引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
魔法使いって誰でも憧れるよね
「えー、おまえ出場するのー?」
といきなり会話に入ってきたのは、男のクラスメイトだった。名は覚えていない。
クラスメイトはリュアに対して話しかけたようだ。さすがに王子トルフィンに《おまえ》とは言えまい。
――それにしても、一瞬にして距離を詰めてくるあたりは、さすがは小さいガキんちょってとこか。
トルフィンがくだらないことに感心していると、リュアは眉を八の字にした。
「うん。この機会にもっと強くなっておきなさいって……お父さんが……」
「へっ。女が優勝できるかよ。ぜってーボコボコにされるぜ」
「う、うぅ……」
リュアが救いの目を向けてくる。
――やれやれ。
トルフィンは内心ため息をついて言った。
「そういうおまえは参加するのか?」
「んお? ま、まあな」
「そうかい」
なら、憂さ晴らしは大会のときでいいだろう。たぶんトルフィンと戦う前に、対戦者にケチョンケチョンにされるだろうが。
「はーい、みんな席に着いてー」
そんなことを話しているうちにレイア先生が登場し、朝のホームルームが始まった。
今日の授業では、ステータスに関してさらに多くの知識を得ることになった。
まず、物理攻撃力や魔法攻撃力は、攻撃を繰り返すことによってごくわずかにステータスが伸びていくという。たとえば魔法攻撃力であれば、連発することによって攻撃力も増していくわけだ。ただ、それはほぼオマケのようなもので、あまり伸び幅は期待できない。
防御力も同様に、攻撃を受けることで数値も高まっていくようだ。
ステータスを効率的に高めるのであれば、やはり《職業》に応じた働きをすることが一番なのだという。ちなみに、ほぼ多くの生徒は現在、《学生》という職らしい。こちらはあまり成長が見込めないようだ。
ちなみにトルフィンの職業は《引きこもり》、リュアは《剣士》だ。二人とも入学する前にそれらジョブの条件を満たしてしまったので、学生ではなく各職業におさまっている。
それら座学を行って、今日の授業は終了した。本当は魔法の実践授業を受けたいのだが、それはまだ先のことらしい。
夕日の目映い光が窓から差し込んでいる。生徒たちが黄色い声をあげて帰途についていく。
トルフィンも教科書を鞄に詰め込み、帰る準備をしていたのだが。
「あ、あの、トルフィンくん」
「ん?」
隣のリュアに話しかけられた。
「こ、これから時間あるかな?」
「おう」
「そ、それなら、剣の稽古お願いしていいかな……? 大会に向けて、鍛えておきたいから……」
――マジか。
学校の時間以外は、できれば引きこもっていたいんだが。
だが、仕方ない。シュン国王が言うには、今後、《悪魔》とかいう勢力が攻めてこないとも限らない――らしい。
自分だけ鍛えても、リュアたち一般人が死んだら世話がない。
仕方ない。相手してやるかな……
そう決心し、トルフィンが頷きかけたとき。
「お、二人はこれからデートかなぁ?」
ニヤニヤ顔で近寄ってくるレイア先生。
「違いますよ。てか先生、授業で俺を推すのやめてください」
「いいじゃないのん。王子様なんだから」
「……意味がわかりません」
レイア先生はそこでふふっと笑うと、やや表情を引き締めた。
「トルフィンくん、あなた、魔法を勉強したがってたわね?」
「……ええ、そうですが……」
「それなら、いまから特別に教えてあげるわ。剣と魔法を同時に使って、演習するわよ」
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