勇敢なるオカケン

チョーカー

私の後悔

 
 「う~ん、そうね~ ちょっと弱いかな~」
 「弱いですか?」
 「そう~弱いのよね~ヴィジュアルがね。神秘的な感じはグッドよ。グッド。ゴシックロリータなファッションなら画面が引き立つのはヴィジョンが見えてるのよ。でもね、この業界で生きていくならプラスアルファが必要なの」
 「プラスアルファですか?」
 「そうね~ 貴方、怖い話は苦手?」

 それが5年前の話。
 こうして、霊感少女 綾峰蓮が生まれた。
 ただ、それだけの話。たぶん……
 思い返してみると、お母さんとお祖母ちゃんが疎遠になったのは、この少し後だった。
 無関係ではないのかもしれない。
 私は嘘をついた。それもたくさん。
 見えないモノを見えると言い。見えるモノを見えないと言い張った。
 そういう仕事だったからだ。そうすると大人は褒めてくれた。
 どんなに嘘つきと罵られても、我慢ができた。だって、本当に嘘つきなんだもの……
 結局、私は芸能界を去ることになる。
 嘘がバレたとか、本物の心霊現象にあったとか、そんなロマッチックな幕引きではなかった。
 ただ、人々から飽きられた。ごく、普通のタレントと同じ終わり方。
 それでも、なぜだか私の胸には「霊感少女 綾峰蓮」が棘のように残っていて、今でも少しの痛みを私に感じさせてくれる。
 その痛みが私の罰として、罪を償っている気分にさせてくれる。
 でも……あの時、あの場所で……
 さくらちゃんには聞かれたくなかった。
 汚れてしまった私を見てほしくない人に見られた感覚。

 
 一体、いつの間に私は眠ってしまっていたの?
 瞳を開くと朝日の光。カーテンが開かれた窓からの光が、私を覚醒させる。
 私は畳の上。布団も引かず、パジャマにも着替えず、お風呂に行かずに寝てしまっていた。
 まだ眠い。けれども、強引に体を起こす。
 浴室へ行き、シャワーを浴びる。

 「……昔は五右衛門風呂だったな」

 そんな思い出をつぶやいた。
 黒い鉄製の釜。お祖母ちゃんが火を焚いていた。
 プラスチックの板を先に入れて、沈めて入るのは忘れて、火傷しそうになった事もある。
 そんな、イメージが強すぎて、シャワーがあるのが違和感になっている。

 「さくらちゃんに謝らないと……」

 しかし、この日はさくらちゃんと会うことはできなかったのです。

 次の日。私はスマホを確認します。
 さくらちゃんからの連絡はありません。当たり前です。
 考え始めると、どんどん不安が強くなっていきます。
 あの日、感情に身を任せて、一人で帰ってしまった事を何度も後悔します。
 どうすれば?どうすればいいのでしょう?何をすれば?
 何も思い浮かびません。それでも、いてもたってもいれずに、私は外に飛び出します。
 心当たりは、昨日周りました。それでも見落としはないか?忘れている所はないか?
 狭い村を彷徨うように探します。

 「こないだは、どうも」

 そんな時に彼と出会ってしまいました。
 高岳剣時と……
  

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