引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

さすがは尊敬するお兄ちゃん

 オークによる村の襲撃。
 勇者との戦い。

 それらの出来事は、シュンにとって「めんどくせーこと」にすぎなかった。

 おまけにロニンというお荷物までついてきてしまった始末。

 引きこもり生活をエンジョイしたい彼にとって、それらは単なる厄介事でしかなかった。

 けれども。
 そのおかげで良かった点も二つあった。

 ひとつは、初めて自身の強さを認識できたこと。

 そしてもうひとつが、自分だけの家を与えられたことだ。

 ヒッキーな彼にとって、一番の問題は衣食住である。

 通常であれば、労働の対価として金をもらい、その金を払って衣食住を享受するものだ。

 しかしながらシュンは普通の人間ではない。
 親のスネをかじらなければ生きられない、ただのヒッキーである。

 当然、以前までは親によく叱責されていた。はやく働けだの、たまには外に出ろだの、うっとうしいことをよく言われたものである。
 いわゆる家のお邪魔虫だった。

 だが。
 今回の事件でそれが逆転した。
 シュンは村の英雄になった。

 彼がいなければ、村民は皆殺しにされていたからだ。

《勇者》アルスが助けにきていたとはいえ、勇者だけではきっと解決には導けなかった。村民を人質にされる計画があったから。

 シュンという不確定要素がいたからこそ、村民は誰ひとりとして死なずに生還できたのである。

 シュンがいたからみんな無事で済んだ。

 これを英雄と呼ばずしてなんと呼ぶ。

 名声には興味のないシュンであったが、おかげで専用の家をもらえた。しかも大量の食料と金までついてきた。

 これで当分、金には困らない生活ができるようになったのである。

 そしてそれは、シュンやロニンの、さらなる引きこもり生活を促すものでもあった。

    ★

「つ、辛い……」

 薄暗い室内で、ひとり、ロニンは呟いた。

 なーんにもすることがない。

 部屋にあるものは、ふかふかなベッドと円形テーブル、何冊かの本、衣類だけ。

 調度品の質は悪くないが、しかし、こんなものでは時間を潰せない。

 この引きこもり生活を始めて、すでに一週間。

 魔王城でもロニンは引きこもりのような生活をしていたが、まだ話し相手がいた。

 というより、仲の良いモンスターたちとずっと喋ったり遊んだりして毎日を過ごしていた。

 シュンいわく、「そんなものは引きこもりとはいえない」らしいが……

 ロニンは思わず息を呑んだ。
 シュンはまさか、こんなにも退屈な生活を何年にもわたって送ってきたというのか。私なら耐えられない。

 すごい。
 さすがは尊敬するお兄ちゃん……

 と、どこかずれた感情を抱くロニンであった。

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