転生したら美少女勇者になっていた?!
第四十二話-忙しい一日⑧
ギルドというシステムは、先ほども述べた通り銀行のような役割も受け持っている。
なので、皆が何気なく張り付けている刻印は――元の世界的に解釈すると――全財産を背負う”通帳”と同等な価値を持っているわけだ。
ただ、それらはちょっとでも注意してれば絶対に失くさないようなものに写し込むことが出来る。
だから日頃身に着けている親身一体なるものに刻印しておけば、その辺りへの配慮はしなくて大丈夫なのだ。
裏を返せば、落としたら死ぬ。
持ち主を選ばず、ギルドが発行を認めてさえいれば誰にでも扱える、本当にすっぽんぽんの”通帳”だ。
んじゃそれ本人認証の意味とは一体・・・。
「言われてみればその通りですね」
ぶっちゃけたところをエラメリアに相談してみると、本人は「今気が付いた」みたいな顔をしていた。
いやちょっと?
ずっと使ってるものなんだから、そのへんもうちょっと考えようよ。
「せめて顔認証ぐらいのセキュリティを付けるとかしてさ、誰でも同じ刻印を使えるってのは避けた方が安心だとは思うんだけど・・・」
俺一人がそう唱えた所で別段何が変わるでもないが、とりあえず思った事を口にしてみた。
が、エラメリアの返答はあまり芳しく無かった。
「そうですね、悪用されたりするリスクはあります。でもそれだと、身内が亡くなった場合などに財産の回収とか刻印の取り消しが面倒だったりするんです。ほら、刻印が残ったままの恩師の剣とか使いにくいですから」
うむむ、そういうものか。
確かに死んだ人の関係者にしてみても、過剰な保護は面倒なだけなのかもしれない。
実際、落とさなければ問題が無い訳だしな。
理には適っているように聞こえる。
にしても、結構ドライな事を言いますねエラメリアさん・・・。
仮にも形見の剣を使いにくいなどとは。
けどやっぱり、自分の命を扱う冒険者たる職業においては、人の死に関してはその程度の認識しかなかったりするのだろうか。
毎日のようにそう言った話題が飛び交う業界だろうし、いちいち心を痛めていると身が持たないのかもしれない。
だとするとちょっぴり過酷な世界ですな。
見ず知らずの他人の訃報なんかでも動揺するような俺なんかが居ても平気なんだろうか、心配になってくる。
「けどまあ、大体みなさんは受け入れてますよ。身に危険が迫るような出来事にも興奮するような、変人ばかりですから」
そうでないと冒険者なんてやってられません、と言わんばかりにエラメリアは儚げに微笑んだ。
その表情の意味するところはなんとなく掴み難かったが、まあそんなもんなんだろうと今は受け入れることにした。
正直本当のことなんて、実際ギルドに入ってみなきゃわかんないわけだし。
目下、とにかくいち早くギルドに所属したいという気持ちが強かった。
そう思って自分の考えに整理をつけていると、ようやく完全に回復したらしいゾルフが恐る恐るといった様子で立ち上がっていた。
同時にエラメリアも腰を上げ、警戒の構えを取る。
両者に殺伐とした雰囲気が立ちこめていた。
ひええ、逃げるのも面倒なんだから、騒ぎは勘弁してくれよ。
じりじりと間隔を広げていく中、最初に折れたのはゾルフの方だった。
だらりと腕を下げて緊張感を消し、諦めたように首を振る。
「はぁ、このままじゃ埒が明かねえし、とりあえず休戦ってとこだな」
「そう言ってこちらを惑わせる作戦ですか?」
「違ぇよ、それよか先にすることあんだろ」
そう言ってゾルフは頭上を指さす。
釣られて俺も顔を上げれば、既に太陽はてっぺんまで登ろうとしていた。
俺たちが宿を出発した時間から計算しても、思いのほか時間が経っていたようだ。
「約束の時間まで、そう時間は残っていないぞ」
「確かに結構な時間を浪費してしまいました」
エラメリアはゾルフの方へチラリと恨みの籠った眼差しを向ける。
何の迷いもなくすべてを彼一人の責任だと思っているようだった。
「いや明らかに俺じゃないでしょ。そもそもエラた――」
「お昼ももうすぐですから、それまでに武器と服を購入しておきましょう。せっかく纏まったお金もあることですし」
「話を聞いてくれ。てか、だからそれ俺の・・・」
ゾルフの薄れゆく抗議の声は、どんどん歩いてゆくエラメリアの気迫に圧倒されて、全く耳に届いていないようだった。
休戦宣言をしたからか、それとも後ろから襲い掛かっても返り討ちに合うだけだと理解したためか。
早くも彼はお金を取り返チャンスを手放したようだった。
結構な大金に見えたが、それでいいのかゾルフよ。
・・・てかエラ、よくよく考えなくても、それって普通に犯罪だよね。
こちらには法律ってものが無いのか?
そういえばエラメリアが最初に行っていた、「は? 誰があなたの分も支払うと?」って言葉は、こう言う事だったのね。
とんでもない伏線だなあ(棒)
なので、皆が何気なく張り付けている刻印は――元の世界的に解釈すると――全財産を背負う”通帳”と同等な価値を持っているわけだ。
ただ、それらはちょっとでも注意してれば絶対に失くさないようなものに写し込むことが出来る。
だから日頃身に着けている親身一体なるものに刻印しておけば、その辺りへの配慮はしなくて大丈夫なのだ。
裏を返せば、落としたら死ぬ。
持ち主を選ばず、ギルドが発行を認めてさえいれば誰にでも扱える、本当にすっぽんぽんの”通帳”だ。
んじゃそれ本人認証の意味とは一体・・・。
「言われてみればその通りですね」
ぶっちゃけたところをエラメリアに相談してみると、本人は「今気が付いた」みたいな顔をしていた。
いやちょっと?
ずっと使ってるものなんだから、そのへんもうちょっと考えようよ。
「せめて顔認証ぐらいのセキュリティを付けるとかしてさ、誰でも同じ刻印を使えるってのは避けた方が安心だとは思うんだけど・・・」
俺一人がそう唱えた所で別段何が変わるでもないが、とりあえず思った事を口にしてみた。
が、エラメリアの返答はあまり芳しく無かった。
「そうですね、悪用されたりするリスクはあります。でもそれだと、身内が亡くなった場合などに財産の回収とか刻印の取り消しが面倒だったりするんです。ほら、刻印が残ったままの恩師の剣とか使いにくいですから」
うむむ、そういうものか。
確かに死んだ人の関係者にしてみても、過剰な保護は面倒なだけなのかもしれない。
実際、落とさなければ問題が無い訳だしな。
理には適っているように聞こえる。
にしても、結構ドライな事を言いますねエラメリアさん・・・。
仮にも形見の剣を使いにくいなどとは。
けどやっぱり、自分の命を扱う冒険者たる職業においては、人の死に関してはその程度の認識しかなかったりするのだろうか。
毎日のようにそう言った話題が飛び交う業界だろうし、いちいち心を痛めていると身が持たないのかもしれない。
だとするとちょっぴり過酷な世界ですな。
見ず知らずの他人の訃報なんかでも動揺するような俺なんかが居ても平気なんだろうか、心配になってくる。
「けどまあ、大体みなさんは受け入れてますよ。身に危険が迫るような出来事にも興奮するような、変人ばかりですから」
そうでないと冒険者なんてやってられません、と言わんばかりにエラメリアは儚げに微笑んだ。
その表情の意味するところはなんとなく掴み難かったが、まあそんなもんなんだろうと今は受け入れることにした。
正直本当のことなんて、実際ギルドに入ってみなきゃわかんないわけだし。
目下、とにかくいち早くギルドに所属したいという気持ちが強かった。
そう思って自分の考えに整理をつけていると、ようやく完全に回復したらしいゾルフが恐る恐るといった様子で立ち上がっていた。
同時にエラメリアも腰を上げ、警戒の構えを取る。
両者に殺伐とした雰囲気が立ちこめていた。
ひええ、逃げるのも面倒なんだから、騒ぎは勘弁してくれよ。
じりじりと間隔を広げていく中、最初に折れたのはゾルフの方だった。
だらりと腕を下げて緊張感を消し、諦めたように首を振る。
「はぁ、このままじゃ埒が明かねえし、とりあえず休戦ってとこだな」
「そう言ってこちらを惑わせる作戦ですか?」
「違ぇよ、それよか先にすることあんだろ」
そう言ってゾルフは頭上を指さす。
釣られて俺も顔を上げれば、既に太陽はてっぺんまで登ろうとしていた。
俺たちが宿を出発した時間から計算しても、思いのほか時間が経っていたようだ。
「約束の時間まで、そう時間は残っていないぞ」
「確かに結構な時間を浪費してしまいました」
エラメリアはゾルフの方へチラリと恨みの籠った眼差しを向ける。
何の迷いもなくすべてを彼一人の責任だと思っているようだった。
「いや明らかに俺じゃないでしょ。そもそもエラた――」
「お昼ももうすぐですから、それまでに武器と服を購入しておきましょう。せっかく纏まったお金もあることですし」
「話を聞いてくれ。てか、だからそれ俺の・・・」
ゾルフの薄れゆく抗議の声は、どんどん歩いてゆくエラメリアの気迫に圧倒されて、全く耳に届いていないようだった。
休戦宣言をしたからか、それとも後ろから襲い掛かっても返り討ちに合うだけだと理解したためか。
早くも彼はお金を取り返チャンスを手放したようだった。
結構な大金に見えたが、それでいいのかゾルフよ。
・・・てかエラ、よくよく考えなくても、それって普通に犯罪だよね。
こちらには法律ってものが無いのか?
そういえばエラメリアが最初に行っていた、「は? 誰があなたの分も支払うと?」って言葉は、こう言う事だったのね。
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