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巫夏希

第三十四話 オリジナルフォーズ

 目の前のリーガル城が、いきなり崩れだした。
 城というものは、その土地を治める者の住まいであるのはもちろん、本分は、統治者の権力の強大さを広く知らしめるための物だ。
 それ故に城は、巨大に、豪華に、頑強につくられる。
 城主の偉大さを表し、富の豊かさを表し、軍力の強大さを表すのだ。
 これしきの地震だけでは、周囲の建物がいくら崩れようとも、普通、倒壊したりしないだろう。
 それでも、城は崩壊を続ける。
 そこに案の定、その原因が表れた。
 地下から生物がはいあがってきて、その4本の足で、城の残骸の上に立った。
 それは城と同等、いや、それよりも遙かに巨大なメタモルフォーズだった。
 その皮膚からは、哺乳類・鳥・魚・爬虫類・虫…… 地球上のありとあらゆる生物の顔が、巨大化され、飛び出している。
 主たる飛びきり大きな顔は、人間のそれを形づくっていた。
 その異形の生命体に、フルはこう言葉を漏らした。

「これが…メタモルフォーズ…なのか?……」
「ええ、そうよ。太古の昔、勇者君の文明の時代からいる生命体。約1万年前から存在する怪物。この生命体の研究成果であり、それを模倣して作ったのがメタモルフォーズよ。つまり! こいつは、すべてのメタモルフォーズの原点なのよ!! そして、2000年前、この世界をおそった未曾有の危機、そこで暴れ回った怪物でもあるわ。私はあれを、“オリジナルフォーズ”と呼んでいるの」

 リュージュがそう答えると、ルーシーが大声を上げて反論した。

「そんなバカな! 伝説によれば、その怪物は神ガラムドが退治し、この世界に平和が訪れたんじゃないのか!? 第一、今まで平和な世界が続いていたじゃないか!!」
「そんなのたかが伝説よ。ガラムドはただ、オリジナルフォーズを封印して見せただけ。それを、この私が! 解いてみせたのよ!! 神の掛けた魔法を突破した。これで私は神を越える存在になったわ!」

 リュージュは、自分を大いに誇るように、高笑いしてみせた。
 ついに、自分は神だと言ったリュージュに、三人は絶句する。
 リュージュは自分の笑いを何とか押さえつけ、こう言った。

「私のやるべきことはまだ残ってるわ。残念だけど、あなた達を相手している暇はないの。まあ、できるものなら私を追って、せいぜい楽しませてよね」

 瞬間、リュージュの姿が消え去った。
 すると、オリジナルフォーズが移動を始めた。
 一歩進むたびに、ズドォォンと地面が揺れていく。
 あの怪物はどうやら、東に進路を向けたらしかった。

「みんな、行こう!」

 フルの一声で、三人は東に向かって走り出した。

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