ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その2・格闘少女


[クロノ]
シーラ「おっほおおお‼︎噂通りのすごい海ですね、これは‼︎」
水着に着替え、シーラを筆頭に海に向かう。余程楽しみだったんだろう。
(にしても…)
シーラ「ん?どうしたんですかクロノさん?ジロジロ見て。」
確かシレイノが水着といえば古着だとかなんとか言ってた気がするが…。
クロノ「いや、そういう水着なんだなって。シレイノが水着と言ったら濡れてもいいような古着だとか言ってたからさ。」
今のシーラの水着は、フリフリの超ミニスカにビキニの上からへそが出るような短い半袖のシャツを着ているような感じだ。
他も形は同じだが色だとかフリフリ具合が違うようなものだ。
シーラ「まぁそういうのは多いですが、何もそれしかないというわけではありませんよ?せっかくの海ですから思いきり水を浴びたいじゃないですか!」
他の観光客を見てみると、案外そういう水着の客も多い。

レーニャ「お姉さま!とてもお似合いです!」
ターニア「そうか…?こういうのはベルージアでは着ないから恥ずかしいな…。」
フレア「あぁ~、いいっすね~。やっぱ女の人の水着姿っていいもんすね~。」
フレアがアウストールに来てから初めて笑顔を見せた。
クロノ「やっと笑ったか。」
フレア「へ?」
クロノ「フレア、ここに来るまでずっとぶすーっとしてたからさ。…なんかあったの?」
フレア「……。」
シーラ「クロノさん?どうしました?早く行きましょうよ!」
クロノ「先行っといて。後から行くから。」
シーラ「?」
ターニア「ほらシーラ、行くぞ。後で来ると言ってるんだからすぐに来るさ。」
ターニアがこちらを向きうなずく。
ターニアもフレアが仏頂面に気づいていたのだろう。
(ナイスフォローだぜ。)

クロノ「そんで?」
フレア「……お前に言っていいのか分かんないんだけどさ…。こないだの…イクツキの事件あったじゃん。あの時に…ソウスケさんにさ。お前には才能がないって言われたんだ。それだけなら別にどうってことはないけどさ。その後に才能がないやつはどれだけ努力しようと無駄って言われたんだ。だからゲンダイさんに大怪我させちまったし。それに、あの人お前のことをさ、才能があるやつだって言ってたんだよ。才能がないやつがあるやつに勝てないなら、この世界に来たばっかのお前にも勝てない俺は、ホントに努力する意味がないんじゃないかって思えてきたんだ。多分…嫉妬なのかな…。」
クロノ「才能ね…。俺は努力する奴と才能がある奴は同列だと思うけどな。単に実力だけで見るならだけど。」
フレア「でもお前は俺より上だろ?」
クロノ「そりゃあれだ。俺だって努力してんだ。この世界で負けないように、毎日毎日死ぬ気で努力してんだよ。どうやったらどう動けるか、それをいちいち頭ん中で思い浮かべて、実戦で使えそうなのがあったらそれを覚えて本番でそのタイミングが来たらそう動く。ずっとずっと考えてんだよ。」
フレア「それだって、そういう才能だろ?」
クロノ「才能ってのがそんなに便利に使える言葉ならお前は俺より才能だらけだぞ?アクアから聞いたぞ。イクツキの事件が終わってラフに帰るまで滞在してた間、ゲンダイさんやクロウのとこに行って戦い方を教えてもらったり、外で魔獣と戦いまくったり。」
フレア「姉貴…。言うなって言ったのに…。」
クロノ「弟の自慢がしたくなるんだ。いい姉さんじゃないか。それは事件の後だろ?あんだけ才能が才能がって言われてそれでも努力するのを諦めてないじゃん。それで心折れないならそれも大した才能だと思うぞ?」
フレア「それは戦闘に関係ないだろ?」
クロノ「折れない心ってのはどこに行っても通用するものだとは思うけどね。」
フレア「……。」
クロノ「気にしないってのが一番だとは思うけどさ。…さぁ、そろそろシーラ達が待ちくたびれてるぞ。」
フレア「…あぁ。」

シーラ「遅いですよ!何話してたんですか?」
クロノ「男の話さ。さぁて、何をして…ん?」
沖を見ると、漁船がいくつかの船に誘導されるようにここに近づいてきている。浜辺には何人かの男達が旗を振って指示を出しているようだ。
ターニア「何かあったのか…?」
シーラ「なんでしょう…気になりますね…。」
クロノ「気になるなら行ってみよう。」

クロノ「カンザーさん!なんかあったんですか?」
カンザー「おお、ギルドの連中か。いやなに、漁船が魔獣に襲われていたのを他の船がたまたま見つけたらしくてな。港よりここの発着場の方が近いからひとまずここに一旦避難して、漁師の治療なりを行うんだ。」
シーラ「例の魔獣が活発になってるっていう…?」
カンザー「おそらく関係あるじゃろう…。」
女の子「師匠~。医者を連れて来たわよ~っと。」
カンザー「おぉブラン‼︎すまんの‼︎」
女の子「師匠が頼んだことでしょ。っと、その人達は知り合い?」
カンザー「あぁ、さっき海辺のレストランで席が隣になってのぉ。アリアンテのギルドの連中じゃ。」
女の子「あ、知ってる!ラフってやつでしょ?」
クロノ「ラフってそんなに知れてるの?」
シーラ「知ってる人は知ってますよ?ドラゴンスレイヤーのハゼットさんが所属しているくらいですし、カンザーさんのような有名な戦士なんかには知っているでしょう。」
女の子「いつかハゼットって人と手合わせしてみたいって師匠がよく言ってるんだ。あたし、ブラン・ロックウェル。師匠の弟子やってるの。よろしくね!」
クロノ「俺はカミヅキ・クロノ。こっちがフレアでそっちがシーラ。あっちがターニアとレーニャだ。」
シーラ「ブランちゃん、まだ若いよね…。何才なの?」
ブラン「昨日で16になったかな。」
クロノ「若いなおい…。」
カンザー「見た目に惑わされてはいかんぞ?こいつはなかなか強いからな。」
ブラン「ま、伊達に師匠の弟子じゃないからね!」
カンザー「おっ、船がだいぶ来たな。 むっ⁉︎」
船からいくつかの影が飛び出る。
ターニア「あれは…魔獣か⁉︎」
レーニャ「いけない…!一般人に被害が出てしまいます!」
カンザー「ブラン!魔獣を抑えてこい!観光客を傷つかせてはいかん!」
ブラン「任せといて!全部ぶっ飛ばしてやるんだから!」
クロノ「俺も手伝うぞ!」

漁師A「くそぉ、パニッシャーか‼︎」
漁師B「ひぃぃ‼︎む、無理だぁぁ‼︎」
ブラン「はぁぁぁぁ‼︎」
空中高く飛び、地面に向かって足を伸ばし蹴りを繰り出す。
ブラン「炎蹴牙‼︎」
ピラニアに足が生えたような魔獣の脳天を蹴り抜き、一体倒す。
こちらに一体が飛びかかってくる。
クロノ「せい‼︎」
前にステップし、空中にいる魔獣に後ろ回し蹴りで蹴り上げる。
体を回し、かかと落としを胴体に当て、地面に叩きつける。
ブラン「やるね君‼︎私もまだまだ‼︎」
魔獣に向かって走りショルダータックルを食らわせる。
ブラン「炎肩烈破‼︎」
よろめかせた敵に詰め寄り、
ブラン「炎龍翔‼︎」
回転しながら体を魔獣に当て、空中に飛び上がる。
ブラン「紅岩落とし‼︎」
持ち上げられた魔獣に向かって、右手を振りかざす。
地面に激突した魔獣は動かなくなった。
ブラン「炎陣乱舞!どうだ!」
地面に舞い降りたブランが決めポーズをとる。
格ゲーみたいなコンボだなぁ、というのが素直な感想だ。

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