機動転生ヴァルハリオン ~ 俺の体がロボだコレ!? パイロットはヒロイン ~

冬塚おんぜ

第18話 撃ち落とせ、この許されざる暴挙を!!


「ラッキースケベタイム!」

 ヒワイバーンが急降下してから、触手玉を口から吐き出した。
 触手玉から伸ばされた触手によって、エールズとレキリアが温泉から引き上げられていく。
 雪が降っているのに……!

「んなっ!? 何をするのですかっ!?」
「うっへ、バカヤロー!」
「ヒワヒヒヒ……温泉にハプニングは付き物ッヒー?」

 なんて酷い真似を!
 この寒空に裸で宙吊りにしようものなら、凍傷になってしまうかもしれないだろ!
 ……許さないぞ!

 まず触手玉に接近!
 テンタクル・ツール・デバイスで慎重に分解する。

「ごめんなさい……わたしってば、またご迷惑を……――くしゅんっ」
「しゃむい……」

 ああ、可哀想に……鼻水が垂れちゃってる……。
 まったく、エールズとレキリアが風邪を引いたらどうするんだ!

「服を用意してコックピットに入る?」
「っくしっ! ずびっ……予備の服が居住スペースにあります……うぅぅ」

 インスタント・リビングルームで居住空間を作ってあるから、そこで着替えてもらおう。
 最近は寝る時もコックピットの中だったから、忘れてた……。

「……入って」

 村人からバスタオルを受け取って身体に巻き、エールズとレキリアはコックピットに入ってきた。
 失敗したなあ。上着の一つでも買ってくるんだった……。

「勇者様の中、あったかいです……」

 いささか誤解を招く言い方な気はするけど、今はそんな事を気にしている暇はない。
 空調機能が任意で調節できたらいいんだけど……仕方ない!

「着替えておいで」
「はい……」

 よし、その間に……ポーズとってエネルギー充填!!
 戦闘開始だ!

「降りてこい! あと、パンツを返せ!」
「ッヒー! JKの使用済み下着最高ッヒー! コレクションが増えるッヒー! ……いずれはその美少女たんも頂いてくッヒー!」
「もう色々とアウトじゃないか! 墜ちろ!」

 目からビーム!!
 ロケットパンチ!!
 バルムンク……投げスロウ!!

「うおおおおお!!」

「ただいま!」
「戻りました!」

 よし、二人がコックピットに戻ってきた!
 これで百人力だ。

「二人とも、作業着似合ってるよ!」
「そりゃーどうも!」
「えへへ」

 百裂ロケットパンチでバルムンクの軌道を変える。
 そして目からビームを交える!

 左右にスイスイと避ける。
 ならば!
 フォールダウン・フォース!!
 これを使うと相手の“何か”が下がる……何が下がるのかはランダムらしいけど、使って損はない!

「うっ……!」

 早速、効果が出てきたみたいだ。
 ……お腹のHマークが、薄れている!?

「ふぅ……なんか、萎えてきたッヒー……こんな寒いのに、公開オナニーとかアホみたいッヒー……」

 なんか思ってた効果と違う……。
 だから!
 なんで!!
 高度じゃなくて!!!
 テンションを!!!!
 下げるんだッッッッッッ!!!!!!

 っはぁ~~、まあいいよ。

「よーしよし、いい子だからパンツを返しなさい。いいかい?」
「あ~……はいぃ~」

 よしよし、うまく行った。
 最初からこうすればよかった。
 と、その時だった。


「甘いぞ、ヴァルハリオン!」

 いつかの女幹部の人が、空から腕組みしてやってきた!?

「ヒワイバーン、情けないぞ貴様! 私のおっぱいを揉め!」

 いきなり何を言い出すんだろう、この人は。

「ッヒー……萎え萎えモードのボクちゃんにそんな酷なことを……」
「コレクションを処分されたいのか? 今の貴様には不要だろうからな」
「そ、それは困る、かも……」
「なら揉め! さあ! さあ!」

 何してんの、この人。
 ああもう!
 ロケットデコピン!

「当たるものか!」
「な、なに!?」

 弾かれた……!?
 攻撃が当たった瞬間、赤いバリアが発生する!

 拳が駄目なら、説得だ。
 多分、無駄だろうけど……。

「もっと自分を大切にするべきじゃあないのか!?」

 俺の問い掛けに、女幹部はニヤリと笑う。

「この身体はネクロゴスに、あのお方・・・・に捧げた。レヴノイドもまたネクロゴスのものであるなら、合理的なエネルギー供給に口を挟む必要が何処にある?」

 いや、止そうよ、そんな考え方。
 ブラック企業じゃないんだからさ……。

「自分も他人も無理やり何かのために犠牲にするのを是とするなんて、俺は絶対に受け入れられない」
「その甘さが、世界の緩やかな破滅を招くのだ」
「逆だよ……」

 そして、ヒワイバーンは女幹部の胸を何度も揉んだ。
 その間に俺は何度もロケットパンチと目からビームを使ったけど、少しもダメージが通らない。

 その間にも、ヒワイバーンのHマークが少しずつ色を取り戻していった。

「完全回復ッヒー!! あの、姐さん、ついでにおしっこもボトルに詰め――」
「――調子に乗るなッ!!」

 バチィンと、鋼のフェイスに思いきりビンタをした。
 うん、たしかにおしっこまで行ったら完全にアウトだよね。

「さあ、やれ! 死は万物の始まりなり」

 女幹部は魔方陣を空中に作り出し、そこへ入っていく。
 また逃げられるのか……でも、無力感に打ちひしがれている暇はない。

「ヒワッヒー!!」

 は、速い!?
 凄まじい速度で突進してきたかと思ったら、背中にしがみついてきた。
 首を動かして、胸部装甲へと頭をもたげる。

 触手玉を口から吐き出して、コックピットハッチを開けようとしてくる。
 もちろん力ずくじゃ開かない構造だけど、ちょっと精神的にクるものがある。

「この中に、さっきのおにゃのこがいるのかッヒー……早く欲しいッヒー、いとしいしと……」

 き、気持ち悪い……!!

「勇者様。ポータブルバキュームをお借りします」
「何を……」

 するつもりなの、と言い切る前に、エールズはスイッチを入れていた。
 触手玉が吸い込まれていく。

 そうだ……気持ち悪がっている場合じゃない!
 俺も、戦わなきゃ。

 ヘッドロックだ!!

 ――ぬるりッ。

「うわぁあああああ!! なんかヌメヌメしてるーッ!?」
「ヒワッヒー!」

 くそ、脱出されてまた空中に!
 どうすればいい!?
 考えろ、考えろ……!

「勇者様。わたしをもう一度、外に出して下さい」
「無茶を言うな!」
「大丈夫です。あのレヴノイドの弱点、何となくわかりましたから。わたしに任せて下さい」

 ……殺されたりはしないだろうけど、心配だ。
 けど、信じてコックピットを開けるしかない。

「レヴノイド、ヒワイバーン! 聞きなさい!!」
「ッヒ? もしかして、寝取られ奴隷宣言ッヒー?」
「そちらにお邪魔します。乗り心地を試させて下さい。あなたにイタズラされたあの時から、身体が火照って、もう我慢できません! わたしの胸も揉んで下さい!」

 え。

「やったッヒー!」

 一直線に向かってくる!?

「はあ……勇者様、今です」
「あ、うん……」

 コックピットを閉めて、バルムンクを構えて……そして、投げるッ!!


 ブオォン――グッサァアアアア!!!
 胸に刺さるバルムンク。

 ヒュルルルルル……ガッシャアアアァァァァン!!!!
 そしてヒワイバーンは山肌に、頭から突っ込んだ。
 エールズはスピーカーを使って、叫ぶ。

「――嘘に決まっているでしょう!! この馬鹿!! 陰獣!! 誰があなたなどに身体を預けるものですか!! 気持ち悪い!!」

 あの……エールズさん?

『何故だ……? 性欲は生物の、原初の欲求だぞ……スカートめくりとか漫画でよくある表現じゃないか……』
「性欲と性犯罪はイコールにしちゃいけないと思うよ」

 ヒワイバーンはドぎついピンク色のキノコ雲を上げて爆発した。
 そしてウィンドウが表示される。

 “アーティファクトを取得”

 勝った……。
 今まで以上に酷い敵だった……。

「ありがとう、エールズ……怖く、なかった?」
「勇者様のお役に立てるなら、これくらいは平気ですっ!」

 なんて、事も無げにころころと笑う。
 気付かないうちに、たくましくなったなぁ……。


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