引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
トルフィンの部 【ステータス操作】
まさに危機一髪だった。
突如現れた謎の天使。
――君たちも、ステータスを全部1にしてあげる――
天使はそう言って右手を突き出した。
「なにを……言ってるんだ……」
それしか言えないトルフィンだったが、しかし、脳内ではなんとなく察しがついていた。
断続的に聞こえる外からの悲鳴。騎士たちの反撃もなにもなく、ただ闖入者にいいように蹂躙されている。
ステータス、そしてスキルというゲームめいたシステム。
記憶を失い、謎のステータスアップを遂げた元勇者。
アルスは言っていた。
――リュア、貴様になら見せてやろう! 創造神の力をな!――
――これから気をつけろ。《奴ら》はひっそりとおまえたちに監視と支援をしている――
ここまでヒントが出揃っていて、なにも察しがつかないトルフィンではなかった。だから本能が感じていた。目の前にいる天使の危険性を。このままでは自分たちの命が危ないことを。
「逃げろ! いますぐあいつから……!」
そう叫んでトルフィンは走り出そうとするが、しかし、リュアの姿を見て足踏みした。
彼女は動けない。
だが、抱えて逃げられるような状況ではない。いったいどうすれば……!
隣のセレスティアにちらりと視線を送る。彼女もこの場が危ないことに気づいているようだが、打開策は思い付いていないようだ。顔面蒼白で首を横に振る。
くそったれめ……!
かくなるうえは、最終手段しかない。
トルフィンは剣の柄に右手を添え、天使へ向けて猛然と駆けだした。アルスとの激闘によって疲れた両足が、抗議の痛みを発する。情けないスピードで走る自分自身に、トルフィンは思わず舌打ちをかました。反対に天使は勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
「ふふ、無駄だよ……。ステータスを1にしてしまえば、君たちなんて……」
瞬間。
「うおっ……」
トルフィンは思わず呻いた。全身から徐々に力が抜けていく。HPすらも少しずつ減っていく。本当にステータスそのものがいじられている……
このままでは天使に攻撃さえ届かない。俺の命もここまでか――
トルフィンが諦めかけたとき、ふいに、彼の全身を青い光の柱が包み込んだ。
トルフィンだけじゃない。リュアとセレスティアまでが、同じように光に覆い尽くされた。見ていてどこか安心するような、優しげな輝き。
――なんだ、これは……!
トルフィンは気づいた。
抜かれていた全身の力が、いつの間にか元に戻っていることに。HPも元通りだ。ステータスが下げられているようすはない。
「えっ、どういうこと……?」
今度は天使が驚く番だった。《神の霊気》を持たない彼らに、なぜかステータス操作が効かないからである。
そしてこの絶好の機会を逃すトルフィンではなかった。
「おおおおおっ!」
いまだ呆然としている天使へ向けて、トルフィンは全力で剣を振るった。
突如現れた謎の天使。
――君たちも、ステータスを全部1にしてあげる――
天使はそう言って右手を突き出した。
「なにを……言ってるんだ……」
それしか言えないトルフィンだったが、しかし、脳内ではなんとなく察しがついていた。
断続的に聞こえる外からの悲鳴。騎士たちの反撃もなにもなく、ただ闖入者にいいように蹂躙されている。
ステータス、そしてスキルというゲームめいたシステム。
記憶を失い、謎のステータスアップを遂げた元勇者。
アルスは言っていた。
――リュア、貴様になら見せてやろう! 創造神の力をな!――
――これから気をつけろ。《奴ら》はひっそりとおまえたちに監視と支援をしている――
ここまでヒントが出揃っていて、なにも察しがつかないトルフィンではなかった。だから本能が感じていた。目の前にいる天使の危険性を。このままでは自分たちの命が危ないことを。
「逃げろ! いますぐあいつから……!」
そう叫んでトルフィンは走り出そうとするが、しかし、リュアの姿を見て足踏みした。
彼女は動けない。
だが、抱えて逃げられるような状況ではない。いったいどうすれば……!
隣のセレスティアにちらりと視線を送る。彼女もこの場が危ないことに気づいているようだが、打開策は思い付いていないようだ。顔面蒼白で首を横に振る。
くそったれめ……!
かくなるうえは、最終手段しかない。
トルフィンは剣の柄に右手を添え、天使へ向けて猛然と駆けだした。アルスとの激闘によって疲れた両足が、抗議の痛みを発する。情けないスピードで走る自分自身に、トルフィンは思わず舌打ちをかました。反対に天使は勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
「ふふ、無駄だよ……。ステータスを1にしてしまえば、君たちなんて……」
瞬間。
「うおっ……」
トルフィンは思わず呻いた。全身から徐々に力が抜けていく。HPすらも少しずつ減っていく。本当にステータスそのものがいじられている……
このままでは天使に攻撃さえ届かない。俺の命もここまでか――
トルフィンが諦めかけたとき、ふいに、彼の全身を青い光の柱が包み込んだ。
トルフィンだけじゃない。リュアとセレスティアまでが、同じように光に覆い尽くされた。見ていてどこか安心するような、優しげな輝き。
――なんだ、これは……!
トルフィンは気づいた。
抜かれていた全身の力が、いつの間にか元に戻っていることに。HPも元通りだ。ステータスが下げられているようすはない。
「えっ、どういうこと……?」
今度は天使が驚く番だった。《神の霊気》を持たない彼らに、なぜかステータス操作が効かないからである。
そしてこの絶好の機会を逃すトルフィンではなかった。
「おおおおおっ!」
いまだ呆然としている天使へ向けて、トルフィンは全力で剣を振るった。
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