ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その2・イクツキ

[フレア]
イクツキに向かう馬車の中。
イクツキが見えてきた。
クロノ「あれがイクツキ…でかい町だなぁ…。」
アクア「あれでも東で3番目の大きさだってさ。」
アリアンテと同じか少し小さいかくらいの町だが、それでも3位なのか。
クロノ「ん?あれって?」
フレア「どした?何かあったか?」
町から少しずれた方向でクロノが何か見つける。
クロノ「あれ、人が魔獣に襲われてない⁉︎」
フレア「なんだって⁉︎」
クロノが指差す方を見つける。
東国特有の服を着たボサボサ髪の男が魔獣に追いかけられている。
フレア「姉さん!援護!」
アクア「あいあい!」
馬車を降りて、男の方へ走る。
魔力強化を使って本気で走れば馬車で走るよりも早く着く事ができる。

男「お~い、そこのあんた~!お助け~!」
男が叫ぶ。よく見ると左手に鞘に収めた刀、腰にも刀を帯びている。
フレア「任せとけ!」
男を追っている魔獣は三体。
魔力強化により高くジャンプをして、一体の魔獣めがけて大剣を叩きつける。
一撃で魔獣を仕留めてやった。どうやらそこまで強くはないようだ。
男「マジかよ。やるなアンタ!俺も一体くらいなら!」
男が刀を鞘から抜き、魔獣と対峙する。
残りの一体は既に頭に矢が突き刺さっていた。

男が魔獣の体を斬りつけ続ける。が、あまり効果があるように見えない。
フレア「おい、手伝った方がいいか?」
男「大丈夫大丈夫!技の下準備だよ!」
いったいどんな技なんだ…
男「おし、そろそろかな。」
男が刀を鞘に収め、直立する。
巨大なねずみの魔獣が男に飛びかかる。
フレア「おい!」
男「瞬桜花しゅんおうか‼︎」
いつの間にか魔獣の向こう側で剣を抜いていた。
空中で魔獣は体中から大量に出血し、地面に落ちる。
男「うん、タイマンならなかなかやれるんだけどなぁ…。」
刀身を持っていた布で拭き、刀を鞘にしまう。
男「いや~、助かったよ~。」
フレア「あんた、1人でも十分戦えるじゃんかよ。」
男「いやいや、何匹も同時に相手すんのあんま好きじゃないんだよ~。ホント助かったよ。」
アクア「あんた、イクツキの人間かい?」
男「そだよ?あぁ、名乗っといた方がいいかな?俺はアマノ・クロウ。」
フレア「俺はフレア・ローレンス。そっちがアクア・ローレンスで、こいつがカミヅキ・クロノ。アリアンテって町でギルドをやってる。」
クロウ「ギルド?あぁ~、あれか。知ってる知ってる。便利屋みたいなやつだろ?じゃあなんか依頼で来たの?」
フレア「あぁ。なんでも、夜中に人が襲われるって…。」
クロウ「あぁそれか…。そうだな…ここで立ち話するのもなんだし、町に行きながら話そうぜ。」
どうにもチャラいというか、軽い印象の話し方だ。

クロウ「同じ苗字ってことは…そっちのアクアさんってあんたの姉かなんか?」
アクア「あぁ、そうだよ。こいつはあたしの弟だ。」
クロウ「かっー!いいなぁ、おい!羨ましいぞ!こんな綺麗な人が姉だなんてさぁ!」
フレア「綺麗なのは見た目だけだよ。中身はドス黒だ。」
アクア「あんたは外も中も真っ黒だけどねぇ。」
フレア「んだとぉ⁉︎」
クロウ「こいつら仲いいなぁ。」
フレア「よかねぇよ‼︎」
クロノ「ギルドにいる時もだいたいこんな感じですよ。」
フレア「余計なこと言うな‼︎」
???「おいクロウ‼︎」
町に入り口に入りかけたところで目の前に1人の男が立ちはだかる。
クロウ「うげ、兄貴…。」
男が自分たちの方を見る。
男「ん?君達は…」
クロウ「アリアンテって町でギルドやってる人らだよ。なんか依頼で来たんだってさ。」
男「ギルド…。あぁ、聞いたことはある。便利屋か。よく来てくれた。私はアマノ・ソウスケ。そいつの兄だ。愚弟が何か迷惑はかけなかったか?」
クロウ「やだな~かけてるわけないじゃないですか。」
ソウスケ「お前には聞いていないぞ。また仕事をサボって外で遊んでたな?」
クロウ「いや~、ははは…。」
ソウスケ「さっさと戻ってこい。」
そう言って町の中に戻っていった。
クロウ「はぁ~。ごめんねぇ。町の案内もついでにしようかと思ったんだけどさぁ。」
フレア「いやいいよ。用事あんならそっち終わらせろって。自警団は俺らで探すから。」
クロウ「そう?んじゃあまたどっかでな。」
ソウスケが去った方向に向かって走っていく。

町は木造の家しかない。
別に木造の家自体はどの町でも珍しくはないが、その家の形が他にはないものばかりだ。
この形の家は、東側では珍しくはなく、むしろ一般的な家屋の形でもある。
クロノ曰く、
クロノ「江戸時代みたいだな…」
だそうだが、エドジダイというものがよく分からない。

町の人に自警団の本部を聞き、本部の前まで来た。
フレア「すいませ~ん。自警団ってここで合ってますか?」
白い髭が印象的なおっさんを中心に数人のおっさん達が話していた。
白髭のおっさんは眼帯をしていた。
白髭「おお、ここで合っとるが…あんたらがアレか!アリアンテのギルドのやつか!」
フレア「えぇ、そうです。フレア・ローレンスと言います。こっちが姉のアクアでこっちがカミヅキ・クロノです。」
白髭「わしはホウジョウ・ゲンダイだ。自警団の団長を勤めておる。」
おっさんといっても、腕の筋肉を見る限りまだまだ現役といった感じだ。

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