影遊び
ホントの影遊び
『いやぁ! 私は、私はずっと、遊んでいたいのぉぉぉぉぉ! 』
 苦しむ様に光から逃れようとするカケコ。
 照らす光に吐き出される様に体からとても不快で大きな闇が出てきた。
 僕には分かった。アレがカケコという純粋な子供の霊の魂を蝕んでいた邪悪なモノだと。
 闇は蠢きながらも姿を整えていく。
 それは、1人の軍人の姿に変わっていく。
鉄のヘルメット、胸元には星の勲章が4つの教科書に出てくるような兵士に。
 『ガァァァ!! ワが帝国軍のヘイシをよくもォォォォ!!この妾ノチカラを使って手に入れたワガ兵士ガァァァ!! 』
 その姿に僕はひと末の怒りを覚えた。
 同じようにマコトもだろう。その光が鋭さを増しているのがわかった。
 『あなたがカケコにこんな真似をさせたんですか! 』
 その問いに影そのもののように真っ黒な兵隊はニタリと笑い、闇から真っ黒な銃や軍刀がそのままで現れるとそれを手にする。
 『アァ、ワが大日本帝国軍ハ新たな部隊と兵士をモッテ、主敵米国を血ノ海に変えるのダ』
 兵士の持っている刀の鞘がひとりでに抜かれ、銃にも自動的に弾が込められる。
 『我が《帝国怨霊部隊》が、この日本ヲ勝利に導くノダ。鬼畜米英ミナ殲滅セン。勝利ハワガ日本にあり!!』
 兵士はそう言って軍刀をマコトに、銃を僕たちに向ける。
真っ黒な刃がマコトを縦に斬る。
黒い弾丸が僕とみゆきに無慈悲に放たれる。
…………そのようなことはなかった。
原因は軍人の体にあった。
『ナ!? 我が身体がナゼ消えようとしている!! オカシイではないか、我はニホンを勝たせなければならナラナイというのに!』
その言葉通り、無理して闇を広げようとした。
しかし、闇は一度は広がってもすぐに元の大きさに戻っていき。反対に軍人の身体が虫食いにあうように所々無くなっていった。
『……あなたが、あなたが私を操っていたの?』
軍人はその幼い声に恐怖したようで、2歩3歩と、後ずさるようにカケコから離れる。
しかし、そんな軍人にカケコは文句だけ告げた。
『影さん、影さん、あなたの遊び相手はこの兵隊さん。さぁ、さぁ、遊んでおやり』
それだけだった。
僕の目には何も起きていないようにおもった。でも違う、それは部屋の暗がりが蠢いているからだ。蠢くそれは先ほどの兵隊の出現時と同じように、徐々に形を成していく。けれど、これは違った。
まず人ではなかった。
ドクロの顔。
黒いフードを被っており、袖口から見えている骨の指は両手で大きな鎌を持っていた。
影から生成されたドクロは、先程までの『影遊び』で呼び出せる本当の『影』だろう。
ゾッとした。
自分が矮小なものだとも思えた。
僕にも、寝ながらうなされているみゆきもおそらくは抱いているのだろう。
恐怖を。
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