引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

声が聞こえないように

「ねえ、トルフィンくん」
「なんだ」
「寝れない」
「知るか」
「ひ、ひどい……」

 真夜中。
 トルフィンはリュアと同じベッドで眠っていた。
 明日は武術大会の本戦だし、存分に休養を取らないといけない。

 にも関わらず、二人ともなかなか寝付けなかった。

 その理由は明白である。
 さきほどのリュアの告白だ。

「ねえトルフィンくん、結婚したらどんな家に住む?」
「……話がはえーよ」
「えー、いいじゃん」
「マジで言うと、シュロンの王城に住むことになるだろうよ。二人で新築を……ってことにはならない」
「もう」
 リュアがむすっと唇を尖らせる。
「ほんとに冷めてるんだから。でも、お城にずっと住むのもいいね……」

 さすがは六歳児。思考がお姫様だ。
 でも、そんなリュアと関わったからこそ、トルフィンも変わったのかもしれない。

 前世では《引きこもりニート》でしかなかったトルフィン。人と関わる楽しさなどすっかり忘れていた。ずっと一人で生きていくことを望んでいた。

 そんな元ニートが、前向きに学園なんぞに通い、しかも武術大会の予選を勝ち抜いてしまった。それは疑いようもなく、リュアという存在があったからだ。

 リュアを好いたきっかけは《ロリコンだから》だった。
 けれど、いまはそれだけじゃない。
 ひとりの人間として、リュアを守ってやりたい。
 素直にそう思えた。

 トルフィンは寝返りを打ち、リュアと目線を合わせた。「あっ」と頬を染める彼女の頭を、優しく撫でてみる。
「……いま大人たちがなにを話してるか、わかるか?」
「……わかんない」
「世界の危機について話してるのさ。おまえは気づいてないかもしれないが、いま、ちょっと危ねえ状況なんだよ」
「そ、そうなの?」
「ああ」
 そこでトルフィンはまっすぐにリュアを見据えた。
「だが、おまえだけは俺が守ってみせるよ。父に比べればまだ未熟だがな」

 次の瞬間、リュアは天使の笑みを浮かべた。

「ほんと? 守ってくれる?」
「ああ。絶対だ」
「じゃ、やくそく」

 言いながら、リュアは小指を差し出してきた。指切りげんまんをしようと言っているのだ。
 思わず苦笑しながら、トルフィンも小指を出す。こんな子どもっぽいことをやるのは実に何年ぶりか。

 トルフィンとリュアは、声が外に漏れないよう、小さな声で誓いを立てた。

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