ODD
第二十一話 守護霊使いの村
「…………………」
「フル、今何か聞こえなかった?」
「え?本当?僕には全然聞こえなかったけど?」
「…………………」
「ほら、また言った!!」
「ルーシー、耳がおかしいんじゃない?僕には全然…」
しかし、次の声はフルの耳にもはっきりと届いた。
「こっちに来てください…」
「聞こえた」
フルはぽつりと呟いた。
「この声が聞こえたのは…」
フルは周りを見渡した。
「あの洞窟だ!」
フルは走り出した。
「待ってよ!フル!」
ルーシーも後を追う。
その洞窟は小さな、しかし聖なる気配がした。
「…何か出そうだな」
[もし、]
何か声が聞こえた。すっきりと高い声だった。
ルーシーは後ろを見た。そして、絶句した。
そう、さっきは何も無かった筈なのに、小さな椅子に誰かがもたれかかっていたのだ。
「…誰だ?」
ルーシーは聞いた。
椅子に近づくとき、ルーシーは少し懐かしい香りを感じた。
「?」
[お気づきですか]
「ま…まさか…」
「ルーシー、知っているの?」
「うん、アドバリー家は代々ラドーム学院の関係者だったんだけど、」
「その初代、ローラ・アドバリーは世界で初めて人と守護霊が合体する『主従融合』を成功させたんだ。」
「確かその時の守護霊の名は…」
[そうです]
[私は、]
コツ、コツ、コツ
二人はどんどん近づいていく。
[ローラ・アドバリーの守護霊、そして守護霊神のライトです。]
「守護霊…神…」
[神ガラムドが伝説の勇者を加護するよう言っていました…が、]
[あなたは既にエルフから加護を得ているのですね。と、なると…]
[あなたですか。ルーシー・アドバリー。]
「な、なんで僕の名前を?」
[私は代々アドバリー家に仕えるよう、ローラ様に言われました。しかし同時に守護霊神に任命されてしまったので、私はこの地を離れる事が出来ないのです]
[そこで私はある方法を考え付きました]
[守護霊には『オルテレ・ゴーム』という技があります。それは、自らと同じ守護霊を量産する…あなた方の世界では"分身"とでもいうのでしょうか、それを利用してアドバリー家に従しました。]
[そして、今あなたがここに来た]
「え、つ、つまり…」
[そう、あなたに今から守護霊の加護を与えます]
「守護霊の…加護?」
[そうです]
サッ
ライトは手を上げ、小さな声で何かを呟いた。
グワッ
突然、ルーシーに何かが入り込んだ。
「う…うぐぐ…」
「ルーシー!」
フルが助けに入ろうとすると、ライトが止めた。
[助けることは、お止めなさい]
「なんでさ!!」
[私は守護霊の"加護"と言いましたが、正しくは"試練"なのです。]
「試練?」
[ええ。ほんとうにこの者に加護を与えていいものなのか、を試しています。今彼には、]
[守護霊を与えました。しかし、主従関係は結んでいません。]
[なぜなら、守護霊使いと守護霊の間には『きずな』と呼ばれるつながりがあります。そのつながりを作ることこそが、この試練の課題なのです]
「し、しかし…」
ガシッ
バシッ
「あれでは死んでしまう!」
[それは守護霊使いとして認められない、という結果です。守護霊使いと認められたならば守護霊は主を攻撃しなくなるはずです]
「あれ…反応が終わった…」
[結果が出たようですね]
「う…」
ルーシーの体から声が聞こえた。
[守護霊使いとして…認められたようですね]
「こちらの用件だ」
[なんです?]
「フィアノ村の人が居ないようだが」
[あぁ…実はですね、この村は守護霊使いが住む村でした。]
[しかしメタモルフォーズの大群がこの村を襲いました]
[しかしやつらは村人を殺さず捕らえ、北の方へ飛びました]
「北には、何が?」
[氷を司る祈祷師、ガロムが住む神殿があります]
「祈祷師が?」
[ええ]
「もうひとつ聞きたい。メアリー・ホープキンという女の子がこの村に来たか?」
フルは左手でペンを握り、すらすらと紙にメアリーの似顔絵を描いた。
[…あぁ、この顔はよく覚えていますよ。村にいない錬金術師だったのでよく重宝されていましたよ]
「と、いうことは…やはり村人と一緒に神殿に…」
ダッ
フルは外に向かって走り出した。
「フル、待ってよ!」
ルーシーも続けて走る。
「ガラムド、世界は一体何処へ向かっていくのですか…」
ライトは言った。
しかし、声が小さく、誰にも聞こえる事は無かった…。
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