転生したら美少女勇者になっていた?!

ノベルバユーザー21439

第三十一話-ゆうげの感動ストーリー

 さて、話は戻って今度はエラメリアが挨拶がてら俺たちを紹介する。
 ちなみにバッフムルドさんは調理しながら会話をしている。

「それでは改めて・・・こちら、この間から一緒に旅をしているステフです」
「ども、よろしくです」
「ほう。若いんだな。見たところうちの娘とそう変わらんようだが・・・」
「・・・たぶん俺もペツァニカとそんなに変わらないと思います」

 一応本当は19歳なんだけどね・・・。
 ここは誤魔化すが吉だ。
 精神衛生上。

 バッフムルドさんはなるほどと頷く。

「子供なのに偉いな・・・。シュリエンを思い出す」
「あの方も昔はすごくオテンバでしたからね~」
「まったくだ」

 エラメリアが昔を懐かしむような口調で言い、二人してくすくす笑う。
 新しい名前について行けず、どうして笑っているのかよくわからない。

「あのー、シュリエンさんというのは」
「ああ、私の嫁だ。今は騎士団長をやっている」
「名前からして強そう・・・」
「ウェンポートどころか、周辺の街一帯でトップの強さだった。いつもふらっと消えては猛者どもに決闘を申し込みに行っていたな」
「凄すぎる」

 それしか出てこなかった。
 どうして、と言っちゃあ悪いけど、ほんとにどうやってバッフムルドさんはそんな凄いお嫁さんと知り合ったんだろう。
 実はこの人もこう見えてかなりの強者だったりするのだろうか。

 俺の心中を察したらしいバッフムルドさんが、端的に教えてくれる。

「シュリエンは私の幼馴染だったんだ。家が隣でな、何度も一緒に狩りへ行ったものだ」
「なるほど。それで結婚なさったんですね」
「いや、それは違う」
「え」
「あいつは本当は違う男と結婚する予定だった。だが、とある事件がきっかけで私と結ばれることになったのだ。・・・聞きたいか?」

 チラリとこちらへ目を向けるバッフムルドさん。
 そんな話方されたら聞きたくなるに決まってるだろ・・・!

「超気になります」
「良いだろう、少し長くなるぞ――」


*****


 二十分後。

「――このようにして私たちは結ばれ、その後娘が産まれた」
「・・・・・・」

 俺は無言で拍手を送っていた。
 ぱねえ、盛大すぎる物語だった。
 まさかあんな所で婚約者が死んじゃうなんて・・・。
 あとドラゴン・・・かわいそうに。

 バッフムルドさんの話し方が上手で、思いっきり引き込まれてしまった。
 思わず一冊本が書けちゃうんじゃないのってレベル。

 感動的な大ストーリーに思いを馳せていると、丁度出来上がったらしい料理をカウンターに乗せつつ。
 最後にバッフムルドさんが、こう締めくくった。

「結局、人は何者でもない。時を制したものがその後の人生を勝ち取る権利を得られるのだ」
「よくわかりました・・・!」
「君もそういう人生を送りなさい」
「はい!」

 彼の言葉が心に重く響く。
 俺は未来を見据え、いかなる時も諦めない心を持とうと固く誓った!

「さて、では冷めないうちに食べてくれ。私が腕によりをかけて作った料理だ」
「いただきます!」

 伝説の男の晩飯だ。
 おいしくいただこう。
 俺は皿を受け取り自分の前まで運ぶ。

 ジュウジュウとあぶらを散らしながら大きな器に鎮座するそれは、やはり鶏肉の様な形をした食べ物だった。
 ひとつ違うとすれば、ぷりぷりとした脂が、現世で言うところのニワトリの様なヘルシーさが見受けられなかったところか。
 特大ボリュームだ。
 腹が空きまくっている今なら丁度いい量だろう。

 フォークを手に取り、骨を手で押さえながら肉をはぎ取る。
 そして、恐る恐るゆっくりと口へ運んだ。

「!」
「・・・どうですか、ここのお肉は。とてもおいしいでしょう?」

 横からエラメリアが尋ねてくる。
 俺は何度も全力で頷いた。

「うんまい! 凄い、こんなの初めてだ!!」
「そうでしょう、私もこれが店で一番好きな料理なんです」

 俺の反応に安堵し、エラメリアも勢いよく肉にかぶりつく。
 おお、大胆・・・!

 恍惚な表情ではふはふと美味そうに頬張る姿は、決して上品な食べ方とは言えないけどとても綺麗だった。
 本当に好きなんだな、コケチキン。

 なかなか見られない表情に一瞬ドキリとし、慌てて手元の肉に齧りつく。
 ・・・うん、超うめえ。

 どうやったらこんなに美味しく作れるんだろうか。
 やはり戦場ばかずを踏んだ大人は違うな。
 肉に人生が詰まっている。

 思わず思ったことを口にすると、バッフムルドさんはニヤリと口角を吊り上げた。

「料理はソイツの生き様を物語る。君も将来、うまいメシを作れるようになりなさい」
「はい!!」

 学びの多い晩飯だった。
 目の前の肉に負けないぐらい胸が熱く燃えている。
 調味料のスパイシーな香りが、より一層気分を高めてくれた。


 あっという間に皿は空になる。
 唇に付いたソースまできっちり舐めとると、俺たち三人は声をそろえて「ご馳走様でした」と伝える。

「すっごく美味かったです。ありがとうございました」
「私も喜んでもらえたみたいで何よりだよ」

 素直な気持ちを伝えると、バッフムルドさんも優しく微笑んで返してくれる。
 改めて見ると、この人は顔もダンディで渋い顔をしていた。
 うっすら浮かぶ頬骨が逞しい。
 羨ましいぐらいカッコいい人だった。

 エラメリアはバッフムルドさんともう一度握手を交わすと、笑顔で口を開く。

「ええ、ほんとに。バッフムルドのいつもの作り話も、今までで一番の出来だったので素晴らしかったです」
「はは、ありがとう。まだまだストックはある。楽しみにしていてくれ」
「ん? エラちょっと待って。今なんて?」
「ええ、それでは」

 一礼すると、エラメリアはペツァニカに付き添われて席を立った。
 そのまま二人で階段を上っていく。
 ゾルフもそれに続いた。

 取り残された俺一人だ。
 先を行くエラメリアとバッフムルドさんの顔を立ち止まったまま交互に見比べていると、エラメリアが俺を呼ぶ声がした。

「ステフ、行きますよ」
「でも・・・」

 真偽のほどを確かめぬ限りはまったく落ち着いていられないんですが・・・と思ったのも束の間、今度はペツァニカの声が飛んでくる。

「早くしないとお風呂に入れなくなるよ~!」

 それはマズい。
 体中ベタベタで、今夜こそ風呂には入らなければと思っていたのだ。

 わだかまりは滅茶苦茶残ってはいるものの、とりあえずバッフムルドさんに礼を述べてからみんなの後を追った。
 おい、さっきの話はちゃんとした実話だよな?



 階段を上った所で追いつき、改めてエラメリアに先ほどの話に付いて尋ねる。

「なあ、バッフムルドさんのは・・・」
「あれね、嘘だよ」

 訊き終わる前にペツァニカが元気よく答えてくれる。

「う、嘘ぉ?」
「うん、嘘。さっきも言ったでしょ? この街の人はこんな冗談が大好きなの」
「でも嘘にしては現実味が・・・」
「お父さん、昔は作家を目指してたんだ。けどそれじゃあ食っていけないって言って、今の仕事をしてるの」
「マジか・・・」
「うん、大マジ」

 俺はガクリと肩を落とし、スゴスゴと引き下がる。

 さっきまでの感動はどうしたらいいんですか?
 あの料理に込められていた人生とはそんな薄っぺらいもの(失礼)だったんですか?!

 そんな俺に、「あ、でも」とペツァニカは続ける。

「お母さんが騎士団長なのは本当だよ」
「そすか・・・」
「むう、あんまり乗ってくれないね」
「いやあの物語が逸話だと聞いて普通に喜べる内容何ぞあるわけが・・・」
「ちなみにエラさんのお姉さんだよ」
「マジで?! 詳しく!!」

 なにそれ気になる! 教えて教えて!

 急に活気が戻った俺に苦笑いしつつ、ペツァニカはまあまあと押し留める。

「ごめん、それもやっぱり嘘」
「また嘘かよぉ・・・」

 再びげんなりする俺。
 それを見てペツァニカがけらけら笑う。

「ステフってやっぱりかわいいね! 面白い!」

 しばくぞガキンチョ・・・。
 と思ったのも束の間、突然ペツァニカが俺に抱き着いてきた。

「ちょ、おい」
「決めた! 今日はステフとお風呂に入る!」
「待て待て待て。どうしてそうなった」
「そうですよ、ステフとお風呂に入るのは私です」
「えー、いいじゃんわたしも!」
「エラは黙っててくれ! ペツァニカも、今の俺は汚いから離れて・・・」
「お風呂に入るんだから変わらなくない?」
「そーいうことじゃなくて!」

 うりうりーっと顔を摺り寄せてくるペツァニカ。
 身長が近いから直で頬が当たって・・・それに食べ物と甘い女の子の香りが混じって。
 起伏の薄い体でも、少女特有の柔らかさが伝わってくる。
 俺にヘンな性癖があったら非常にヤバかった。
 よかった、ノーマルで。

「あーもう、分かったから、また今度な! 今日はお願いだから一人で入らせてくれ、疲れてるんだ・・・」
「えー仕方がないなぁ。約束だよ」

 わざとらしく拗ねたような顔で離れる。
 それでも約束はこぎつけたと言わんばかりに口元がニヤついていて、正直怖いです・・・。

 あー、エラメリアにも一応言っておかなきゃ。

「エラも、今日は別々にしよう」
「そうですか・・・」

 またいつものようにシュンと俯く。
 それを見て、うっかり「今度一緒に入ろう」と言ってしまいそうになるのを必死で押し留めた。
 流石にそれだけはマズい。

 だって裸だし。ナマだし。
 ・・・それに、エラは美しすぎる。目の毒だ。

 風呂は各々で入るべきだと思いました。



 部屋の前に着いた。
 男女は別々の浴場だということで、ゾルフはさっさと地下の風呂場へ行ってしまった。
 手ぶらだったけど、大丈夫なのか?
 着替えは?

「では誰から入りましょうか」

 エラメリアが質問する。

「俺は入れるならいつでも」
「わたしはそもそも母屋が違うしね。家で入るから、ここは使わないよ」

 ペツァニカお前・・・。

 面倒なので口には出さなかったが、心中で文句をつぶやく俺だった。

「それでは、折角ですからステフからどうぞ」
「わかった。ありがとう」
「ペツァニカ、ステフは初めてなので連れて行ってあげてください」
「りょうかーい。じゃあステフ、付いてきて」

 そう言ってペツァニカは来た道を戻ろうとする。
 俺は慌てて止めた。

「待って、まだ何の準備もしてない」
「準備? 何の?」
「何のって、着替えとかタオルとか・・・あ」

 そこではたと気が付く。
 どうしよう。
 俺変えの服が無いぞ・・・。

 恐る恐るそう口にする。
 と、ペツァニカは「なんだそんなことか」と俺の手を引いて歩き出した。

「大丈夫、全部揃ってるから」
「揃ってるって、何が?」
「洗濯機とタオルだよ。着いたら全部教えてあげるから、ステフは心配せず付いてきて」
「? ?」
「いってらっしゃーい」

 疑問符を浮かべる俺を無視してペツァニカはぐいぐい進んでいく。
 エラメリアに見送られて階下へと向かった。

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