一般人に魔王をしろと言われても

百舌@

1-6.プログラム修正完了。再召喚を開始します。

「んっ…ここは……」

暗転した世界から意識が浮かぶ、身体は熱くない。

アプリには召喚失敗の文字。
同一個体を再召喚することが出来るようであとはボタン一つ押すだけで召喚が出来る。

眼前に迫っていたモンスターはというと吐ききった炎から生き残っているただの人間に驚いてる。
辺りは確かに焼き焦がさほとんどが岩だらけの地面が自分の周り以外はほとんど溶岩のように赤く溶けている。

逃げ場はない、
でもモンスターが驚いている間に…。

「――承認完了。
 これより、言ノ葉を遣いし者を召喚します。――」

携帯が輝き出し召喚陣が円を描く。
内から彼女が現れる。

流れるような艶やかな黒い髪、ピンと立つ蒼い狐耳に三本の尻尾。
スラリとした大人びた肢体、あの時見たものと同じ姿で彼女はそこに立っていた。

「また、めんどうな所で生まれてしまったのぅ…。」

ドロドロに溶けているはずの地面に裸足の足を乗せ、さもなにもない風にモンスターを無視してこちらを、2つの金色の瞳で見つめ口許が妖しく歪む。

「やぁ、主殿。下知はなんじゃ?」

自分をいないものと扱われてるのがわかったのか背後のモンスターが怒り轟き鳴く。
ただの鳴き声とはいえ最上級と言われるシーラたちと互角に戦えるようなモンスターの咆哮、
その声だけで聞くただの生き物なら潰す事の出来る音響兵器。

「ぐっ…っ~~ッ、なんだこれ、、」

「なんじゃ、五月蝿い。羽虫程度にしか吠えられぬ癖に邪魔をするか。」

咄嗟に耳を塞ぐがそんなもの意味がない、振動だけで脳が激しく揺さぶられ、身体の筋肉や骨が音を立てて軋む感覚がする。
こんなものほんの数秒だって耐えられる気がしない。

「…あれ……、なんともない?」

確かに五月蝿くはあるが思っていたほどではなかった。

ふと、見上げると耳を塞ぐことなく彼女は不遜に立ちこちらを変わらず妖しく、何故か楽しそうに見下ろしている。

だがモンスターの方はどうにも待ってくれないようで。
自慢の咆哮にも動じない残り香とはいえ自分のブレスの上に事もなさ気に立つ彼女に我慢の限界が来たらしい。

戸惑う俺などヤツには眼中になく、一喰みで俺ごと巻き込むことが出来るほどの巨大な口が大きく開かれる。

「本当に邪魔をする。主殿から命が下るまで生かしておくつもりだったんじゃが気が変わった。」

ただ、煩わしくなっただけだったんだろう。
楽しそうな表情から一変、お気に入りの玩具を取られたような子どものように不機嫌な表情に変わり背後に振り返る。

「とっとと居ぬが良い。」

スッと横に薙ぐ手がモンスターに向かう。
勢いのまま彼女を食い千切るために振り下ろされた顎はその手に当たり上半身ごと消滅した。

「ふむ、やはり生まれたばかりではこの程度か。」

あれだけの巨体がほぼ半分になり、地面に大きな音を立てて沈む。
彼女はそれが気にいらないらしく触れた自分の手を見て複雑そうな表情をしている。

「……っ、そうだ。いまのは、なにをしたんだ。」

さすがに、理解が追い着いていない。

「ん?……ふむ、そこから説明せねばならんか。」

向こうの方でも巨大な身体が沈む音がした。
あちらの戦闘も無事終わったんだろう。
二人とも俺が無事な事、誰か他にいることに気付いて、こちらに向かって来ている。

彼女に説明してもらうのはあの二人と合流してからになりそうだ……。

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