引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
シュンにしかできないこと
シュンは改めて騎士軍団を見渡した。
かなりの人数だ。
正確な人数は把握しかねるが、あれだけの敵と一人で戦ったディストは賞賛に値する。しかも死者はひとりもいない。戦闘不能になった者の多くは、気を失ったか、足を負傷している。
ディストも頑張ったのだ。シュロン国の民として、守るべき者を守ったのだ。この国にはもはや、本当の怪物はいない。
「ディスト、おまえはもう休んでろ。あとは俺が引き受ける」
シュンは一歩前に踏み出しながら言った。長い戦闘の代償で、ディストもかなり疲弊してしまっている。
「き、貴様は……」
ゴルム隊長が息も絶え絶えに言った。
「馬鹿な……シュン国王なのか……?」
「まあな」
あくまで飄々(ひょうひょう)と答えるシュンに、ゴルム隊長は顔を青くする。
「なぜだ……貴様はセレスティア様の殺害を共謀し、逃走したはず……」
「ふん。やっぱそうなってんのか」
シュンはぼりぼりと後頭部をかいた。
すべてはエルノス国王の思うがままと言うわけだ。自分の娘をも利用し、邪魔者を排除しようとするエルノス。《温厚で慈悲深い国王》の実体がそれだ。
奴のことはロニンとセレスティアに任せている。うまくいけば、皇女たるセレスティアが人類のトップに立つことになるだろう。
シュンがいまやるべきことはたったひとつ。シュロン国を守ること。それに尽きる。
だが、それでまた相手を傷つけていては世話がない。
ーー人間とモンスターを共存させ、争いのない世界をつくるーー
そのためにシュンは国を立ち上げた。意味のない種族間の闘争なんて見たくなかったからだ。
  なのに今度は外部の勢力がシュロン国を敵対視し、こうして戦争を仕掛けてくる。
ただ《平和》を掲げるだけでは、国民の幸せは守れない。そのことは今回、よくわかった。
なにか良い方法はないのか。
他勢への抑止力となる、なにかが。
そうして考えた結果、シュンはひとつの結論を導き出した。ざっと後ろを振り返り、自身の国民を見渡しながら、大きく声を張る。
「悪いが離れててくれねェか。ずっと遠くに」
「えっ……? で、でも国王様は……?」
と返答したのは国民のひとりだった。
「俺ゃ大丈夫だ。余計な心配はいらねえから、とっと動いてくれ」
「は、はい……」
国民たちはシュンを気遣いながらも、ばらばらに散っていく。ディストやミュウは最後まで残っていたが、シュンに見つめられ、無言で離れていく。
それを見送ってから、シュンは人間軍に視線を戻した。
「おまえらも早く離れろ……って言っても、離れるわきゃねえか」
「な……なにを言ってるんだ貴様は」
「ま、見ててくれや」
きょとんと目を丸くするゴルム隊長に、シュンは片腕を突き出した。
「はっ!」
瞬間、シュンから発せられた衝撃波が、人間軍を残らずさらっていく。大小さまざまな悲鳴とともに、騎士たちが激しく吹き飛んでいく。数秒後、突風が収まった頃には、騎士たちはかなりの距離にまで《移動》していた。
殺してはいない。最初から彼らの命を奪うつもりもなかった。
ゴルムたちがシュロン国を侵略しようとしたのも、元はといえば、エルノスに命じられたからだ。そういう意味では、これはシュンとエルノスの戦い。無関係な部下たちが死ぬのは極めて滑稽だ。それに、平和を目指して建国したのに、ここで彼らを殺していては世話がない。
だからこそ、シュンは答えを導き出したのだ。たったひとつの、解決策を。
かなりの人数だ。
正確な人数は把握しかねるが、あれだけの敵と一人で戦ったディストは賞賛に値する。しかも死者はひとりもいない。戦闘不能になった者の多くは、気を失ったか、足を負傷している。
ディストも頑張ったのだ。シュロン国の民として、守るべき者を守ったのだ。この国にはもはや、本当の怪物はいない。
「ディスト、おまえはもう休んでろ。あとは俺が引き受ける」
シュンは一歩前に踏み出しながら言った。長い戦闘の代償で、ディストもかなり疲弊してしまっている。
「き、貴様は……」
ゴルム隊長が息も絶え絶えに言った。
「馬鹿な……シュン国王なのか……?」
「まあな」
あくまで飄々(ひょうひょう)と答えるシュンに、ゴルム隊長は顔を青くする。
「なぜだ……貴様はセレスティア様の殺害を共謀し、逃走したはず……」
「ふん。やっぱそうなってんのか」
シュンはぼりぼりと後頭部をかいた。
すべてはエルノス国王の思うがままと言うわけだ。自分の娘をも利用し、邪魔者を排除しようとするエルノス。《温厚で慈悲深い国王》の実体がそれだ。
奴のことはロニンとセレスティアに任せている。うまくいけば、皇女たるセレスティアが人類のトップに立つことになるだろう。
シュンがいまやるべきことはたったひとつ。シュロン国を守ること。それに尽きる。
だが、それでまた相手を傷つけていては世話がない。
ーー人間とモンスターを共存させ、争いのない世界をつくるーー
そのためにシュンは国を立ち上げた。意味のない種族間の闘争なんて見たくなかったからだ。
  なのに今度は外部の勢力がシュロン国を敵対視し、こうして戦争を仕掛けてくる。
ただ《平和》を掲げるだけでは、国民の幸せは守れない。そのことは今回、よくわかった。
なにか良い方法はないのか。
他勢への抑止力となる、なにかが。
そうして考えた結果、シュンはひとつの結論を導き出した。ざっと後ろを振り返り、自身の国民を見渡しながら、大きく声を張る。
「悪いが離れててくれねェか。ずっと遠くに」
「えっ……? で、でも国王様は……?」
と返答したのは国民のひとりだった。
「俺ゃ大丈夫だ。余計な心配はいらねえから、とっと動いてくれ」
「は、はい……」
国民たちはシュンを気遣いながらも、ばらばらに散っていく。ディストやミュウは最後まで残っていたが、シュンに見つめられ、無言で離れていく。
それを見送ってから、シュンは人間軍に視線を戻した。
「おまえらも早く離れろ……って言っても、離れるわきゃねえか」
「な……なにを言ってるんだ貴様は」
「ま、見ててくれや」
きょとんと目を丸くするゴルム隊長に、シュンは片腕を突き出した。
「はっ!」
瞬間、シュンから発せられた衝撃波が、人間軍を残らずさらっていく。大小さまざまな悲鳴とともに、騎士たちが激しく吹き飛んでいく。数秒後、突風が収まった頃には、騎士たちはかなりの距離にまで《移動》していた。
殺してはいない。最初から彼らの命を奪うつもりもなかった。
ゴルムたちがシュロン国を侵略しようとしたのも、元はといえば、エルノスに命じられたからだ。そういう意味では、これはシュンとエルノスの戦い。無関係な部下たちが死ぬのは極めて滑稽だ。それに、平和を目指して建国したのに、ここで彼らを殺していては世話がない。
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