ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その2・あんたは誰だよ

[クロノ]
ヒューーー…バッシャーーーン‼︎‼︎

前回からの流れで説明すると、急に足元に魔法陣が出たと思ったらいきなり穴が空いて落っこちて、今、湖に落ちたところだ。
なんの幸運か、水面に垂直の向きで落ちたので、死ぬほど痛い思いをすることはなかった。いや、十分死ぬような体験はしてるわけだが。
かなり潜ってしまったが急いで水面に向かって泳ぐ。
パニックホラーモノの映画ならサメかなんかに食われてる頃だろうが、この湖には危険生物はいないようだ。
ってかこれ湖か?なんか無駄に水がヌルヌルしてるんだが…
使ったことはないが、海に行ったときとかに塗るローションとやらで海を作ったらこんな感じになるに違いない。
ってかこのローションみたいな水を割と飲んでしまった。吐き気はしないがなんか気持ち悪い気がしないでもない。

こんな湖にいられるか!俺は岸に上がるぞ‼︎
と意気込んで岸まで泳いだが、案外フラグというのは回収されないものである。

小中高と運動は何気に得意だった。この時ばかりはあのつまらない学校生活に感謝である。
自分の学生時代の二つ名は「もったいない王子」である。理由は、割とイケメンなのにかなりのオタク趣味だから。
黙ってればイケメンと言われたので黙っていたが、誰かがオタクという情報を流しやがるせいで彼女ができるどころかロクに会話もしたことない。若干コミュ障とやらが混じってたせいでもあるのだろう。現在大学生の19歳だが、今でもそんなもんだ。
サークルの仲間に飲みに誘われているのも、同じサークルだから、という感じだと思う。実際は知らん。

なんとか岸までたどり着いた。
一生泳いでやらねぇからな。
というかクロールで泳ぐ必要はなかったじゃねぇか。と思いながら息を整える。

(こんな人気のないところで迷子かよ…)
自分は天性の人間回避能力を持っているのだろうか、と思うくらい人気のないところによく来る。無意識に。

とりあえずここから動こうかと思って立ち上がろうとすると、
⁇?「ヘイ。」

後ろから声をかけられた。
こんな場所で人と出会うとは…
今はとりあえずこの状況を助けてほしい。
座ったまま後ろを振り向くと、赤髪の男がこっちに手を差し伸べていた。
???「○%$*€々=<○?」
すまん、今なんてった?
明らかに日本語ではないのは分かった。
ロシア語?ドイツ語?それともまた別の国の言葉?
これでも義務教育で数年間習ったんだ、英語でないことくらい分かる。
クロノ「悪いけど…日本語でお願いできませんかね…?」
???「@#€?○%$*€々=<○?」
クロノ「あ、これダメなやつですね。」
異文化交流というのは難しいなぁ…。
とりあえず両手をヒラヒラと振って、自分に言葉が通じないことをジェスチャーで伝える。
すると相手はポンと手を叩いて頷いた。
お、分かってくれたか。
すると、いきなり俺の耳と喉の方に手を伸ばしてきた。
ビックリして後ずさる。
誰だってそんな反応するだろう。俺が腐った考えを持った人間だからなのかもしれんが、いきなり襲いかかってきたようにしか見えんぞ。そういう意味で。
男は自分の胸をポンポンと叩く。
(信用しろって言いたいのか…?)
なんだが分からないが、とりあえず頷いた。
男はもう一度手を耳と喉に伸ばす。
触れるか触れないかの距離まできた瞬間、

バチッ‼︎

っと電流か何かが流れたのを感じた。耳と喉に。今日の俺は耳と喉の運が悪いようだ。がんばれ、耳と喉。
クロノ「痛って‼︎」
???「あぁ、悪い悪い。そうでもしないと話が通じないと思ってな。」
いきなり向こうの言葉が流暢な日本語になった。
話せるんなら最初から話してくれよ。
ってか通じないってどういう意味だよ。
???「大丈夫か?立てるか?」
クロノ「あ、あぁ。」
もう一度手を差し伸べられたので、今度はその手を取って立ち上がる。
???「あんた、名前は?この辺の人間じゃないっぽいが。」
とりあえず名乗る。そしてここまで来た経緯を話す。信じられようが信じられまいが真実なわけだし、もし信じられなくてもまぁ、なんとかなるだろ。
???「そいつは災難だったな。落ちたところが湖で良かったじゃないか。」
信じたよ、この人。俺がこんな話されたら絶対信じないよ。誰だってそうだよ。
???「この辺は割と危険な場所だ。俺が近くの町まで送ろう。宿とかのアテはあるのか?」
宿か…と、ポケットを探る。あ、そうか、俺財布家に置いてきたんじゃん。
クロノ「ないです……。」
???「そんな気はしてたさ。」
うん、だろうね。明らかにセンスっていうか文化の方向が服から分かるからね。完全にここ異国だよね。なんで日本語なのかは知らんが。
クロノ「えっと、あんたの名前は…?」
そういえば聞くの忘れてた。
???「ん?あぁ、忘れてたな。」
男が咳き込む。
???「俺の名前はハゼット・ローウェル。「ラフ」というギルドでギルドマスターをしている。」
わ~お、厨二心をくすぐられる単語が飛び交うぜ。

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