一般人に魔王をしろと言われても

百舌@

1-3.チュートリアル、開始

タイトル画面らしきものは相変わらず[PLAY]のボタンのみ……ではないようだ。
画面の左下に"ver2.01"と白く表示がされていた。

他は特に変わりがないようで、一応色々と弄ってみるものの反応はなし、やはり一番堂々と中央に陣取っているボタンを押すしか無いようで、押してみた。

「――システム起動。おはようございます。
 こちら空間管理術式オメガ。以下、必要な情報をご入力ください。――」

入力画面とともにボイスが流れてくる。感情のない機械的な女性の声が響く。
えっと、名前と年齢、性別……身長体重なんて覚えてないな、いくつだっけ。

「――ありがとうございます。マスターの登録が完了いたしました。
 現在、マスターが使える機能につきましてはこちらとなります。――」

[召喚] 現在初回特典有り
[支配]
[編成]
[???]
[???]

[引継]

……なんだろう。すごく普通のソシャゲ感があるな。

「なになに、なにしてるの?」

ポチポチ弄っていたらこっちに興味が湧いたらしい。
シーシェが傍まで寄ってきた。お姉さん当たってます、もっとください。

「これは、なにかの装置でしょうか。」

シーシェの後に続いてレーラもやってきたようだ。
やはりなのか、携帯に釘付けである。
こっちは悲しいかな、本人のためにも言わずもがなということで。

「俺の世界の通信やゲームが出来たりする端末だよ。今は理由あって使えないけど、」

「現在は起動しているように見えますが。」

そこである。本来ならだいたいのものはタイトル画面まで行けないか、
行けたとしても通信エラーが表示されるはずなのだが、
今開いているアプリはちゃんと動いて操作が出来る。

「それにこれは…、シュウさんこれをいったいどこで入手したのですか?」

レーラには見覚えがあるらしく、画面を覗き込んではまさか…。など唸って悩んでいる。

「来たときにはなんでか入ってた。レーラはこれがなにかわかるのか?」

「……そうですね。マスター、魔王が使っていた管理端末のものと同じものに見えます。」

「えっ?! 嘘、これが?」

眺めているだけだったシーシェがここで反応してきた。
一緒に仕えていたのに知らなかったのか。

「シーシェはこの言語には馴染みはありませんでしたね。 昔はこの言語を使用していたんですよ、懐かしいですね。」

なにやら懐かしそうに画面を眺めている。
そういえばレーラは魔王の最初期から仕えているとか言っていたな。
とは言え、なぜか操作が出来ずレーラが横から軽く触れてみるもののうんともすんとも動く様子がない。

ん…?

「……あれちょっと待って、レーラ、日本語理解出来るのか?」

「ニホンゴ、というのですか? この文字でしたら昔魔王が使っておられたので多少は。」

小首を傾げてさもわかって当たり前といった態度で返してくる。
なら、さっきの水晶にあった文字はなんでわざわざこっちの言葉に変換したのか、
魔王に抗議したいところだなぁ。

「じゃあ、このアプリの操作とか説明してもらっても?」

「そうですね…。現在開放されている編成というのは私の領分ではなかったので申し訳ありませんがこちらの説明の方は。順番もあります、召喚の方から先にご説明をいたしますね。ですので召喚への遷移をお願いします。」

言われたとおりにまず召喚のボタンを押して見る……。

ガチャ形式かと思ったけどさすがにそこまで似せているわけではないようで、
種族順にいくつか名前が並んでいるのがわかる。

種族は、造魔や竜種、亜人など大まかに分けられていて、最後の方には、レジェンド…?

「その画面から分かる通り分類別となっております。
ゴブリン、オーク、ウェアウルフなどの亜人。
コボルト、トード、ホーネットなどの魔獣
ゴーレム、スライム、ローパーなどの造魔。
スケルトン、ウィスプ、グールなどの不死。
ヴァンパイア、デーモンなどの悪魔。
ピクシー、四精霊、妖怪などの精霊。
あとはドラゴンの系譜による竜種。
――、以上となります。」

確かに、中身は説明通りによく見るRPGに出てくるモンスターの名前が書いてある。
ついでにだが、初回特典だからか、名前の横になにやら必要な資材なんかの記載があるものの、現在は全ての名前は明るく表示されており、適当にタップしてみると詳細が記載されている。

そして気になるのは説明のなかったレジェンドの方だ。
中を確認して見るものの抽象的な名前しかないな。

なに? 穿つ者とか、海を征服する者とか。

「……なぁ、このレジェンドってなんだ?」

「はて? 見せてもらっても。」

レーラの方も知らないようで見せていくがやはり首を傾げてばかりだ。
ちなみにずっと黙ってるシーシェだが話に付いていけないらしく直らないかと水晶を弄っている。

「魔物と大別する種族は私が説明した7種族、あとは人間やエルフ、ドワーフなどの人種はありますが、それとも違うようですね。 なんでしょう。」

「気になるし召喚してみた方が早くないか。」

「それは早計ですね、これが魔王の使っていたものと同じであるなら最初に召喚するモンスターは特異体となります。慎重に選んだほうが良いでしょう、」

そういう情報も早く欲しかった。
適当におもしろそうなモンスターでも出してみる所だったじゃないか。

「……では、次の支配に移りましょうか。」

変な間があったがわざとだろうか。
口調は丁寧ではあるがレーラは思っていたよりも優しくはないのかもしれない。
さっきも普通に見捨てるつもりだったらしいし。

「こちらについては特に説明はありません。支配されていない周囲一帯に対して一時的に自身のダンジョンに変化させることが可能です。他に上げるとするなら、
例えば上位個体と契約を交わしている場合、支配を選択することで下位個体の統率なども取ることが可能ということ。
モンスターを召喚する、魔力を馴染ませるなどをし支配度を上昇させる事により本格的に自身のダンジョンへ進化させることも可能です。」

なるほど。水晶でモンスターたちの制御が利かなくなるのはこれが機能しなくなるからか。

「じゃあ、俺がこのダンジョンを支配して元に戻すことは可能なのか?」

「それは不可能ですね。出来るとすれば今いるこの空間を支配し死なないように罠を設置する程度です。」

結局のところ、俺自身が危険であることには関わりがないらしい。

「……そうですね。生き残りたいのであればまずこの空間の支配をすれば良いと思われます。」

レーラの勧めもあるし、支配を押して見る。

「――支配領域を把握。現在設定されている主の間、弱体付与、隠蔽を解除し新規に作成します。…2……1…完了しました。編成に遷移してください。――」

「よし、これで――

ドオオオオォォォォンッ!!!!!

突然爆発音がした。
その後、大きく地面が揺れ視界が反転する。

なにが起こっているのかわからない。
頭を振るが地震のような揺れが収まる様子もない。

少ししてようやく身体の感覚が戻ってきた。
腕も足も無事だ、身体を起こして周りを見回す。

レーラもシーシェも自分から離れてなにかしている戦闘か?

眩い光や黒い槍が放たれナニカを倒そうとしている…?

なんだろうか、こちらに気付いてはいないようだが。

あぁ、それと…一匹だけではないようでもう一匹はこちらを捉え向かってきてしまった…。

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