異世界でマンション経営 - 異世界だろうと金が物を言うことに変わりはない -
転生
「死んでるのかなー?」
ツンツン、ツンツン。
なんか、上から声がする。
誰だよ。あと、ツンツンするのやめてくれよ……。俺は、眠いんだよ。
「……やめてくれよ。眠らせてくれ」
そう言った途端に、不自然なまでにピタッと俺をツンツンする何者かの手が止まった。
「良かったーー。生きてたー」
アニメの女の子キャラっぽい声だった。
…………あれ? そういえば、俺死んでなかったっけか。
――今更になって、ようやく最重要だと思われることを思い出した。
「なぁ、ここどこなんだ?」
そう口にしながら、俺は重いまぶたを開いた。
目を開けると、様々な情報が視覚を通じて脳に流れ込んできた。
流れてきた情報の中で、最もインパクトのあった情報。それは――先ほどから俺と会話をしている女子の顔だろう。
目は暗い紫っぽい色で、髪は白い。
言い方が少し悪いかもしれないが、アニメでよく見かけるテンプレと言っても差支えのない程度に定番になっている見た目の美少女だ。
もうこの手のキャラはお腹いっぱいだと思っていたが、いざ現実に現れると見とれてしまうのは、オタクにとっては不可抗力だろう。
――と、ここまで考えて、ようやく自分のいる場所を理解する。
もしかして、ここは、異世界なのだろうか? 本当に異世界転生なんてあるんだな。アニメの中だけだと思ってたぜ……。
――でも、もう死んでるから、正直どうでもいいや。
「ここは、森の中だよ。たまたま散歩してたら、誰か倒れてたから、生存確認をしてみたの」
目の前に美少女の顔があるというのに、どうして俺はこんなに冷静なのだろうか? クラスのオタ友にバレたら殺されかねない。
いや、そんなことより、どうして異世界に転生したのだろうか? ここは、森の中らしい。確かに、周囲には木々が生い茂っているため、現実においての森と概念が一緒であれば、ここは森なのだろう。
だが、はっきり言ってそれはさほど重要ではないようだ。ここが森かどうかよりも、この世界が異世界なのか――大事なのはそこだ。
だが、ここが異世界かなんてことを初対面の女子に聞くわけにはいかない。なぜなら、この世界の住人にとっては、この世界こそが現実で俺の世界が異世界であるのだ。
つまり、この世界についての質問をするためには、俺がこの世界においては異世界人だと判断されることに対する覚悟が必要なのである。
もし、普通の人間でないというレッテルを貼られてしまったら、今後のここでの生活が恐ろしいことになるだろう。
転生――まだ暫定だが――した直後に人に出会えたのは幸運でしかない。であれば、わざわざ見捨てられるようなリスクを犯す必要性はない。
とりあえず、定番だが記憶喪失という設定でいくか。
とりあえず、少女に何から話すべきかを悩んでいると、強い風が吹き、少し強い寒気を感じた。
いや、寒いと言うか、風が体に直接当たっているような感覚だった。
――なんだろう? 猛烈に嫌な予感がする……。
慌てて体を起こし、自分の姿を確認すると、この世界を恨みたくなった。
体のサイズは事故に遭う前とは変わっていない。これは、幸運だとしておこう。
……そして、それよりも大切なことなのだが、服を着ていない。かろうじて、股間の位置には、大きめの葉っぱが置かれていた。……ちなみに、体を起こした勢いで葉っぱが落ちそうになったのは、危機一髪で抑えることに成功した。
この葉っぱは、目の前の少女が置いておいてくれたのだろうか? ありがたいのだが、そうだとすると、この少女にアソコを見られてしまったのだろうか?
「な……なぁ、もしかして……?」
そう言うと、少女の頬が紅く染まった。やはり、見られてしまったのだろうか?
「……そ、そうだ。家から私の服を持ってくるね。女性用だけど、我慢してね。君の顔って、結構女顔だし大丈夫だよね? というか、この際、そんなこと気にしないでね」
早口にそう言って、走り去ってしまった。
――今まで何度か言われてきたけど、俺ってそんなに男っぽくないのだろうか? 初対面の少女に言われると、かなりショックなんだけど……。
あの少女の身長は、俺より少し低いくらいだったから、サイズについては問題ないだろう。
とりあえず、少女が戻って来るまでに、色々整理しておこう。
まず、ここは異世界だと決めつけていいだろう。そして、現実と同じ姿――なぜか服無し――で転生した。現時点では、特別な力も、天才的な頭脳も、ぶっ飛んでるチート能力もあるのか分からない。
――クソッ。異世界に転生した理由を教える美少女な女神様的なのがいたっていいじゃねーか。
「はぁ……」
これから、どうやって生活しよう。
目覚めて早速だが、腹が減ってきた。空腹感を感じるということは、この世界でも何かを食べないと死ぬのだろう。
……さっきの少女に事情を話して居候として養ってもらいたいくらいだが、世間体を気にする俺としては少し精神的に厳しい。
でも、事情を話しておいて、少しだけでも協力してもらえると嬉しいのだが……。この世界のことについて、ある程度の情報が欲しい。――例えば、この世界での通貨とか、使われている文字とかを。
あの少女が話していたのは日本語だったけど、アニメとかの異世界あるあるとして、言葉は通じるけど、文字は読めないというのがある。それが心配だ。文字が読めないと色々困りそうだし……。
「――起きないでね! 絶対に起きないでね!」
ん? 振りかな?
そう思ったが、さすがに起きるのはやめておいた。あの少女が服を持って来てくれたのだろう。
そして、仰向けの状態の俺の顔の上に服をかざして、俺に見えるようにしてくれた。
……フリル付きのワンピースだった。
「あのさ、こんな事言える立場じゃないのは分かってるんだけど、もっと男が着てても良さそうな服を無かったんデスカ? それと、俺下着すら無いんだけど、本当に着てもいいのか?」
すると、少女は申し訳なさそうな顔で、
「ごめんねー。私、女の子っぽい服しか着ないんだよね。あと、その服少し飽きちゃったから、もうあげるね」
「まぁ、贅沢は言えないよな。ありがとう。とりあえず、その服着てもいいかな?」
「どうぞ」
少女からワンピースをもらい――、
「……あのさ、後ろ向いててもらえないかな?」
そう言うと、少女は頬を紅く染めて、慌てて後ろを向いた。
――よし、着るか。それにしても、異世界最初の服装が、燕尾服とか、マントとか、鎧とかじゃなくて、フリル付きのワンピースだとはな……。
後ろを向いてくれている白髪の少女に感謝しながら、股間の上の葉っぱを地面に置き、立ち上がり、ワンピースを着る。パンツ履いてないせいで、スースーしてなんか変な気分だな……。
「えーと、着替え終わったけど、本当にいいのか? 着てから確認するのもアレだけど――」
「だーかーらー、別にいいのッ。それより、全裸の男の人を森の中に放置しておく方が不快だしさ」
「ありがとう、本当にありがとう。それで、ありがとうついでに頼まれてくれないかな?」
「頼み?」
――さて、何から話すべきだろうか?まずは――、
「実は……さ。俺、記憶が欠けちゃってるんだ」
そう言うと、少女が疑問を感じたのか、首をひねった。――まぁ、当然だろう。
「……それ、本当? うーん、記憶喪失ねぇ。たぶん、君は衛士で、誰かに魔法をかけられたってところじゃないかな」
――勘違いもしているようだが、信じてくれたのだろうか。
普通、異世界に転生しても初めは言ったこと全てを信じてもらえないと思っていた。……まぁ、あくまでアニメでそんな展開をよく見かけるというだけの根拠だったが。
どちらにしろ、これは、なかなかいい異世界ライフを過ごせるのではないだろうか? とりあえず、
「そんなことだから、これから色々手伝って貰えると助けるんだけど……」
「うん、私に手伝える範囲ならいいよ。これからよろしくね。――ところで、自分の名前は覚えてるの?」
あぁ、そういえば、教えてなかったか。
「俺は、雲母拓磨って言うんだ。これから、よろしくな」
「キララ・タクマ? 変わった名前だね」
「あぁ、タクマでいいよ」
「そうなんだ、じゃあ、これからよろしくね、タクマ」
「あのさ……君の名前も教えてくれないかな?」 
「あっ、忘れてた。私は、クラウディア・クロウド。クラウって呼んでね」
おお。いかにも異世界人って感じの名前だな。異世界の人と会ったのコイツが初めてだけど。
「そうか。ところで、クラウって何歳なんだ? 俺は、16歳だけど……」
「女性には年は聞かないのがマナーなんだよ。私も16歳だよ~、同じだね」
やっぱり、同じ歳だったのか。身長からして、だいたいそうだろうとは思っていたけど――。
「ところで、さっきまでもそうだったけど、タメ口でいいか? そっちもいいからさ」
「うん、いいよ。じゃあ、改めてこれからよろしくね、タクマ」
「あぁ、こちらこそよろしくな、クラウ」
ふぅ、これで、この先なんとかなりそうだな。
「そうだ、どこかの街に連れて行ってくれないか? この世界についての情ほ……じゃなくて、記憶を取り戻すための手がかりが欲しいんだ」
「うん、分かった。ここから、一番近くだと、『メーレル』って街になるね。あそこは、広いし、人も多いから、君のこと知ってる人もいるかもしれないから、悪くないと思うけど……どうかな?」
いや、どうかなって聞かれても、何も知らないんだけど……。
「まぁ、とりあえず、そこで頼む」
「うん、分かった」
そう言って、クラウがスタスタ歩いたから、その隣を歩いた。
今気が付いたけど、ここの森、色々な動物がいるな。生態系が豊かだ。トカゲやリスだけでなく、鹿も見つけられた。メタリックピンクのトカゲを初めて見たが、今更そんなことに驚く気にはなれない。
しばらく歩くと、目の前に高い壁が見えた。おそらく、あの壁の中がメーレルなのだろう。……だが、なぜ街が壁に囲まれているのだろうか?
「あの壁の中がメーレルだよ」
「どうやって入ればいいんだ?」
「あそこにいる衛士に頼めば、入れてもらえるよ」
クラウが、指を指しながら言った。
かなり遠くだが、かろうじて、鎧を着込んだ衛士とやらの姿を確認できた。
そして、俺とクラウは、衛士の目の前を通り抜け、壁についた巨人でも通れそうなサイズの扉の前まで行くと、衛士が普通に開けてくれた。
――普通に入れたのだが、それで良かったのだろうか? まぁ、何も言われてないし、良かったのだろう。それなら、何のための衛士なのだろうか?
扉は、高さ約3メートル、幅約1メートル程度だった。一体なぜこんなに大きいのだろうか?
――多少の不安は残るが、それよりも、情報収集が先だ。不思議に思ったことは、また今度クラウに聞いてみるとしよう。
ツンツン、ツンツン。
なんか、上から声がする。
誰だよ。あと、ツンツンするのやめてくれよ……。俺は、眠いんだよ。
「……やめてくれよ。眠らせてくれ」
そう言った途端に、不自然なまでにピタッと俺をツンツンする何者かの手が止まった。
「良かったーー。生きてたー」
アニメの女の子キャラっぽい声だった。
…………あれ? そういえば、俺死んでなかったっけか。
――今更になって、ようやく最重要だと思われることを思い出した。
「なぁ、ここどこなんだ?」
そう口にしながら、俺は重いまぶたを開いた。
目を開けると、様々な情報が視覚を通じて脳に流れ込んできた。
流れてきた情報の中で、最もインパクトのあった情報。それは――先ほどから俺と会話をしている女子の顔だろう。
目は暗い紫っぽい色で、髪は白い。
言い方が少し悪いかもしれないが、アニメでよく見かけるテンプレと言っても差支えのない程度に定番になっている見た目の美少女だ。
もうこの手のキャラはお腹いっぱいだと思っていたが、いざ現実に現れると見とれてしまうのは、オタクにとっては不可抗力だろう。
――と、ここまで考えて、ようやく自分のいる場所を理解する。
もしかして、ここは、異世界なのだろうか? 本当に異世界転生なんてあるんだな。アニメの中だけだと思ってたぜ……。
――でも、もう死んでるから、正直どうでもいいや。
「ここは、森の中だよ。たまたま散歩してたら、誰か倒れてたから、生存確認をしてみたの」
目の前に美少女の顔があるというのに、どうして俺はこんなに冷静なのだろうか? クラスのオタ友にバレたら殺されかねない。
いや、そんなことより、どうして異世界に転生したのだろうか? ここは、森の中らしい。確かに、周囲には木々が生い茂っているため、現実においての森と概念が一緒であれば、ここは森なのだろう。
だが、はっきり言ってそれはさほど重要ではないようだ。ここが森かどうかよりも、この世界が異世界なのか――大事なのはそこだ。
だが、ここが異世界かなんてことを初対面の女子に聞くわけにはいかない。なぜなら、この世界の住人にとっては、この世界こそが現実で俺の世界が異世界であるのだ。
つまり、この世界についての質問をするためには、俺がこの世界においては異世界人だと判断されることに対する覚悟が必要なのである。
もし、普通の人間でないというレッテルを貼られてしまったら、今後のここでの生活が恐ろしいことになるだろう。
転生――まだ暫定だが――した直後に人に出会えたのは幸運でしかない。であれば、わざわざ見捨てられるようなリスクを犯す必要性はない。
とりあえず、定番だが記憶喪失という設定でいくか。
とりあえず、少女に何から話すべきかを悩んでいると、強い風が吹き、少し強い寒気を感じた。
いや、寒いと言うか、風が体に直接当たっているような感覚だった。
――なんだろう? 猛烈に嫌な予感がする……。
慌てて体を起こし、自分の姿を確認すると、この世界を恨みたくなった。
体のサイズは事故に遭う前とは変わっていない。これは、幸運だとしておこう。
……そして、それよりも大切なことなのだが、服を着ていない。かろうじて、股間の位置には、大きめの葉っぱが置かれていた。……ちなみに、体を起こした勢いで葉っぱが落ちそうになったのは、危機一髪で抑えることに成功した。
この葉っぱは、目の前の少女が置いておいてくれたのだろうか? ありがたいのだが、そうだとすると、この少女にアソコを見られてしまったのだろうか?
「な……なぁ、もしかして……?」
そう言うと、少女の頬が紅く染まった。やはり、見られてしまったのだろうか?
「……そ、そうだ。家から私の服を持ってくるね。女性用だけど、我慢してね。君の顔って、結構女顔だし大丈夫だよね? というか、この際、そんなこと気にしないでね」
早口にそう言って、走り去ってしまった。
――今まで何度か言われてきたけど、俺ってそんなに男っぽくないのだろうか? 初対面の少女に言われると、かなりショックなんだけど……。
あの少女の身長は、俺より少し低いくらいだったから、サイズについては問題ないだろう。
とりあえず、少女が戻って来るまでに、色々整理しておこう。
まず、ここは異世界だと決めつけていいだろう。そして、現実と同じ姿――なぜか服無し――で転生した。現時点では、特別な力も、天才的な頭脳も、ぶっ飛んでるチート能力もあるのか分からない。
――クソッ。異世界に転生した理由を教える美少女な女神様的なのがいたっていいじゃねーか。
「はぁ……」
これから、どうやって生活しよう。
目覚めて早速だが、腹が減ってきた。空腹感を感じるということは、この世界でも何かを食べないと死ぬのだろう。
……さっきの少女に事情を話して居候として養ってもらいたいくらいだが、世間体を気にする俺としては少し精神的に厳しい。
でも、事情を話しておいて、少しだけでも協力してもらえると嬉しいのだが……。この世界のことについて、ある程度の情報が欲しい。――例えば、この世界での通貨とか、使われている文字とかを。
あの少女が話していたのは日本語だったけど、アニメとかの異世界あるあるとして、言葉は通じるけど、文字は読めないというのがある。それが心配だ。文字が読めないと色々困りそうだし……。
「――起きないでね! 絶対に起きないでね!」
ん? 振りかな?
そう思ったが、さすがに起きるのはやめておいた。あの少女が服を持って来てくれたのだろう。
そして、仰向けの状態の俺の顔の上に服をかざして、俺に見えるようにしてくれた。
……フリル付きのワンピースだった。
「あのさ、こんな事言える立場じゃないのは分かってるんだけど、もっと男が着てても良さそうな服を無かったんデスカ? それと、俺下着すら無いんだけど、本当に着てもいいのか?」
すると、少女は申し訳なさそうな顔で、
「ごめんねー。私、女の子っぽい服しか着ないんだよね。あと、その服少し飽きちゃったから、もうあげるね」
「まぁ、贅沢は言えないよな。ありがとう。とりあえず、その服着てもいいかな?」
「どうぞ」
少女からワンピースをもらい――、
「……あのさ、後ろ向いててもらえないかな?」
そう言うと、少女は頬を紅く染めて、慌てて後ろを向いた。
――よし、着るか。それにしても、異世界最初の服装が、燕尾服とか、マントとか、鎧とかじゃなくて、フリル付きのワンピースだとはな……。
後ろを向いてくれている白髪の少女に感謝しながら、股間の上の葉っぱを地面に置き、立ち上がり、ワンピースを着る。パンツ履いてないせいで、スースーしてなんか変な気分だな……。
「えーと、着替え終わったけど、本当にいいのか? 着てから確認するのもアレだけど――」
「だーかーらー、別にいいのッ。それより、全裸の男の人を森の中に放置しておく方が不快だしさ」
「ありがとう、本当にありがとう。それで、ありがとうついでに頼まれてくれないかな?」
「頼み?」
――さて、何から話すべきだろうか?まずは――、
「実は……さ。俺、記憶が欠けちゃってるんだ」
そう言うと、少女が疑問を感じたのか、首をひねった。――まぁ、当然だろう。
「……それ、本当? うーん、記憶喪失ねぇ。たぶん、君は衛士で、誰かに魔法をかけられたってところじゃないかな」
――勘違いもしているようだが、信じてくれたのだろうか。
普通、異世界に転生しても初めは言ったこと全てを信じてもらえないと思っていた。……まぁ、あくまでアニメでそんな展開をよく見かけるというだけの根拠だったが。
どちらにしろ、これは、なかなかいい異世界ライフを過ごせるのではないだろうか? とりあえず、
「そんなことだから、これから色々手伝って貰えると助けるんだけど……」
「うん、私に手伝える範囲ならいいよ。これからよろしくね。――ところで、自分の名前は覚えてるの?」
あぁ、そういえば、教えてなかったか。
「俺は、雲母拓磨って言うんだ。これから、よろしくな」
「キララ・タクマ? 変わった名前だね」
「あぁ、タクマでいいよ」
「そうなんだ、じゃあ、これからよろしくね、タクマ」
「あのさ……君の名前も教えてくれないかな?」 
「あっ、忘れてた。私は、クラウディア・クロウド。クラウって呼んでね」
おお。いかにも異世界人って感じの名前だな。異世界の人と会ったのコイツが初めてだけど。
「そうか。ところで、クラウって何歳なんだ? 俺は、16歳だけど……」
「女性には年は聞かないのがマナーなんだよ。私も16歳だよ~、同じだね」
やっぱり、同じ歳だったのか。身長からして、だいたいそうだろうとは思っていたけど――。
「ところで、さっきまでもそうだったけど、タメ口でいいか? そっちもいいからさ」
「うん、いいよ。じゃあ、改めてこれからよろしくね、タクマ」
「あぁ、こちらこそよろしくな、クラウ」
ふぅ、これで、この先なんとかなりそうだな。
「そうだ、どこかの街に連れて行ってくれないか? この世界についての情ほ……じゃなくて、記憶を取り戻すための手がかりが欲しいんだ」
「うん、分かった。ここから、一番近くだと、『メーレル』って街になるね。あそこは、広いし、人も多いから、君のこと知ってる人もいるかもしれないから、悪くないと思うけど……どうかな?」
いや、どうかなって聞かれても、何も知らないんだけど……。
「まぁ、とりあえず、そこで頼む」
「うん、分かった」
そう言って、クラウがスタスタ歩いたから、その隣を歩いた。
今気が付いたけど、ここの森、色々な動物がいるな。生態系が豊かだ。トカゲやリスだけでなく、鹿も見つけられた。メタリックピンクのトカゲを初めて見たが、今更そんなことに驚く気にはなれない。
しばらく歩くと、目の前に高い壁が見えた。おそらく、あの壁の中がメーレルなのだろう。……だが、なぜ街が壁に囲まれているのだろうか?
「あの壁の中がメーレルだよ」
「どうやって入ればいいんだ?」
「あそこにいる衛士に頼めば、入れてもらえるよ」
クラウが、指を指しながら言った。
かなり遠くだが、かろうじて、鎧を着込んだ衛士とやらの姿を確認できた。
そして、俺とクラウは、衛士の目の前を通り抜け、壁についた巨人でも通れそうなサイズの扉の前まで行くと、衛士が普通に開けてくれた。
――普通に入れたのだが、それで良かったのだろうか? まぁ、何も言われてないし、良かったのだろう。それなら、何のための衛士なのだろうか?
扉は、高さ約3メートル、幅約1メートル程度だった。一体なぜこんなに大きいのだろうか?
――多少の不安は残るが、それよりも、情報収集が先だ。不思議に思ったことは、また今度クラウに聞いてみるとしよう。
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