勇敢なるオカケン

チョーカー

彼等は必ず「さて・・・」と言葉で終幕を始める

 高岳剣時。できれば会いたくない、過去の私を知る少年。
 でも――― 

 「あのさくらちゃんを知れませんか?」

 私は意を決して、彼に聞きます。
 さくらちゃんがいなくなったのは、彼と会った後からです。
 考えてみれば、彼以上に怪しい―――事情をしてそうな人物はいません。
 しかし、私の思惑とは逆に
 「さくらちゃん?どなたです?」
 と本当に心当たりがないような反応が返ってきました。

 「貴方とあった夜。廃校で私と一緒にいた女の子です!」

 つい、強い口調がでてしまいました。しかし、それが良かったのかもしれません。

 「……さくら…ちゃん……ですか?良ければ、詳しく聞いてもいいですか?」

 彼は、真面目な表情で真摯に話しを聞いてくれた。
 そして質問をしてくる。
 中には私の過去の事。さくらちゃんを探すのに不必要としか思えない事を質問してくる。
 でもそれは、決して興味本位の質問ではないのは、彼の表情からわかる。

 「お祖母さんの家にパソコンはありますか?」
 「えぇと、確かあるわ。電話の横に黒い線があったから」
 「……ひょっとして、電話回線でネットを繋いでいるんですか?あの『ピーゴーピーゴーウィーン』ってダイヤルアップの?」
 「そうよ。昔のインターネットってそんな感じじゃない?」
 「確かにそうですが……まぁ、大体の事はわかりました」

 「え?」と思わず声に出た。
 『大体の事はわかりました』と彼は、どういう意味で言ったのだろう?

 「今日の夜、8時くらいに廃校にきてください。あなたの言うさくらちゃんに会わせましょう」


 お祖母ちゃんの家に帰って時計と睨めっこ。時間は思い通りに進んではくれない。
 何度も立ち上がったり、座ったりを繰り返し、家の中を歩き回る。
 落ち着きが足りない実感はある。それでも、僅かな時間経過がもどかしい。
 まだ、時間は夜には遥か遠い。
 そして―――
 長い待機時間が終わった。
 現在の時刻は7時20分。まだ早いと逸る気持ちを抑えられずに家を出る。
 2日前とは違って、薄っすらと暗闇が広がっていく。
 どうやら、今日の天気は1日中、曇りだった模様。
 天気なんて気にする余裕もなくなっていた。そのことに気がつく。
 焦るように速まるっていく足。
 「まだ早い。まだ早い」と言い聞かせても、心は早まっていく。
 そうして到着した廃校。時間は7時30分。
 早く着すぎた。待ち人のさくらちゃ……高岳剣時は、まだいないみたいだ。
 待ち合わせから30分も早く到着すれば、そうなるか……
 私は、深くため息をつく。すると―――

 「随分と早い到着ですね。蓮さん」

 彼はいた。どこか、飄々と、随分と気楽な感じで彼はいた。
 そんな彼に、私は不快感を抱きながら

 「私は常に30分前行動を心がけていますから」

 そう言ってみた。彼は笑った。
 そうして、彼はこう続けた。
 それは、あまりにも的外れな言葉。

 「さて……それでは、この事件の真相をお話しましょう」


 まるでミステリ小説の終盤で謎解きを披露する名探偵みたな現実離れした言葉だった。

  

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