引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
国王は侮れない
トルフィンは驚いていた。
自分自身の並々ならぬ強さに。
――これが《修行》の成果なのか。
父親シュンは、修行と称し、トルフィンを極力部屋から出さないようにした。当時は単なる育児放棄かもと思ったが、違う。本当に俺は強くなっている。
「はっ! はっ! はっ!」
次々振り下ろされてくる木剣を、トルフィンは楽々受け止める。攻撃の軌道が丸見えだ。正直当たる気がしない。
「どうして……当たらないの……」
リュアが悔しそうに顔を歪める。
彼女が弱いわけではまったくない。むしろ六歳にして達人に迫るほどの境地に達していると言ってもよい。
しかし今回ばかりは相手が悪い。トルフィンがさらに規格外に強すぎる――ただそれだけのことだ。
まさか、これほど引きこもりが強いとは……
父には感謝せねばなるまい。俺がここまで強くなったのも父親のおかげだろう。
そんなことを考えながらリュアの攻撃を捌いていると。
「――だが、あんまり調子に乗らないほうがいいぜ?」
ふいに、トルフィンとリュアの間で一陣の風が舞い――何者かが姿を現した。
「なん……だって?」
トルフィンは思わず目を見開いた。
木剣を捕まれている。たった二本の指で。
にも関わらず、トルフィンはまったく動くことができない。ものすごい握力で剣を抑え込まれ、どんなに力を込めても引き抜くことができない。
それはリュアも同様のようだった。二本の指で剣を抑え込まれているが、すこしも動くことができないでいる。
「ま、まさか……」
突然の闖入者に、トルフィンは膝を震わせた。
「ち、父上……ですか……」
国王シュンはふうと息を吐くと、リュアの剣を掴んでいた手を放し、ぼりぼりと後頭部を掻いた。
「お、おお国王様だ!」
「シュン様ー!」
国民たちが一斉に黄色い声をあげる。シュンはそれを片手で制すと、トルフィンに向き直った。
「なーにが父上ですか、だ。聞いちまったぜ。おまえの素の会話をな」
「う……聞かれてましたか」
「あーな。そりゃあもう、六歳とは思えねえ口調だったな。どっちかーっつうと俺に近い」
「…………」
「トルフィン。入学式が終わったら話がある。おまえの出生についてだ」
――出生について。
ということは、まさか感づいているのだろうか。トルフィンが転生者であることを。
「……はい、わかりました」
「それとな。いまから入学式なんだよ。わかるか。めんどくせーことをやらかすな」
「は、はい……」
どんどん萎縮してしまうトルフィン。
シュンには例えようのない威圧感がある。別に怖いわけではないのだが、素直に従わざるをえないような――そんな感覚に陥ってしまう。トルフィンは預かり知らぬことだが、これこそが、スキル《支配力》の効果であった。
シュンはふうと息を吐くと、改めてリュアに顔を向けた。
「悪いな。ウチの息子が迷惑かけただろ」
「い、いえ……! むしろ、あの、嬉しかったくらいです! 初めて友達ができたんです!」
「……へえ」
シュンはニヤニヤ笑いを浮かべながら、トルフィンを見下ろした。
「我が息子ながらやるじゃねえか。それとも《前世》の記憶のおかげかね?」
「うう……」
思わずトルフィンは首を縮こませた。 
――バレている。完全に。
最後にシュンはトルフィンの剣を放すと、集まっている国民たちに声を投げかけた。
「まもなく入学式だ! 新入生と保護者は会場に向かってくれ!」
国民たちはまばらに返事をすると、王に従い、会場へ向けて歩き始めた。
自分自身の並々ならぬ強さに。
――これが《修行》の成果なのか。
父親シュンは、修行と称し、トルフィンを極力部屋から出さないようにした。当時は単なる育児放棄かもと思ったが、違う。本当に俺は強くなっている。
「はっ! はっ! はっ!」
次々振り下ろされてくる木剣を、トルフィンは楽々受け止める。攻撃の軌道が丸見えだ。正直当たる気がしない。
「どうして……当たらないの……」
リュアが悔しそうに顔を歪める。
彼女が弱いわけではまったくない。むしろ六歳にして達人に迫るほどの境地に達していると言ってもよい。
しかし今回ばかりは相手が悪い。トルフィンがさらに規格外に強すぎる――ただそれだけのことだ。
まさか、これほど引きこもりが強いとは……
父には感謝せねばなるまい。俺がここまで強くなったのも父親のおかげだろう。
そんなことを考えながらリュアの攻撃を捌いていると。
「――だが、あんまり調子に乗らないほうがいいぜ?」
ふいに、トルフィンとリュアの間で一陣の風が舞い――何者かが姿を現した。
「なん……だって?」
トルフィンは思わず目を見開いた。
木剣を捕まれている。たった二本の指で。
にも関わらず、トルフィンはまったく動くことができない。ものすごい握力で剣を抑え込まれ、どんなに力を込めても引き抜くことができない。
それはリュアも同様のようだった。二本の指で剣を抑え込まれているが、すこしも動くことができないでいる。
「ま、まさか……」
突然の闖入者に、トルフィンは膝を震わせた。
「ち、父上……ですか……」
国王シュンはふうと息を吐くと、リュアの剣を掴んでいた手を放し、ぼりぼりと後頭部を掻いた。
「お、おお国王様だ!」
「シュン様ー!」
国民たちが一斉に黄色い声をあげる。シュンはそれを片手で制すと、トルフィンに向き直った。
「なーにが父上ですか、だ。聞いちまったぜ。おまえの素の会話をな」
「う……聞かれてましたか」
「あーな。そりゃあもう、六歳とは思えねえ口調だったな。どっちかーっつうと俺に近い」
「…………」
「トルフィン。入学式が終わったら話がある。おまえの出生についてだ」
――出生について。
ということは、まさか感づいているのだろうか。トルフィンが転生者であることを。
「……はい、わかりました」
「それとな。いまから入学式なんだよ。わかるか。めんどくせーことをやらかすな」
「は、はい……」
どんどん萎縮してしまうトルフィン。
シュンには例えようのない威圧感がある。別に怖いわけではないのだが、素直に従わざるをえないような――そんな感覚に陥ってしまう。トルフィンは預かり知らぬことだが、これこそが、スキル《支配力》の効果であった。
シュンはふうと息を吐くと、改めてリュアに顔を向けた。
「悪いな。ウチの息子が迷惑かけただろ」
「い、いえ……! むしろ、あの、嬉しかったくらいです! 初めて友達ができたんです!」
「……へえ」
シュンはニヤニヤ笑いを浮かべながら、トルフィンを見下ろした。
「我が息子ながらやるじゃねえか。それとも《前世》の記憶のおかげかね?」
「うう……」
思わずトルフィンは首を縮こませた。 
――バレている。完全に。
最後にシュンはトルフィンの剣を放すと、集まっている国民たちに声を投げかけた。
「まもなく入学式だ! 新入生と保護者は会場に向かってくれ!」
国民たちはまばらに返事をすると、王に従い、会場へ向けて歩き始めた。
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