機動転生ヴァルハリオン ~ 俺の体がロボだコレ!? パイロットはヒロイン ~

冬塚おんぜ

第10話 逆転の一手! それは同一構造!


 レヴノイド・ガシャドゥークの策略によって、俺は窮地に陥っていた。
 もしも俺がやられたら、西の都はネクロゴスの手に落ちるだろう。

 それだけじゃない。
 エールズも、レキリアも、殺されるかもしれない。

 ……そんなのは嫌だ。
 絶対に嫌だ。

 俺がちょっと頑張って守れる命があるなら!
 やってやるんだ。俺は!

「ほう、動けるのか。見上げた根性よ」
「こっちは毎日が緊急事態なんでね。悪いけど、弱音なんて吐いてる場合じゃないんだ」
「勇者様、ごめんなさい……わたしが何もできないばかりに」

 エールズが、レキリアを抱き抱えたまま啜り泣く。
 俺はコックピットの中に話し掛ける。

「そんな事は無いよ。物を浮かせる魔法って使える?」
「ふぇ? あ、はい」

 よしよし。
 なら、手はある!

「ガシャドゥーク、俺は戦う。たとえ両足が駄目になっても、熱く燃える魂がある限り!」
「くっさー! ――あ、いや。ククク、絶対零度に火は燃えぬ。今すぐ地獄に沈めてくれるわ!」

 君も割とくさいと思うよ……。
 ガシャドゥークはゆっくりと近付いてくる。
 手には禍々しい大剣。

「ぬうん!」
「この!」

 ガギンッと音を立てて、刃と刃がぶつかり合う。
 パワーはほぼ互角か。

 次に、目からビーム。これも撃ち合いだ。
 そこに鉄球を呼び出す。

「同じ手を何度も喰らうと思うたか! あ、痛っ、こやつめ!」

 鉄球は先程と同じく、スネを直撃する。
 けどガシャドゥークも負けじと、俺のスネを蹴り始めた。

「どうだ! 痛いか!」
「あんまし痛くない!」
「ええい、もう少し痛がれ!」

 鍔迫り合いをしながら、お互いのスネを攻撃し合う巨大ロボット。
 何て間抜けな構図なんだ……。
 鉄球の狙いを頭に変更して、俺も蹴りに切り替える。

 ガシャドゥークは頭を回転させて、ビームで鉄球を溶かした。
 無茶苦茶だ。
 頭を回転させるなんて、人間離れしている。
 いや、人間じゃないんだけど……俺もアレができると思うとちょっと気が滅入る。
 早く人間になりたい。

 それは置いとくとして、タイミングはそろそろかな?
 鍔迫り合いをしながらじりじりと近付いて、ガシャドゥークに抱き付いた。

「なんだと!?」

 そのままコックピットハッチを開く。

「レキリア、天才の腕を見せてくれ!」
「もう、しょうがないにゃあ……」

 にゃあって、君は。

「エールズ、さっき言った魔法を!」
「あ、はい!」

 エールズはレキリアを浮かせ、ガシャドゥークのコックピット付近に乗り移らせる。
 レキリアはガシャドゥークのハッチにしがみつきながら、器用に工具を動かした。

「おのれ、小賢しい真似を!」

 ガシャドゥークが振り落とそうとするのを、俺は両腕を掴んで止める。
 その間にも、スネを蹴り続ける。
 鉄球を何度も頭にゴツゴツと当てて、ビームの狙いを逸らすのも忘れない。

 やがて、ガシャドゥークのコックピットハッチが強制開放された。
 そこには、あの女幹部が乗っていた。

「くっ、よくも!」

 女幹部が毒突く。
 どうして彼女が乗っていたのかは、ちょっと気になる。
 丁度いいから、捕まえて尋問しようかな。

 俺はビームを一瞬だけ発動させるフリをして、ガシャドゥークの視界を眩ませる。
 その隙にロケットパンチで、コックピットに片手を突っ込んだ。
 もちろん、レキリアは俺のコックピットに戻した。

「動くな。じゃなきゃそっちの付人が死ぬぞ」
「卑怯者め! 斯様な狼藉が罷り成るものか!」
「狼藉を働いたのは君達だ!」

 女幹部をつまんで取ろうとすると、フッと手応えが消えた。
 ……潰してないよね?
 恐る恐る手を開いたけど、赤い光の粒が飛んでいただけだ。
 もしかして、また逃げられたのか!

「ふむ。吾輩の付人は逃げたか。存外、意気地の無い奴であったな」
「付人をそんな言い方! 大切にしなさいよ!」
「知らぬ。興が削がれた」

 ドンッと突き放された瞬間、俺はコックピットを咄嗟に閉じた。
 尻餅を突く。

 そしてガシャドゥークの足下に、赤い魔方陣が現れた。

「また会おうぞ」
「――ま、待て!」
「待ってやろう。次回の仕合まで暫し、な」

 屁理屈をこねながら、ガシャドゥークは魔方陣の中に沈んでいく。
 くそ、起き上がれない。

 今まで無視してきたけど、コックピットのモニターは警告表示で真っ赤だ。
 両足に深刻なダメージがあるみたいだ。

「強敵だったね」
「はい……結局、わたしはお役に立てませんでしたし」
「エールズちゃんは卑屈だねえ。もっとウチを見習いなよ!」
「いや、君は極端すぎるから。それはともかく」

 卑屈という点には同意できる。
 エールズの援護が無かったら、危なかった。

「実際、エールズはすごかったよ。制御が難しそうな魔法を、ああやって使いこなしたんだし」

 なでてあげる事はできないけれど、褒めてあげる事はできる。

「えへへ……わたし、お役に立てたのですね」
「うん。だから、自信を持とう」
「はいっ!」

 ああ、この笑顔を守ってあげたい!



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