ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その3・目指す

[クロノ]
漁師A「魔獣はもういないぞ!」
漁師B「中のやつはどうなってる?」
漁師A「歩けるくらいには生きてる!」
なんとか終わったか。

ブラン「師匠~!今のどうだった~?」
カンザー「まだ踏み込みが足りんかの。乱舞の決め方は良かったぞ。」
ブラン「そっか…。」
フレア「すごいな…。」
ブラン「ふっふーん!そりゃ伊達に師匠の弟子やってないからね!」
無い胸を大きく張る。
ブラン「今失礼なこと考えてたでしょ。」
クロノ「いやいやまさか。」
カンザー「とにかくこちらはもういいじゃろう。すまんのぉ、手伝わせてしもうて。」
クロノ「いやいや、こっちが勝手に首突っ込んだんですし。」
ブラン「師匠~。私も遊びたい~。」
カンザー「んん?そうじゃのう…。まぁ、今日はえかろう。遊んでくるといい。」
ブラン「やったー‼︎ねぇクロノ!私も一緒にいい?」
クロノ「もちろん。華は多いに越したことはないしな。」
ブラン「ふふん、分かってるじゃない。それじゃ、行くわよ!」
みんなで海に突貫する。

が、1人だけ来なかった者がいた。
カンザー「悩み事か?」
フレア「え?」
カンザー「ブラン達が戦っている時、苦いもんでも食ったような顔をしながら見ておった。そういえば先ほどの店でワシが子ども頃から鍛錬を欠かさなかったと言った時も同じ顔をしとったな。」
フレア「…才能のないやつがどれだけ努力しても、才能があるやつには勝てないってある人に言われて…。才能のない俺はどんだけ努力しても勝てないんだなって…。それじゃあ俺がギルドにいる意味ないじゃないかって…」
カンザー「才能がないから…か…。誰もが通る道だな。よし、ではワシが人生の先輩として助言をしてやろう。戦いに限らず、人生における全てのことに対して当てはまる魔法の言葉じゃ。」
フレア「魔法の…?」
カンザー「そんなものは人による。」
フレア「はぁ?」
カンザー「お主が勝てないのは才能がある者ではなく、才能がある『アイツ』じゃろう?努力して勝てないならもっと努力をすればいい。」
フレア「でも努力したって追いつけないんだぞ?」
カンザー「だからそんなものは人によるんじゃ。器なんぞみんな持っとる大きさは同じじゃ。才能というのはその器にあらかじめどれくらい水が入れられとるかじゃ。ワシの弟子も才能がなくてのぉ。」
フレア「あれだけ戦えてて?」
カンザー「1年間修行して魔力強化すらできなかったんじゃ。」
フレア「できなかった?今はアレなのに?」
カンザー「あぁ、アレなのにな。普通の人間なら子どもでも簡単な強化くらいはできるものじゃが、あいつはこれっぽっちもできなかったんじゃ。ワシも最初は何度もお前には才能がないんだからもうやめておけと言った。じゃがあいつは絶対に諦めないと言った。何が何でもやってやると言った。ワシだけでない。他の町のもんも諦めろと言っていたが、それでもやめなかった。毎日毎日体のどっかに傷を増やしては今度はいけるってな。」
フレア「なんでそこまで…」
カンザー「あいつには追いかけてるものがあるんじゃよ。」
フレア「追いかけてるもの?」
カンザー「あいつはこの町の生まれじゃない。シギレーという村が昔あってな。」
フレア「シギレー?」
カンザー「若いもんは知らんかの…?レギオンという怪物は聞いたことあるかの?」
フレア「レギオンは知ってます。顔がたくさんある怪物ですよね。数年おきに現れて世界中から傭兵やら軍やらを集めて討伐隊を結成して挑んでるけど追い返すことしかできないっていう。」
カンザー「うむ。あいつが赤ん坊の頃、シギレーの村で生まれたばかりの時、レギオンがその村を襲った。あいつは村の数少ない生き残りの1人じゃ。成長して、赤ん坊の頃に何があったか教えてやった。そしたら、強くなってそいつをぶっ飛ばしてやるっての。」
フレア「……。」
カンザー「お主も10年間ずうっと鍛錬を積んできたんなら、何か目標があって頑張ってきたんじゃろ?」
フレア「…なんで10年って…」
カンザー「ワシをなめるなよ?何人も武人を見てきた。10年近くもお主がデカイ剣振り回しとることくらい分かるわ。何のために努力しとるかは分からんが、目標があるなら、誰に何と言われようと突っ走らんかい!才能だとかいう目に見えんもん器をいちいち気にしとらんで頑張り続けてみい‼︎いつの間にか報われとるかもしれんぞ‼︎」
フレア「いつの間にかって…」
カンザー「お主の価値を決めるのはお主だ。他人からどうこう言われた価値は、客観的見るという意味でなら正しいかもしれんが、偏見に塗れたような見方で見られても意味なんぞない。それだけは覚えておけ。才能に負けるな‼︎努力したやつが才能があるやつに負けるか‼︎さぁ、遊んでこい‼︎この海に来てまでつまらん顔をするな‼︎」

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