ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その6・I am a hero like a heel.

[クロノ]
玄関の門を開ける。
表ではハゼット達ラフの面々たその辺に倒れている聖騎士隊の面々。
そして柵の向こうでは町民がハゼット達に対して声をあげていた。
町民は自分達に気づき、こちらも標的にしてくる。
「俺たちと仲良くするふりをして騙していたのか‼︎」
(はぁ〜…めんど…)
腕を後ろで塞がれたシーラを前に出し、尻を蹴る。
クロノ「おら、さっさと行け。」
1度倒れたシーラは立ち上がり、ハゼットの元へと向かう。
ハゼット達はそれを心配してシーラの元へと向かう。
町民は今の光景を見て一気に静かになった。
仲間であるはずの人を足蹴にするのだから困惑するだろう。
右手から魔力を放出させ、スピーカーを作る。
クロノ「あーあー。聞こえる?ちゃんと俺の声聞こえてるよねー‼︎そんじゃまー結論から先に言うぞー‼︎全ての元凶は俺だったのだー‼︎」
辺りはさらに静まり返る。
クロノ「ラフの悪口流したのも!第1遊撃隊の連中殺すよう指示したのも!聖騎士隊とラフで殺し合うよう仕向けたのも!全部俺がやったんだよ‼︎」
町民がざわつき始める。
クロノ「いやー、思ったより上手くいきすぎてかなり楽しかったわ‼︎みんな面白いように俺の言葉信じてくんだもん‼︎俺が異世界から来たなんつーのもウソ‼︎そんな都合のいい話があるわけないじゃん‼︎よく考えろよ‼︎2000年近くも異世界から来たなんて話が無かったのに2年前にそういうのがあって⁉︎そっから⁉︎急に2年後にいきなり異世界から人が来るとかおかしいと思わなかったの⁉︎馬鹿なのあんたら⁉︎無能⁉︎」
ざわつきが大きくなり始める。
クロノ「町の連中もさー。ちょっとそれっぽいこと言われただけでラフの連中に悪口言うとか馬鹿なの?本来俺に向けるべき言葉を?容赦なく?何の罪もないハゼット達に浴びせて⁉︎恥ずかしいと思わねぇの⁉︎このクソ以下のゴミ共が‼︎ハゼットさんはどうだったー?自分はなーんも悪いことしてないのにないことないこと言いふらされて町の人間に色々言われながら町民にとっての正義だった聖騎士隊と闘わされるのはさー?楽しかった?んなわけないよねー‼︎そうなってて欲しかったんだけどさー‼︎どうだった⁉︎」
フレアが立ち上がり、こちらに走ろうとしてくるが、右腕から魔力を発射させ、フレアの足元に撃つ。
クロノ「はーい、座っててねー。まだ俺のお話終わってないからねー。」
フレア「俺らを騙してたのかよ⁉︎」
クロノ「あ、それが言いたかったの?そうだよ?あんたらのその信用してたやつに裏切られた顔が見たかったから、心にもないことをたーくさん言ったし?時には自分の身を犠牲にしたり?もう大変だったんだから!てめーみてぇな無能のクソザコには分かんなかったろ‼︎えぇ⁉︎こないだのレギオンはさすがに予想外だったけど、まぁ、嬉しい誤算ってやつ?いやー、ここまで綺麗に俺のこと信用しててくれて嬉しかったなー‼︎町長さんも上手いこと殺せたし、これから先アリアンテはしばらく面倒臭いことになるんじゃなくてー⁉︎」
町民からの声は大きくなる。
その中には外道だとか、どうしてそんなことをとか、自分に向けて非難の声が混じっている。
クロノ「そう‼︎その反応‼︎それが見たかったんだよ‼︎みんなのその反応が‼︎いやー、このままあんたらシカトしてこの町出てっても良かったんだけどねー。やっぱここでネタばらしして正解だったわ‼︎あんたら今の自分の顔鏡かなんかで見てみなよ‼︎すんげぇ面白い顔してるからさ‼︎これが見たいからこういうことしてんだよ‼︎あーでも、黙ったままの方がもっと良い顔入れたかなー。ま、それもまた風流ってことでいいやんね‼︎さて‼︎俺はもう満足したし、この町出てってどっかその辺行ってくるからさ‼︎探さないでね☆っと。」
スピーカーを消し、ハゼットから離れて柵に向かう。
ハゼット「クロノ…。」
クロノ「なに、あんた瞬間移動使えたの?」
後ろを振り向く。
かなり離れていたはずのハゼットが目の前にいるじゃないか。
ハゼット「シーラから少し話は聞いた。今は俺だけだがな。」
クロノ「それでOK。そうするように言ったからね。まさかあんたがここに来るとは思わなかったけど。」
ハゼット「これでいいのか…俺たちを助けるために…」
ハゼットを助けるために自分が罪をかぶる。
幸運にも、俺は都合のいい存在だった。
クロノ「いいも何も…俺が悪者にならないとあんたらが悪者のままだしそれに、俺が誰だか忘れたのか?ヒールヒーローだぜ?これが本来の俺の役割だ。それに…」
右腕から剣を作りハゼットに向ける。
クロノ「ここまでやっちゃったからには…最後までやり通すしかないじゃん?中途半端だと状況を悪化させちまうだけだ。ほら、剣を出せよ。」
ハゼット「ラフには戻って来れないのか…?」
クロノ「こんな状況で戻れるとでも?」
ハゼット「じゃあどうするんだ…これから…」
クロノ「どっかその辺のテキトーな村で傭兵みたいなことでもするよ。」
ハゼット「それでいいのか?」
クロノ「あぁ。」
ハゼットが剣を作り出し、こちらに向ける。
クロノ「あんたは殺しても死なないんだったよな?なら殺す気でいかせてもらおうかしらね…。」
ハゼット「俺はどうしたらいい…お前を助けるために…」
クロノ「あんたあれか?不老不死になったのが子供だから頭ん中はガキの頃のまんまってか?自分で考えな。俺だって自分で考えた結果のこれだ。」
ハゼットが剣を強く握る。
クロノ「それじゃあいくぞ…」
ハゼット「あぁ‼︎」
ハゼットの足元で煙幕を発生させる。
煙幕は一瞬でハゼットを包む。
ハゼット「な⁉︎」
クロノ「あひゃひゃひゃひゃひゃ‼︎うっそぴょーん‼︎あんたと戦ったら寿命減らされかねねぇっての‼︎そんじゃあ、バイビー‼︎」
町を覆う塀まで走り、塀を飛び越える。
地面に降り立つ瞬間に右手で地面を殴り、召喚魔法の陣を発生させ、バイクを召喚する。
クロノ「ま、これが1番悪役らしい感じかねぇ?すさまじくグダグダだったなぁ…」
(あいつらと離れるのは惜しいけど…)
クロノ「ま、どうせシーラの情報力で見つかるか。それじゃ、逃げますかね!」







数キロ程走ってバイクを降りる。
向こうから馬車が来ている。
クロノ「ちょうどいい。あれに乗っけてもらおう。」
馬車が近づいてきて止まった。
クロノ「すんませーん。これってどこ行きの馬車?」
男「リースって村行きだ。乗るかい?」
クロノ「いいの?ありがたい!」
男「いやいや、こっちこそありがたいってところさ。あんた見た感じ、強そうじゃないか?実はリースの近くで女盗賊共がウロウロしててな。そこを通る商人の馬車はみんな襲われちまうんだ。乗っけてく代わりにこの馬車を守っちゃくれねぇかな?」
クロノ「そんくらいならお安い御用だ。任せれたよ。」

                             終

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