月物語

石原レノ

颯の章〜違和感〜

「なぁ輝夜、、、」
「ん?なぁに?」
俺が突然問いかけて輝夜が不思議そうな顔をしてこちらを振り向く。相変わらず輝夜には月夜が良く似合うと思った。
「、、、いや、何でもないや」
少し照れくさくなり適当に誤魔化すと輝夜は気になったようで急かしてきた。
「えー!何それ!気になるじゃん教えてよ!」
「何でもないって!」
こんな日常がいつまでも続いたらどれだけ幸せだろうか。この輝夜の笑みがいつまでも見られたらどれだけ幸せだろうか。思えば思うほど気持ちは強くなり変わらないものになる。
「、、、大切だと思ったんだ」
「え?」
輝夜はすっとぼけた顔をする。その反応を見て再度言う勇気など俺にはなかった。
「やっぱり何でもない!」
俺がそう言うと輝夜は声を出して笑う。やっぱり聞こえていたのだと思うと気恥ずかしさは極限に達した。
「私も、、、そうだよ?」
「え?」
今度は俺がすっとぼけた顔をして輝夜の方を見る。街灯に照らされた輝夜の顔はなんとなく赤く見えた。
三日月の月夜の日、輝夜はゆっくりと恥ずかしそうに口を開いた。
「あなたに出会えて私は幸せだったよ。これからもずっと、ずーっと幸せでいようね。私は、、、、いつもあなたの側にいるから。
悲しい時も、、、嬉しい時も、、、どんなことが起きたって、、、」
その言葉を聞いた途端俺はドキッとした。一途に思っている輝夜からそんなロマンチックな言葉を言われてドキッとしたのもあるが、なにかこの言葉には聞き覚えがあるような気がした。
「、、、、帝くん?」
「ん?あぁ悪い。、、、、ありがとう。幸せになろうな」
「、、、、うん!」
「ったくこんな所でイチャイチャしてんじゃねーよ」
誰もいないと思い込んでいたのだがどうやら誰かがいたようだ。咄嗟に振り返ると有希太が呆れた顔で立っていた。
「あ、有希太か、、、脅かすなよ」
「脅かすも何もあるか。こんな所でイチャイチャされるとこっちが不快なんだよ!」
「ご、ごめんね伊部君!誰もいないと思ってたからつい、、、」
「いいんだよぉ〜仕方ないんだしなぁ♪」
「ずいぶんと扱いが違うものだな」
俺がそう言うと当たり前と言いたげな顔をする有希太。何となくイラついてしまった。
「まぁ何だ、今日は飲んでくか?同じ大学入ったのに全く話してないだろ?」
俺がそう提案すると有希太は顎に指を添えて考えるが、すぐに断った。
「すまん。俺今からレポート書き上げなきゃいけないんだよな。また今度誘ってくれ」
そう言うとそそくさとその場を立ち去った。そんな有希太を俺と輝夜は呆然と見つめたままだった。
「、、、今度どこか遠くに行こう」
「、、、うん」
俺なりにどさくさに紛れて言ったつもりなのだが、輝夜は動揺するわけでもなく淡々と答えた。

「うーわー!凄いよ!ねぇ帝君!」
俺達が訪れた所は沖縄県。夏場の海は人が多く暑かった。俺と輝夜は水着に着替えこれから海に入ろうかというところである。
「そう、、、だな、、」
俺も男である。自慢の彼女の水着に見とれることだってある。そんな俺に気がついたのか、輝夜は恥ずかしそうに頬をかいていた。
「似合わないかな、、、」
「いや、、ごめん、、、その、、、似合ってる」
段々と声が小さくなっていったが、輝夜は俺の言葉が聞こえたようで照れながらも笑っていた。1泊2日の旅行は色々とやろうと計画していた事が多い。海に入るのも、ものの1時間で終わり、次から次へと俺達は別の場所へと足を運んだ。船に乗ったり、水族館へ行ったり、気がつけば辺りはあっという間に夜の世界である。

「コメディー」の人気作品

コメント

コメントを書く