して笑っていた。
目尻の涙を指で拭き取りながらお腹を抑えている。
「ごめんなさい。そこまで真面目に返されるなんて思ってもいなかったから。でもありがとう。そこまで真剣なのは私も良いと思うわ」
神巫女が席に戻る刹那、ふと僕の方へ向き直した。表情は先ほどと変わらない穏やかな笑みを浮かべたままで。
「あんまり考え込むと瞬君の体の調子も悪くなっちゃうよ?思い切ってやり通してみるのもありなんじゃないかな?」
「え、、それって」
僕が問いかけようとしても、神巫女はその前に「じゃあね」と言って席に着席してしまった。今更聞きに行くのもアレと思った僕は、神巫女の最後の一言を頭に残しながら授業を受けた。
「仕事って言っても誰からも依頼が来なかったら信頼を得るなんて遠い夢のまた夢だよなぁ」
放課後になり、部活や委員会、生徒会に打ち込む生徒はとっくに始められてもいい時刻。僕のいる支援部だけがぽつんと誰も来ることもなく静かな時間を過ごしていた。明日から本を持ってこようと心に決めた一時である。
「はぁ、、、帰ってもいいかなぁ、、、でもこれも僕のために生徒会が協力してくれてる訳だし、、、ダメだよなぁ」
本日何度目になるこの独り言も、僕以外がいない教室では空を切るだけであった。
「(何か無いのかな?)」
ふと視界に入ってきた本棚に足を運ぶ、ぎゅうぎゅうに詰められた本棚には、一番上の段にはみ出しながら本が収められていた。
「『〇界の〇心で〇を叫ぶ』に『〇〇は〇である』、、、か。どれも昔流行ったやつばっかりだな、、、、」
僕が次々に取っていく本達は皆随分前に流行った本ばかりだった。とりあえず一番気になった本を1冊取って、あとは無理やり上の段へ押し込んだ、、、すると、不意にノックの音が響き渡る。
「あ、はーい、、、え?」
扉を開けに足を運ぼうとすると、足の先端に何かが当たったような音がした。それを確認する余地もなく、先程無理やり詰め込んだ本達の一斉攻撃が僕の頭を直撃した。
「お、おぉぉぉ!」
頭に乗った本達から頭を出すと、止めの1冊が頭にクリーンヒット、自分に対して嫌悪感を抱いた所で、扉が開かれた。
「あ、あの、、、支援部ってここであって、、、、あ」
どうやら僕の初仕事の依頼者に変な印象を与えたらしい。元々不安そうな顔をしていたのに、本に埋もれた僕を見て更に不安さが増した顔をしている。
「ご、ごめん!今片付けるからそこに座ってて!」
ハッとして大急ぎで本を本棚に戻す。依頼者の女の子はそんな僕をじーっと見つめていた、、、ような気がした。視線が痛い。
「待たせてごめんね。多分知ってるとは思うんだけど、僕は天上瞬、それで、、、君の名前と学年を教えてくれないかな?あと用件も」
本棚の片付けを終え、依頼者の女の子と対面するように座る。僕が問いかけると、女の子は不安そうな表情を浮かべながらも口を開いた。
「高等部2年の小鳥沢白雪って言います、、、その、、、用件というのが、ある人と仲良くなりたくて、、なんですけど」
「小鳥沢さんだね。それで、その話したい人って誰なのかな?分かることや性格とかも教えてくれるといいかな。あと、具体的な依頼内容とか」
僕がそう問いかけると、白雪は仲良くなりたい人物の詳細を話し始めた。
「私が仲良くなりたいっていう人は私と同じ高等部2年の月見蒼葉ちゃんっていう人で、すごく大人しい性格なんです。すごく可愛いから仲良くなりたくて、でも蒼葉ちゃん体弱いみたいでほとんど保健室に居るんですよ。体調を損ねると悪いかなぁって思ったらわざわざ保健室に行くのも迷惑かなって思いまして、、、」
僕はなるほどと思いながらメモをとる。
「つまり小鳥沢さんはその月見さんっていう人と仲良くなりたいけど、彼女は体が弱くて保健室通い。話しかけるタイミングが無いってことかな?」
僕のまとめ方は間違ってはいなかったようだ。白雪も納得したように頷いていた。
僕はメモをした手帳を閉じて白雪の方を見た。
「明日また来てくれないかな?色んな方法を考えてくるからさ」
僕の提案に白雪が再度納得した事で今回の話し合いは終わった。
学校案内終了と琉歌から言われたのだが、まだついてきてほしいと言われ、仕方なくついてきていた。先程通った道を再び通り、一つの空き教室の前で止まる。
琉歌の手によって開かれた扉の向こうには、凹字型に並べられた長机と椅子が並べられただけの教室。嫌な予感を覚えながらも、琉歌の後について行き、対面になって座る。
最初に口を開いたのは琉歌だった。
「先輩が本校初の男子生徒っていうことは昼間に話しましたよね?」
琉歌の問いかけに昼間の記憶を巡らせる。
「うん。僕も何でこの高校に来る事になったかは分からないけど」
「薄々感づいてるとは思いますが、先輩は少なからず生徒や教師に不安を抱かれています」
「(薄々どころか監視された時点で気がついていたけどね)」
心の中ではそう言いつつも頷くだけで済ませる。
「そこで生徒会は考えました。先輩がどうしたら生徒や教師から支持を集め、そして有意義な高校生活を送れるようになるかを」
「それは?」
辺りの空気がしんと静まり返り、琉歌の表情が真剣度100%の顔となる。そして琉歌が口を開いて―
「皆の手助けをする部活をやってもらうですっ!」
、、、、、、、は?
「ちょっとゆっか!そこめちゃくちゃ良い所!なんで横取りすんのさぁ!?」
「だって琉ちゃんばっかりお話してずるいです!私だって先輩とお話ししたいです!」
「いや待ってよ!僕が部活?何の?てゆうか僕以外部員全員女子なんて耐えきれないって!」
僕がそういったことをきっかけに、二人の言い合いは終わり、琉歌が咳払いをする。
「いえ、先輩には部活を立ち上げて、部長になって貰います。もちろん部員は先輩だけですよ」
琉歌の一言に内心「は?」と思いながらも話を続ける琉歌に耳を傾ける。
「この空き教室を部室として、生徒や教師の相談に乗り、それを手伝う『支援部』をやってもらいます。それが今の先輩に欠けている『信頼』を得るための唯一の手段だと生徒会内で決まりました、、、、やってくれますよね?」
どうやら僕の現状は自分が思っているより最悪らしい。この高校でやっていくためには『信頼』の二文字は必要不可欠だ。何せこの高校には僕の他に男子生徒がいないからだ。男同志なら別にこんなに堅っ苦しいことはしなくてもいい。しかし周りには女子生徒しかおらず、更には本校初の男子生徒というタグまで背負わされている。ここで出来る僕の決断は、、、
「、、、分かりました」
かくして、僕のたった一人による僕のための部活が発足した。
「はぁ、、、どうしてこうなった、、、」
相変わらず周りの目線が痛いくらいに感じる。机に突っ伏しても気にされる程有名な僕は、そろそろ気力も限界に達していた。
「瞬君」
転校以来久しぶりに呼ばれた自分の名前に、思わず勢いよく声の元へ振り返ってしまう。
「おぉっ!」
神巫女の顔がすぐそこまで迫ってきていた。そして大声で叫んでしまったことに、周りの視線が再び向けられたことから後悔を覚える。
「ごめんね、、、名前で呼びれるの嫌だったかな?」
申し訳なさそうな顔をする神巫女に思わずあたふたしてしまう。
「い、いやほら!僕名前呼ばれるの久しぶりだっから、、ほら!その、、新鮮というか懐かしいというか!」
僕のあたふたした対応を見て神巫女はクスりと笑った。
「そっか、、、私も男の子を名前で呼ぶのは初めてだから、、、緊張したよ?」
初めてという言葉に思わずドキッとしてしまう。
「(女の子の初めては凶器だ)」
天上瞬。ここに来て初めて上手いことを言った気がする。
「そ、それで?僕に何か用かな?」
「うん。瞬君部活は何にするのかなぁって思ってさ。私は文芸部に入ってるんだけど、どうかなぁって思って」
部活、、、。僕には既に『支援部』という僕のための部活があることを思い出した。そしてこの支援部の存在は今日の午後発表されるらしい。
「(、、、、どうしよう。これは言った方がいいのかな?でも午後に発表だし、黙っておいても変わらないかなぁ、、、、、うーん)」
「ダメだったかな?」
悩みに悩んでいると、神巫女が申し訳なさそうな顔をしていた。これを見て慌てないわけにはいかない。
「いや違うよ!?その、、、何ていうか、、、実は僕もう部活決めちゃってて、、、いやでも文芸部が嫌ってわけじゃなくてね?僕もそこまで深々と考えてたわけじゃなくて、、、」
「ふふっ」
僕があたふたと言い訳を重ねていると、先ほどとは打って変わって、神巫女が声に出して笑っていた。
目尻の涙を指で拭き取りながらお腹を抑えている。
「ごめんなさい。そこまで真面目に返されるなんて思ってもいなかったから。でもありがとう。そこまで真剣なのは私も良いと思うわ」
神巫女が席に戻る刹那、ふと僕の方へ向き直した。表情は先ほどと変わらない穏やかな笑みを浮かべたままで。
「あんまり考え込むと瞬君の体の調子も悪くなっちゃうよ?思い切ってやり通してみるのもありなんじゃないかな?」
「え、、それって」
僕が問いかけようとしても、神巫女はその前に「じゃあね」と言って席に着席してしまった。今更聞きに行くのもアレと思った僕は、神巫女の最後の一言を頭に残しながら授業を受けた。
「仕事って言っても誰からも依頼が来なかったら信頼を得るなんて遠い夢のまた夢だよなぁ」
放課後になり、部活や委員会、生徒会に打ち込む生徒はとっくに始められてもいい時刻。僕のいる支援部だけがぽつんと誰も来ることもなく静かな時間を過ごしていた。明日から本を持ってこようと心に決めた一時である。
「はぁ、、、帰ってもいいかなぁ、、、でもこれも僕のために生徒会が協力してくれてる訳だし、、、ダメだよなぁ」
本日何度目になるこの独り言も、僕以外がいない教室では空を切るだけであった。
「(何か無いのかな?)」
ふと視界に入ってきた本棚に足を運ぶ、ぎゅうぎゅうに詰められた本棚には、一番上の段にはみ出しながら本が収められていた。
「『〇界の〇心で〇を叫ぶ』に『〇〇は〇である』、、、か。どれも昔流行ったやつばっかりだな、、、、」
僕が次々に取っていく本達は皆随分前に流行った本ばかりだった。とりあえず一番気になった本を1冊取って、あとは無理やり上の段へ押し込んだ、、、すると、不意にノックの音が響き渡る。
「あ、はーい、、、え?」
扉を開けに足を運ぼうとすると、足の先端に何かが当たったような音がした。それを確認する余地もなく、先程無理やり詰め込んだ本達の一斉攻撃が僕の頭を直撃した。
「お、おぉぉぉ!」
頭に乗った本達から頭を出すと、止めの1冊が頭にクリーンヒット、自分に対して嫌悪感を抱いた所で、扉が開かれた。
「あ、あの、、、支援部ってここであって、、、、あ」
どうやら僕の初仕事の依頼者に変な印象を与えたらしい。元々不安そうな顔をしていたのに、本に埋もれた僕を見て更に不安さが増した顔をしている。
「ご、ごめん!今片付けるからそこに座ってて!」
ハッとして大急ぎで本を本棚に戻す。依頼者の女の子はそんな僕をじーっと見つめていた、、、ような気がした。視線が痛い。
「待たせてごめんね。多分知ってるとは思うんだけど、僕は天上瞬、それで、、、君の名前と学年を教えてくれないかな?あと用件も」
本棚の片付けを終え、依頼者の女の子と対面するように座る。僕が問いかけると、女の子は不安そうな表情を浮かべながらも口を開いた。
「高等部2年の小鳥沢白雪って言います、、、その、、、用件というのが、ある人と仲良くなりたくて、、なんですけど」
「小鳥沢さんだね。それで、その話したい人って誰なのかな?分かることや性格とかも教えてくれるといいかな。あと、具体的な依頼内容とか」
僕がそう問いかけると、白雪は仲良くなりたい人物の詳細を話し始めた。
「私が仲良くなりたいっていう人は私と同じ高等部2年の月見蒼葉ちゃんっていう人で、すごく大人しい性格なんです。すごく可愛いから仲良くなりたくて、でも蒼葉ちゃん体弱いみたいでほとんど保健室に居るんですよ。体調を損ねると悪いかなぁって思ったらわざわざ保健室に行くのも迷惑かなって思いまして、、、」
僕はなるほどと思いながらメモをとる。
「つまり小鳥沢さんはその月見さんっていう人と仲良くなりたいけど、彼女は体が弱くて保健室通い。話しかけるタイミングが無いってことかな?」
僕のまとめ方は間違ってはいなかったようだ。白雪も納得したように頷いていた。
僕はメモをした手帳を閉じて白雪の方を見た。
「明日また来てくれないかな?色んな方法を考えてくるからさ」
僕の提案に白雪が再度納得した事で今回の話し合いは終わった。
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