引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
引きこもりは豚すら凌駕する
「あ……あ……」
オークはもう声も出ない。
自分より劣るはずの《村人》が、いとも簡単に牢を壊してしまったのだから。実際、シュンの外見はひょろひょろの骨男だ。
だが、オークは知っていた。
万が一に備え、ロニンが牢の強度を魔術によって最大限に高めていたことを。
だから、たとえオークが全力で体当たりしたところで、実はちょっと傷がつくだけだ。
その鉄格子を、この若者は、息をするように壊してみせた。自分ですら不可能な離れ業を。
ーー強い。この男は規格外に強い。
頭ではわかっていても、納得はできなかった。
ありえない。
ただの村人より、この俺が劣るなどと。
だから次の瞬間、オークは大きく叫んでいた。
「おおおおおおっ! 殺す、てめえは殺してやる!」
そんなオークを、シュンはなかば哀れむように見つめる。
「現実を見ろよ。このタコ」
「くおおおおおっ!」
狂乱したように振り下ろされる棍棒を、シュンはひょいと避けてみせた。その後もオークは次々と棍棒を打ち込んでいくが、シュンには一撃たりとて命中しない。
オークの攻撃が弱いわけではない。現に昨晩は、押し寄せるオークの大群に村人たちはなすすべもなく捕らえられた。抵抗する者は、この棍棒によって一瞬で気を失った。だから十分脅威になりうる攻撃のはずなのだ。
だが、シュンは規格外に強すぎた。どんなに武器を打ち込んでも、かすりもしない。
「飽きたな」
シュンはふいに呟くと、さっとオークの猪首を掴み上げた。
その細い腕が、オークの巨体を持ち上げる。
「答えろ。村のみんなをどこへやった」
「ぐ……」
「早く答えてくれないか。俺ゃあ早く帰りてえんだ」
「ここから階段を降りて……地下牢に……」
「ふうん。地下牢ね。じゃああんたにはもう用ないや」
言うなり、シュンはもう片方の拳でオークの腹を殴りつけた。オークは悲鳴をあげ、後方の壁に激突し、そのまま動かなくなった。
★
勇者アルスはさっと剣を構え直した。
極寒の地で手に入れた、聖剣デュアリカル。
それを鞘におさめ、柄に手を添える。
左足をやや前に突き出し、いつでも抜刀できる姿勢を保つ。
いま、アルスの集中力は極限にまで高められていた。かつてない高揚感が、全身に満ちていく。
ーーこのままいけば……勝てる!
アルスの眼前で対峙するのは、小柄な女。
紅に輝く髪が、さらりと肩胛骨のあたりまで伸びている。
瞳も燃えるような赤に染まっており、アルスに対する猛烈な敵対心を示していた。
小ぶりな丸顔に、鼻がしっかりと綺麗に通っている。
見た目だけでいえば間違いなく《美人》であるが、しかし間違ってもよこしまな考えを抱いてはいけない。
なぜならーー彼女こそが魔王の子、ロニンだからである。
オークはもう声も出ない。
自分より劣るはずの《村人》が、いとも簡単に牢を壊してしまったのだから。実際、シュンの外見はひょろひょろの骨男だ。
だが、オークは知っていた。
万が一に備え、ロニンが牢の強度を魔術によって最大限に高めていたことを。
だから、たとえオークが全力で体当たりしたところで、実はちょっと傷がつくだけだ。
その鉄格子を、この若者は、息をするように壊してみせた。自分ですら不可能な離れ業を。
ーー強い。この男は規格外に強い。
頭ではわかっていても、納得はできなかった。
ありえない。
ただの村人より、この俺が劣るなどと。
だから次の瞬間、オークは大きく叫んでいた。
「おおおおおおっ! 殺す、てめえは殺してやる!」
そんなオークを、シュンはなかば哀れむように見つめる。
「現実を見ろよ。このタコ」
「くおおおおおっ!」
狂乱したように振り下ろされる棍棒を、シュンはひょいと避けてみせた。その後もオークは次々と棍棒を打ち込んでいくが、シュンには一撃たりとて命中しない。
オークの攻撃が弱いわけではない。現に昨晩は、押し寄せるオークの大群に村人たちはなすすべもなく捕らえられた。抵抗する者は、この棍棒によって一瞬で気を失った。だから十分脅威になりうる攻撃のはずなのだ。
だが、シュンは規格外に強すぎた。どんなに武器を打ち込んでも、かすりもしない。
「飽きたな」
シュンはふいに呟くと、さっとオークの猪首を掴み上げた。
その細い腕が、オークの巨体を持ち上げる。
「答えろ。村のみんなをどこへやった」
「ぐ……」
「早く答えてくれないか。俺ゃあ早く帰りてえんだ」
「ここから階段を降りて……地下牢に……」
「ふうん。地下牢ね。じゃああんたにはもう用ないや」
言うなり、シュンはもう片方の拳でオークの腹を殴りつけた。オークは悲鳴をあげ、後方の壁に激突し、そのまま動かなくなった。
★
勇者アルスはさっと剣を構え直した。
極寒の地で手に入れた、聖剣デュアリカル。
それを鞘におさめ、柄に手を添える。
左足をやや前に突き出し、いつでも抜刀できる姿勢を保つ。
いま、アルスの集中力は極限にまで高められていた。かつてない高揚感が、全身に満ちていく。
ーーこのままいけば……勝てる!
アルスの眼前で対峙するのは、小柄な女。
紅に輝く髪が、さらりと肩胛骨のあたりまで伸びている。
瞳も燃えるような赤に染まっており、アルスに対する猛烈な敵対心を示していた。
小ぶりな丸顔に、鼻がしっかりと綺麗に通っている。
見た目だけでいえば間違いなく《美人》であるが、しかし間違ってもよこしまな考えを抱いてはいけない。
なぜならーー彼女こそが魔王の子、ロニンだからである。
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ノベルバユーザー602508
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