引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
トルフィンの部 【天使】
シュロン病院。
その一室。
「……あ」
トルフィンは思わず声をこぼした。
「……起きたか、リュア」
「う、うう……」
ベッドに横たわっているリュアが、うっすらと目を開ける。現在の彼女は頭部が右目ごと包帯で巻かれており、なんとも痛々しい姿である。やはり一番重傷だったのは首から上だったようだ。
でも――
「よかった……無事だったか……」
「あれ……?」
リュアがちょっと嬉しそうな微笑みを浮かべる。
「トルフィンくん、泣いて、るの……?」
「泣いてねえよバカ。おまえが死んじまったら、昨日の約束が守れねえじゃねえか」
「昨日の約束……。えへへ、覚えていてくれたんだね」
そこでまた笑おうとするが、いまのリュアは顔面を痛めている身である。「いたっ」と言って頬をさする。
「無理すんなよ。安静にしとけ」
そこでトルフィンはセレスティアを見上げた。医者からの説明はすべて彼女が聞いていた。
王女セレスティアはベッドに両手をつき、しゃがみ込むと、リュアへうっすらと微笑んでみせた。
「よかったね。後遺症もないって。全治は遅れちゃうけど、また剣を持つこともできるようになるって」
「そっか……よかった……」
リュアはほっと息を吐くも、次の瞬間、はっとしたようにトルフィンを見上げた。
「そ、そうだ、試合は!? どうなったの?」
「えっと、それはだな……」
トルフィンはセレスティアと目を合わせた。王女が「どうぞ」といったふうに右手を差し出してきたので、若干言いづらいところではあったが、ドヤ顔をつくってみせた。
「心配すんな。俺の優勝だ」
「ほ……ほんと? あのアルスに勝ったの?」
「まあな」
「すごい……よく勝てたね、あんな人に……」
まあ実際にかなり苦戦した。
最後は必殺技の撃ち合いになったが、きっとアルスの「ユグドラシル・デュアル」の威力はあんなものではない。おそらく全力を出し切れなかったのだと思われる。
仮にあのとき、本当の「ユグドラシル・デュアル」を使われたら……結果はどうなっていたかわからない。
そのアルスは現在、王都の監禁所で服役している。いくら記憶を操作されていたとはいえ、彼の罪の重さを考えれば、無罪放免というわけにもいかない。
そんな思考を巡らせているとき、どこかでひとつ、悲鳴が上がった。
――いや、違う。
ひとつや二つどころではない。あらゆる場所から、いくつもの人々の悲鳴が……
「何事……?」
セレスティアが血相を変えて立ち上がる。
何者かが襲撃してきたのか。
ゴルムやディストはどうした。彼らなら、そう簡単に負けるはずないのに……
「あ……」
リュアが呆けた声を出す。
トルフィンもつられて同じ方向を見やり、そして息を呑んだ。
病室の入り口に《それ》はいた。
一言で表すなら――天使というべきか。
ツインテールの白髪の上に、丸い輪っかが浮かんでいる。右手には仰々しい杖を携えており、なんと足が地についていない。浮かんでいるのだ。
天使はトルフィンたちを見渡すと、にっこりと口の両端を持ち上げた。
「君たちも……ステータスを全部1にしてあげる」
「なにを……言ってるんだ……」
ただただ、トルフィンはそれしか言えなかった。
その一室。
「……あ」
トルフィンは思わず声をこぼした。
「……起きたか、リュア」
「う、うう……」
ベッドに横たわっているリュアが、うっすらと目を開ける。現在の彼女は頭部が右目ごと包帯で巻かれており、なんとも痛々しい姿である。やはり一番重傷だったのは首から上だったようだ。
でも――
「よかった……無事だったか……」
「あれ……?」
リュアがちょっと嬉しそうな微笑みを浮かべる。
「トルフィンくん、泣いて、るの……?」
「泣いてねえよバカ。おまえが死んじまったら、昨日の約束が守れねえじゃねえか」
「昨日の約束……。えへへ、覚えていてくれたんだね」
そこでまた笑おうとするが、いまのリュアは顔面を痛めている身である。「いたっ」と言って頬をさする。
「無理すんなよ。安静にしとけ」
そこでトルフィンはセレスティアを見上げた。医者からの説明はすべて彼女が聞いていた。
王女セレスティアはベッドに両手をつき、しゃがみ込むと、リュアへうっすらと微笑んでみせた。
「よかったね。後遺症もないって。全治は遅れちゃうけど、また剣を持つこともできるようになるって」
「そっか……よかった……」
リュアはほっと息を吐くも、次の瞬間、はっとしたようにトルフィンを見上げた。
「そ、そうだ、試合は!? どうなったの?」
「えっと、それはだな……」
トルフィンはセレスティアと目を合わせた。王女が「どうぞ」といったふうに右手を差し出してきたので、若干言いづらいところではあったが、ドヤ顔をつくってみせた。
「心配すんな。俺の優勝だ」
「ほ……ほんと? あのアルスに勝ったの?」
「まあな」
「すごい……よく勝てたね、あんな人に……」
まあ実際にかなり苦戦した。
最後は必殺技の撃ち合いになったが、きっとアルスの「ユグドラシル・デュアル」の威力はあんなものではない。おそらく全力を出し切れなかったのだと思われる。
仮にあのとき、本当の「ユグドラシル・デュアル」を使われたら……結果はどうなっていたかわからない。
そのアルスは現在、王都の監禁所で服役している。いくら記憶を操作されていたとはいえ、彼の罪の重さを考えれば、無罪放免というわけにもいかない。
そんな思考を巡らせているとき、どこかでひとつ、悲鳴が上がった。
――いや、違う。
ひとつや二つどころではない。あらゆる場所から、いくつもの人々の悲鳴が……
「何事……?」
セレスティアが血相を変えて立ち上がる。
何者かが襲撃してきたのか。
ゴルムやディストはどうした。彼らなら、そう簡単に負けるはずないのに……
「あ……」
リュアが呆けた声を出す。
トルフィンもつられて同じ方向を見やり、そして息を呑んだ。
病室の入り口に《それ》はいた。
一言で表すなら――天使というべきか。
ツインテールの白髪の上に、丸い輪っかが浮かんでいる。右手には仰々しい杖を携えており、なんと足が地についていない。浮かんでいるのだ。
天使はトルフィンたちを見渡すと、にっこりと口の両端を持ち上げた。
「君たちも……ステータスを全部1にしてあげる」
「なにを……言ってるんだ……」
ただただ、トルフィンはそれしか言えなかった。
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