引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
文明の違い
翌日。
魔王城の城下町は、相変わらず曇天のままだった。昨夜のうちに大雨はおさまったが、もう一雨きそうな雰囲気である。
城下町からほどよく離れた荒野に、ディスト率いるモンスター軍団が待機していた。
人間の騎士たちは正面から攻めてくると推定された。だからほぼすべての戦士が、ここで魔王城を守るべく身体を張っている。
魔王城は正面入口以外は湖に囲まれている。
裏から攻められたとしても、ロニンの魔術で遠隔攻撃が可能だ。それに魔王の血筋でなければ、裏口からの侵入は不可能である。
ディストは最終確認も込めて、ざっと自身の軍を見渡した。
手足のあるモンスターは、盾を構え、遠隔からの攻撃に備えている。
その他、大蛇やスライムなど、手足のないモンスターは魔法による幾何学模様の防御壁を展開している。
これでいつ奇襲されても充分に切り替えせる。
ディストは背後の魔王城を振り返った。
魔王ロニンは城内から魔法攻撃を行う役割だ。彼女の魔法系ステータスは、人間・モンスター中でトップクラスだから。
ーーロニン様。
あなた様の心の痛み、このディストがよくわかっております。
必ず。
必ず皆で生きて帰ります。
だからロニン様も、どうかご無事で……
深い思考に浸っていると、ふいに部下が一体、囁いてきた。かなり緊張した面持ちだ。
「デ、ディスト様」
「うむ」
夥しいまでの敵の気配。
とうとうやってきたのだ。人間どもが。
こみ上げてくる緊張感を飲み下し、ディストは堂々たる口調で皆に語りかけた。
「焦るな。この距離では互いの攻撃は届かん。充分に敵を引き寄せてーー」
次の瞬間。
「グウ……」
大蛇型モンスターが鈍い悲鳴をあげ、その場に崩れた。
見れば、鋭い矢が赤い鱗に突き刺さっている。せっかく展開していた防御壁は、見事なまでに貫かれていた。
「ば、馬鹿な……」
ディストは戦慄を覚えた。
敵軍はまだかなりの遠方にいるはず。姿も形も見えはしない。この距離から攻撃ができるのは、ディストの知る限りだと、前代魔王かロニンくらいのものだ。
魔法のステータスが低いディストにはとてもできない。
ーーなどと、思索に耽っていられる時間はなかった。
次々と飛んでくる矢に、味方たちが続々と倒れていく。
「後退、後退だ! くそ、なぜあんな遠くから高威力の技を出せるのだ!」
★
「どう?」
馬車に揺られながら、セレスティアは隣の勇者に尋ねた。
アルスは数秒だけ目を閉じていたが、やがてゆっくりと開眼する。
「我々の奇襲が成功したようです。モンスター達の《気》が大きく後退しています」
「ふふ……それはなによりだわ」
薄ら笑いを浮かべるセレスティア。
そう。
モンスター達とは違い、人間はずっと文明の進歩を遂げてきた。
となれば、使用する武器にも性能の差があって当然。ステータスだけを強化しても、敵は人間に勝てない。
「私の見立てでは、モンスター側は我々が一昔前に使用していたものと同等の武器を用いています。威力、性能ともにかなり劣悪であろうと思います」
「ふふ……そっか」
セレスティアはまたも薄い笑みを浮かべると、王者たる目つきで勇者に命じた。
「徹底的に攻めなさい。圧倒的な実力差を見せつけて、敵の志気を落とすのです」
「……はい、かしこまりました」
魔王城の城下町は、相変わらず曇天のままだった。昨夜のうちに大雨はおさまったが、もう一雨きそうな雰囲気である。
城下町からほどよく離れた荒野に、ディスト率いるモンスター軍団が待機していた。
人間の騎士たちは正面から攻めてくると推定された。だからほぼすべての戦士が、ここで魔王城を守るべく身体を張っている。
魔王城は正面入口以外は湖に囲まれている。
裏から攻められたとしても、ロニンの魔術で遠隔攻撃が可能だ。それに魔王の血筋でなければ、裏口からの侵入は不可能である。
ディストは最終確認も込めて、ざっと自身の軍を見渡した。
手足のあるモンスターは、盾を構え、遠隔からの攻撃に備えている。
その他、大蛇やスライムなど、手足のないモンスターは魔法による幾何学模様の防御壁を展開している。
これでいつ奇襲されても充分に切り替えせる。
ディストは背後の魔王城を振り返った。
魔王ロニンは城内から魔法攻撃を行う役割だ。彼女の魔法系ステータスは、人間・モンスター中でトップクラスだから。
ーーロニン様。
あなた様の心の痛み、このディストがよくわかっております。
必ず。
必ず皆で生きて帰ります。
だからロニン様も、どうかご無事で……
深い思考に浸っていると、ふいに部下が一体、囁いてきた。かなり緊張した面持ちだ。
「デ、ディスト様」
「うむ」
夥しいまでの敵の気配。
とうとうやってきたのだ。人間どもが。
こみ上げてくる緊張感を飲み下し、ディストは堂々たる口調で皆に語りかけた。
「焦るな。この距離では互いの攻撃は届かん。充分に敵を引き寄せてーー」
次の瞬間。
「グウ……」
大蛇型モンスターが鈍い悲鳴をあげ、その場に崩れた。
見れば、鋭い矢が赤い鱗に突き刺さっている。せっかく展開していた防御壁は、見事なまでに貫かれていた。
「ば、馬鹿な……」
ディストは戦慄を覚えた。
敵軍はまだかなりの遠方にいるはず。姿も形も見えはしない。この距離から攻撃ができるのは、ディストの知る限りだと、前代魔王かロニンくらいのものだ。
魔法のステータスが低いディストにはとてもできない。
ーーなどと、思索に耽っていられる時間はなかった。
次々と飛んでくる矢に、味方たちが続々と倒れていく。
「後退、後退だ! くそ、なぜあんな遠くから高威力の技を出せるのだ!」
★
「どう?」
馬車に揺られながら、セレスティアは隣の勇者に尋ねた。
アルスは数秒だけ目を閉じていたが、やがてゆっくりと開眼する。
「我々の奇襲が成功したようです。モンスター達の《気》が大きく後退しています」
「ふふ……それはなによりだわ」
薄ら笑いを浮かべるセレスティア。
そう。
モンスター達とは違い、人間はずっと文明の進歩を遂げてきた。
となれば、使用する武器にも性能の差があって当然。ステータスだけを強化しても、敵は人間に勝てない。
「私の見立てでは、モンスター側は我々が一昔前に使用していたものと同等の武器を用いています。威力、性能ともにかなり劣悪であろうと思います」
「ふふ……そっか」
セレスティアはまたも薄い笑みを浮かべると、王者たる目つきで勇者に命じた。
「徹底的に攻めなさい。圧倒的な実力差を見せつけて、敵の志気を落とすのです」
「……はい、かしこまりました」
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