引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
新妻ロニン
ーーとは言ったものの、どうすりゃいいのかわっかんね。
ぼさぼさと後頭部をかきむしりながら、シュンは城下町を歩いていた。
だいぶ長い間セレスティアと話し込んでいたらしい。地平線に沈みかけた夕日が、最後の残照を儚げに放っている。暗みを帯びた橙色が、一帯を包み込む。
「あ、王様だー!」
「シュン様、お元気ですか!」
国民たちに手を振りながら、シュンは静かに城下町を出る。穏やかな草原を数分進むと、細い小川が見えてきた。透明な水面に、オレンジの輝きが美しく溶け込んでいる。
シュンは川の手前で座り込むと、ぼんやりと物思いに耽った。外で考え事をするときは、毎回この場所を訪れるようにしている。
ーー変わったもんだな。この俺が、外で考え事だなんてよ。
思わず自嘲の笑みを浮かべてしまう。
数年前のように、ただなにも考えず、惰性的に引きこもっていられたらどんなに楽か。自分の強さに甘んじて、ひたすら無双していくことのなんたる気楽さか。
いまや、シュンは大勢の人間とモンスターの命を背負っている。そこにはやはり、それなりの苦労がつきまとう。面倒な交渉なんて、これまでのシュンにはまったく無関係だったのに。かったるいことを考えるだけでも嫌だったのに。
なのに俺は……
そこまで考えたとき、シュンの隣の地面に幾何学模様が発生した。
見たことのある魔法だった。これが使えるのはーー
数秒後、その幾何学模様から、ロニンが姿を現した。薄地の白衣をまとっている。どうやら病院からそのまま《ワープ》してきたようだ。
「お、おまえ……」
さしものシュンも驚きを隠せなかった。
「今日出産したばっかりだろ? 動いて大丈夫なのかよ」
「安静にしろって言われたけど……ちょっと楽になったから。シュンさんに会いたくなって」
ちょっと辛そうに笑みを浮かべるロニン。えいっと言いながら、どさっとシュンの隣に腰を下ろす。
シュンはなおも目を見開いたまま口を開いた。
「……よくこの場所がわかったな」
「わかるよ。だってあなた、この場所が好きじゃん」
「勘かよ」
「うん。だけど、私にはわかってた」
「……はっ、この野郎」
なんだか急に新妻が愛しくなって、シュンはやや乱暴にロニンの頭を撫で回した。
「ひゃっ」
目を白黒させる魔王。
「もう、一応は《病人》なんだからね! 優しくしてよ」
「いいじゃんか。愛の証さ、愛の証」
「あ、愛……」
呟くなり、顔を真っ赤にし、頭から湯気をあげるロニンだった。
ぼさぼさと後頭部をかきむしりながら、シュンは城下町を歩いていた。
だいぶ長い間セレスティアと話し込んでいたらしい。地平線に沈みかけた夕日が、最後の残照を儚げに放っている。暗みを帯びた橙色が、一帯を包み込む。
「あ、王様だー!」
「シュン様、お元気ですか!」
国民たちに手を振りながら、シュンは静かに城下町を出る。穏やかな草原を数分進むと、細い小川が見えてきた。透明な水面に、オレンジの輝きが美しく溶け込んでいる。
シュンは川の手前で座り込むと、ぼんやりと物思いに耽った。外で考え事をするときは、毎回この場所を訪れるようにしている。
ーー変わったもんだな。この俺が、外で考え事だなんてよ。
思わず自嘲の笑みを浮かべてしまう。
数年前のように、ただなにも考えず、惰性的に引きこもっていられたらどんなに楽か。自分の強さに甘んじて、ひたすら無双していくことのなんたる気楽さか。
いまや、シュンは大勢の人間とモンスターの命を背負っている。そこにはやはり、それなりの苦労がつきまとう。面倒な交渉なんて、これまでのシュンにはまったく無関係だったのに。かったるいことを考えるだけでも嫌だったのに。
なのに俺は……
そこまで考えたとき、シュンの隣の地面に幾何学模様が発生した。
見たことのある魔法だった。これが使えるのはーー
数秒後、その幾何学模様から、ロニンが姿を現した。薄地の白衣をまとっている。どうやら病院からそのまま《ワープ》してきたようだ。
「お、おまえ……」
さしものシュンも驚きを隠せなかった。
「今日出産したばっかりだろ? 動いて大丈夫なのかよ」
「安静にしろって言われたけど……ちょっと楽になったから。シュンさんに会いたくなって」
ちょっと辛そうに笑みを浮かべるロニン。えいっと言いながら、どさっとシュンの隣に腰を下ろす。
シュンはなおも目を見開いたまま口を開いた。
「……よくこの場所がわかったな」
「わかるよ。だってあなた、この場所が好きじゃん」
「勘かよ」
「うん。だけど、私にはわかってた」
「……はっ、この野郎」
なんだか急に新妻が愛しくなって、シュンはやや乱暴にロニンの頭を撫で回した。
「ひゃっ」
目を白黒させる魔王。
「もう、一応は《病人》なんだからね! 優しくしてよ」
「いいじゃんか。愛の証さ、愛の証」
「あ、愛……」
呟くなり、顔を真っ赤にし、頭から湯気をあげるロニンだった。
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