ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その1・助手

[クロノ]
レイネデの件を終え、ギルドに帰った。
ギルドのメンバーには色々説明をし、明日の朝、マキノのいる研究所に行くことになった。
サシュ「大丈夫なんですか…?夜中にもし襲っちゃったりしたら…」
半分ゾンビの少女、サシュ。人間を見ると自分の中のゾンビが暴れ出し、襲いかかる。
その為、普段は誰もいない方を見ている。
ハゼット「大丈夫だろう。もしそうなったとしても、対策はしてある。」

が、特に異常もなく朝が来た。
エリーがサシュを部屋から連れてくる。
ハゼット「調子はどうだ?」
サシュ「いつも通りです…。」
エリー「いつも通り、肌も冷たいわね。」
サシュはゾンビだから、一応死んでいるということなのだろうか。
ハゼット「なら朝食を終えたら行くとしよう。」
エリー「誰々で行くんです?」
ハゼット「俺とクロノで連れていく。あまり大人数で連れて行くのもなんだしな。」

マキノ研究所前。
サシュ「あの…マキノさんってどんな人なんですか…?」
ハゼット「んー、研究大好き人間…かな?」
クロノ「怖い人じゃあないよ。」
ハゼット「会って確かめるのが一番早い。さぁ、入るぞ。」
研究所の扉を開けると、長髪の少し変わった服を着た女性が出迎えた。マキノではない。服というよりは鎧…アーマーとかに近い感じだ。
女性「いらっしゃいませ。ご用件は?」
ハゼット「あぁ…えっとマキノに会いに来たんだが…。」
女性「お呼びしてきます。」
そう言って奥の実験室に向かっていった。
ハゼット「おいクロノ。あれ誰だ?」
クロノ「いや俺も知りません…。マキノさんが雇ったんでしょうか?」
ハゼット「雇った、か…。まぁ、あいつも人手が足りなくなることくらいあるか…。」
でもどこかで見たことある気もする。
どこで見たのか…。

奥からマキノが出てくる。
マキノ「なんだ、客というのはお前らだったのか。」
女性「お知り合いですか?」
マキノ「あぁ、この間友人がいると言っただろう?彼らがそうだ。そこの剣二本背中に背負ってるのがカミヅキ・クロノで、そっちがハゼット・ローウェル。その子は…知らないな…。新入りか?」
ハゼット「いいや、ちょっとな…。この子の名前はサシュ・カレハってんだ。この子の病気をなんとかしてもらおうと思ってな。」
マキノ「私は医者じゃないぞ?」
ハゼット「この間ゾンビがどうのって話したろ?」
マキノ「ん?あぁ、聞いたな。…まさか、その子の顔色が悪いのは…」
ハゼット「あぁ、この子はゾンビだ。最も、半分だがな。」
マキノ「半分、とは?」
クロノ「ゾンビってのは普通は完全に理性がどっかいっちゃって人間を襲う本能しか残ってないんですが、この子は人間の理性が残ってるんですよ。それでも、人間を見るとたまにこの子の中のゾンビが暴れ出してしまうときがありますが。」
サシュの方を見ると、ずっと謎の女性の方を見ている。
マキノ「なるほど。それで、なんとかというのは?」
ハゼット「この子のゾンビの症状を治してほしい、とまではいかんが、せめて人間を見たときに平静でいられるようにはしてもらいたいと思ってな。」
マキノ「ふむ…。どこまでできるかは分からんが、やってみよう。」
ハゼット「そうか、ありがたい。」
マキノ「しかし、半分ゾンビというのは…。ゾンビにかかった人間は死ぬんだろう?この子は死んでいるのか?」
ハゼット「恐らくはな。死んでいるのに意識があるというのも不思議な点ではあるか…。」
2人で考え込み、黙り込んでしまった。
女性「サシュさん、どうかなさいましたか?」
サシュにずっと見られていたのを気づかれたようだ。
ハゼット「サシュ?」
サシュ「この人…ずっと見てても、平気なんです。」
マキノ「平気というのは、サシュの中のゾンビが暴れ出さないということか?」
サシュ「普通の人を見てたら……その…暴れ出しちゃうはずなのに…この人だけはどれだけ見ても平気なんです…。」
ハゼット「…不思議な雰囲気でもあるしな。マキノ、この人は?」
マキノ「彼女はクサバ・メイだ。」
メイ「クサバ・メイです。お見知り置きを。」
マキノ「雇ったわけではない。クロノは前に見たろ?」
やはり前に見ていたのか。どこで見たのか…。
クロノ「あ、思い出した!前に武器修理しに行ったときの!」
武器を修理しに研究所に来てマキノの実験室に入った際に、巨大な機械に埋め込まれた人間そっくりな人形を見た。
ハゼット「なんだ、その頃からいたのか?」
マキノ「動いてはいなかったがな。」
ハゼット「動いて…?おいクロノ、どういうことだ?」
クロノ「話す人形、だそうです。人間と会話したり、人間のように動けたり、人間のように考えたり。」
メイ「考えるというよりは、予め決められていたプログラムから最適なものを選択し行動、発言しているだけです。」
ハゼット「つまり、生きているわけではないということか。」
メイ「似た者同士、ですね。サシュさん。」

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