機動転生ヴァルハリオン ~ 俺の体がロボだコレ!? パイロットはヒロイン ~

冬塚おんぜ

第4話 狂気の幼女趣味


 歩いて、戦って、食べるのを見て、水浴びを見張って、寝顔を見ながら歩く。
 そんな感じの生活が、何日か続いた。
 一人で考え込むのは得意じゃないから、エールズと話をしたりもした。

 ちなみに、エールズの水浴びを見張るといっても。
 視界がサーモグラフィーで表示される、熱量計測モードでだ。
 草食系の俺に、裸体をそのまま見るなんて大胆な事はできない。
 というより、あまりに堂々と脱がれると、男扱いされていないのかと悲しくなってくる。

 夜から夜明けにかけては、エールズの寝顔を眺めて癒やされながら、彼女が寝る前に教えてくれた方角へとゆっくり歩く。

 言われたとおり、俺は少しも眠くない。
 頭もスッキリしているし。
 でも、ここで凹むのは簡単だ。

 むしろ生前の記憶を持ったまま転生させてもらえるだけ、有り難いじゃないか。
 未練を晴らす機会が、あるかもしれないんだから。
 俺の場合は存分に晴らせる。
 生前の俺は、何をやっても認められない中途半端な奴だったから。
 逆に前向きな考え方をしたい。



 そうして歩き続けてきた俺は今、森の近くで陣取る巨木型のレヴノイド達を倒している。
 森を荒らしている奴らを見付けたからだ。
 理由の無い環境破壊が、許されていい筈が無い。
 たっぷりお仕置きして、森の動物たちに謝ってもらおう。

 手前側の草原地帯には、既に三体の残骸が倒れている。

「気を付けて下さい! このガントゥレントは飛び道具も使ってきます!」
「森があるから、ビームだと被害が出るかな」
「何とか防いで――きゃ!?」

 背中に受ける衝撃。
 どうやら、ガントゥレントがしがみついてきているようだ。
 エールズ王女が舌を噛んだらどうしてくれるんだ。

 俺は振り向きざまに、裏拳を食らわせる。
 そのまま、ガントゥレントの鼻に指を突っ込む。

「あ、あの。勇者様、何を?」
「お仕置きしようと思って」

 ロケットパンチを飛ばし、空中でジタバタするガントゥレントにビームを当てる。
 あっという間に、ガントゥレントは消し炭になった。

「これなら自然環境は守られる」
「いいアイデアだと思います。でも、無理はしないで下さいね」

 残りが、両目から機関砲を放ってくる。
 この前のあのカラスみたいなのと比べると、少し大きめの弾を使っているようだ。
 カンカンカンッと、装甲に反射する音も大きい。
 俺は両腕をクロスしながら近付いて、うち一体を掴む。

「ぬんっ!」

 そして膝蹴り。
 くの字に折れ曲がったガントゥレントは、そのまま動きを止めた。
 爆発させると燃焼するかもしれないし、これも環境への配慮だ。
 俺が歩き回る事で森が荒れるのは……ちょっと心が痛むけど。
 野生動物のみんなは、しっかり逃げてくれるといいなあ。

 後はガントゥレントの残骸を盾にしながら、ロケットパンチを使って倒す。
 あっという間に、群れはスクラップになった。

「あ、見て下さい! 木々が薙ぎ倒されて、道が出来ています!」
「もしかして、何かがあの山を越えていったのかな」
「そうみたいですね」

「空を飛べたら、木々に被害が出なくて済むんだけど」
「少し、遠回りして行きましょう」
「そうだね」

 綺麗に薙ぎ倒された道が、真っ直ぐに続いている。
 俺はその獣道を辿って歩く。
 ズシン、ズシンと響き渡る足音。
 鳥たちが驚いて、飛び立っていく。
 うう、ごめんよ……推定30tくらいの巨体でごめんよ。
 いつかダイエットして、スリムになって、君達を優しく迎えてあげるからね……。
 きっと途方も無い努力が必要かもだけど、俺は頑張るよ。


「見えました! あれです!」

 緑色の丸っこい巨大ロボットが、ナタみたいなものを振り回している。
 その周囲を飛んでいるのは、オオワシだ。
 ……全長10mくらいの。

 でも大きさより気になる事がある。

「オオワシは生き物なんだ?」
「もしかして、エルフが使役しているのかもしれません」
「どういう事?」
「森の奥深くに住まうエルフ達は、聖鉄との共存を望みませんでした」

 望遠レンズを起動して、オオワシを見る。

「本当だ。エルフが乗ってる」

 一羽に付き一人のエルフがオオワシの背中に乗っていて、弓矢を構えている。
 俺は望遠レンズの視界を、コックピットの内部に表示する。

「防御魔法とかあるのかな?」
「あります。ただ、ネクロゴスが現れてからは、もはや気休めにも……」

 だとしたら、まずいな。
 機銃でも撃たれたら、あっという間に蜂の巣だ。
 そうはさせるか!
 俺はロケットパンチを放って、緑色のロボットに拳骨を喰らわせる。

「オカァアアアアアン!」

 緑色のロボットは、俺のほうに振り向く。
 よし、これで俺に注意が向いた!
 俺は外部音声を起動して、呼び掛ける。

「君達、離れてくれ! 今から、ビームを使う!」

 すると、オオワシが一羽、俺の所へと飛んでくる。
 エルフのお姉さんが乗っていた。

「あんた、聖鉄だろ? この里は、アタイ等でケリを付ける。すっこんでてくれ」

 そう言って、エルフのお姉さんは再び引き返していった。

「断られちゃいましたね……」
「うん」

 正直、凹む。
 取り付く島も無い言い方だったし。

 と思ったら、またさっきのオオワシとエルフが戻ってきた。

「悪い、撤回させてくれ。里の子供達が行方不明になった」
「俺はその子達を探せばいいのかい?」
「いや、アタイが探す。あんたに、あのデカブツを託す」
「わかった!」

 それなら、俺もやりやすい!

 緑色のロボットは、決めポーズみたいなのをし始める。
 それから、腰をカクカクと動かした。

「ハゲシークゼンゴォー……ンゴォー」

 激しく、前後?
 こいつは一体、何を目的としているレヴノイドなんだ?
 俺は目を凝らす。黒い帯が上下に現れ、名前が表示される。

“陵辱鬼兵・ペドフィローダー”

 君という奴は……!
 そういうのはアダルトゲームでやるべきだ!
 この世界にそんな物は無いかもしれない。
 性犯罪は俺が一番許せない犯罪の一つ!

「グフフフフゥ、ヨージョ……エルフゥ……リョージョクゥ……」

 う、うわあ。

「なんかきもちわるいことをつぶやいてます……!」
「慌てるな! 素数を数えて落ち着くんだ!」
「1……3……6?」
「6は素数じゃないから……」

 などとやりとりをしていると、ペドフィローダーがこっちを指差してきた。

「ヒーメェ……ネトラレェ! ナーカーノーヒートー!」

 駄目だこいつ! 早く何とかしないと!
 しかも、俺の中に王女が乗っている事を、何故か見抜いている節がある!
 ……やらせはしない、やらせはしないぞ!

 まずは目からビーム!
 けれど、ちっとも通用しない。
 なんだこのレヴノイド! バリアがあるのか!

 近くにエルフの里がある。
 ペドフィローダーに近付いてバルムンクを使うのは、あまりいい手じゃない。

 ……待てよ?
 こういう時こそ、アーティファクトとやらの出番なのかな?



コメント

コメントを書く

「現代アクション」の人気作品

書籍化作品